
スケートシーズン開幕レースで、ショートトラックのスプリンター中口雪絵がとてつもない記録を打ち立てた。第35回日本学生ショートトラックスピードスケート選手権(インカレ)が10月20日、長野県南牧村帝産アイススケートトレーニングセンターで2日間の日程で開幕。初日の女子500mで中口雪絵(4年)が4度目の優勝、インカレ4連覇を達成させた。35年の歴史を数える大会で、4連覇を達成させたのは、男女を通じ第1回から第4回までの女子1000mを制した加藤美佳さん(当時中京大)ただ一人だった。中口の4連覇は30年ぶり2人目の快挙、500mでは史上初、並ぶことは出来ても抜くことは決して出来ない不滅の記録を打ち立てた。この他の山学勢は、男子1500mの山浦大明(1年)が健闘し3位に入った。学校対抗は、初日男子1位、女子は孤軍奮闘の中口の活躍で2位につけた
≪ 女子500m決勝 中口雪絵(なかぐち ゆきえ 4年 山梨学院高)≫
中口雪絵は膝に故障を抱えている。高校生の頃から少しずつ痛さが増していたが、2年前に悲鳴を上げ、診断の結果、完治させるには手術しかなく、その場合は2年間のリハビリが必要と判明した。選手生命の危機に立たされた中口は、悩んだ末に、無理をせずに膝と相談しながらレースに臨む道を選択、昨年は痛みとプレッシャーに耐えて3連覇を達成させた。向かえた今シーズンは、膝ではなく調子が悪く、2週間前にホームリンクの小瀬で開かれた全日本距離別では、いい滑りが出来なかった。しかし、気持ちをスパッと切り替えられるのも中口のいいところ、決勝レース前に篠原祐剛コーチから渡されたクイーンの曲を聞き、気持ちを高揚させてスタートラインに立った。1レーンからのスタート、絶好 のスタートダッシュで一気にトップに立った。後から菊池萌水(早大)、北吹史(法大)、曽我佳花(立教大)が追って来たが、寄せつけなかった。最後は独走状態でインカレ4連覇を達成させた。
中口雪絵選手は「4連覇へのプレッシャーで、シーズンに入るのも嫌やった上に、2週間前の距離別の時から絶不調で、逃げ出したいほどしんどくて、辛くて、今回は無理やという気持の方が強かった。滑り終わった後は泣きそうになった、よかった〜」。いつも明るい表情の元気娘は、レース後、本当は物凄く苦しくて、プレッシャーに押し潰されそうだった胸の内を率直に語った。
中口選手の両親は大阪・高石市から駆けつけて我が子のレースを見守った。父親の中口隆治さん(57歳)は「転ぶなよと冷や冷やして見てました。皆さんのおかげで4連覇出来ました。娘にはおめでとう言います」。母親の喜美代さん(51歳)は「頑張れいうと本人にはプレッシャーのようなので、よう言えまへんでした。今回は調子が悪い言うてましたので、1位で帰ってきた時はホッとしました。よう頑張ったと思います」と顔をほころばせていた。
≪ 男子1500m決勝 山浦大明(やまうら ひろあき 1年 長野・小海)≫
山浦大明は、大会会場の帝産リンクのジュニアクラブで育った地元っ子。同じ帝産リンクで育ち、五輪選手になった篠原祐剛コーチなど強豪選手をたくさん輩出している山梨学院で強くなりたいと山学大に入学した。伸び盛りの1年生は積極果敢に決勝レースに挑んだ。4レーンからスタート、最初はゆっくりしたペースで2位だったが、残り9周でペースがグンと早まり4位に下がった。残り6周で3位に上がり、上位争いに加わった。1位齋藤悠(神大)、2位吉川政志(大経大)に次ぐ3位でゴールした。
山浦大明選手は「決勝に進めたのは良かったが、もっと仕掛ければ違うレース展開になったと思うので3位は悔しい。この帝産クラブのリンクで育ちました。山学大の先輩はオリンピックに出る凄い選手が多い、自分も強い先輩の後を追って強くなり、将来はオリンピック選手になりたい」と抱負を語った。
この他のレースでは、與那誠一(3年 福岡・須恵)が男子500m2連覇に挑んだが、決勝レースのラスト1周第1コーナー出口で転倒し4位に終わった。2日目(最終日)の21日は、男女の1000m決勝、男子3000m決勝、男子5000mリレー決勝などが行なわれる。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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