
山梨学院小学校(山内紀幸校長)に今年導入された大型アスレチック遊具が、子どもたちから絶大な人気を得ている。高さ3m近い登り棒や縄はしご、くもの巣ネットなど、冒険心をくすぐる仕掛けがいっぱい、ちょっとしたアドベンチャーワールドになっている。昼休みには、毎日100人を超える子どもたちが押しかける盛況ぶり、子どもたちにとっては何回遊んでも飽きない冒険砦となっている。北欧スウェーデンのメーカーが開発したアスレチック遊具で、日本の小学校に導入されたのは初めて。遊んでいるうちに自然に体力が向上し、バランス感覚が養われるように設計されている。ヨーロッパの安全基準をクリアした品質に加え、地面には3cmの落下吸収マットも敷設されている。児童は 大型遊具で遊びながら、身の危険を回避するための、本当の身のこなし方も学んでいる。
山梨学院小学校では、今年3月末に、学校創立時からの長年の夢であったグラウンドが、熱中症対策の散水ミストを備えた県内小学校初の人工芝グラウンドとして完成し「オクトーバー運動場」と命名された。大型アスレチック遊具は、オクトーバー運動場と校舎を結びつける絶妙の場所に設置された。遊具はスウェーデンの遊具メーカー「ハグス」社製で、様々なキッドを組み合わせた山梨学院小オリジナルとなっている。高さが3m近くある登り棒や斜めはしご、2階デッキからのチューブスライダー、くもの巣ネット、ぐるぐるUFOなど、狭い空間にアイデアがぎっしり詰め込まれている。完成したのはゴールデンウイーク明け、そこから冒険の世界が始まった。一見すると危険に思えるような 仕掛けもあるが、さまざまな「リスク」がこの大型遊具の魅力。子どもたちは「ヒヤッ」とする感覚を味わって、危険回避の本当の身のこなし方を学んでいる。1年生から6年生までが一緒に遊ぶ空間の中で、友だちを確認しながら、自分自身を律し、トラブルを避けるための術も自然に学んでいる。
山梨学院小では、独自の教育方針として、子どもの選択や工夫を認める「自由」の保障と、自分の行動結果への「責任」の自覚を求める教育を実践している。「リスク」を全部排除してしまえば怪我はゼロになるが、金槌や包丁は危ないからと言って、工作や料理の時間に使わせなければ、小学校期に学ぶべき事を身に付けずに素通りしてしまう。遊びの場はすべてが学びの場であり「リスク」は学びの重要なスパイスと捉えている。ただ、事故が起きないよう地面に3cmの落下吸収マットを敷設するなど、ハード面とソフト面で細心の注意を払い、多少のリスクはあっても、大きな事故が起きないよう見守っている。評判を聞き、視察に訪れる学校関係者が後を絶たない。
大型遊具の隣には、一輪車練習施設が以前から備え付けられている。誰でもいつでも一輪車の練習ができるように開放されており、低学年の子どもは、補助バーに掴まりながら早く乗り出したいと練習に取り組み、上手くなった上級生の子どもたちは3人で手を結んだりして乗り回している。こちらもバランス感覚を養うのには格好の道具。子どもたちは、アスレチック遊具で遊んだり、一輪車に乗ったり、サッカーを楽しんだりして、昼休みの時間目一杯飛び回っている。山内紀幸校長は「本校には、チャイムがありません。でも、子どもたちは始業時間になったら、きちんと教室の席についています。教室に壁がなく、いろんな部屋を行き来していますが、集中しています。運動場も大型遊具も、休 み時間に使用する学年や場所や使い方に細かな規則はありません。異学年が混在していても、大きなトラブルなく遊んでいます。よく観察すると、それぞれの子どもたちにセルフマネージメント(自己管理)の意識が芽生えています。自分の体力の限界を知りつつ果敢に挑戦し、相手の行動にも気を配っています。行動の「自由」が保障されたこの大型遊具では、体力の向上とバランス感覚の獲得とともに、子どもたちの心が育っています」と話している。
文・カメラ(M.T)
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