男子第63回全国高校駅伝大会山梨県予選が11月3日、富士河口湖町の西湖湖畔周回コース(男子 42.195キロ)7区間で20校が参加して、都大路の出場1枠と関東大会出場6枠を目指して健脚を競い合った。2年連続12度目の優勝を目指す山梨学院は、昨年1年生ランナーとして経験した2年生6人全員と、故障から復帰し力をつけた3年生の深沢優が抜擢された。山梨学院の1区・矢ノ倉弘が2列目の真ん中から午前10時30分の号砲とともに一斉スタートした。1区・矢ノ倉と2区・深沢がともに区間1位で2位の韮崎に、それぞれ18秒差をつけ36秒差とする好走。すると3区・上田健太が区間記録を31秒更新する快走で2位の韮崎に1分50秒の差をつけ独走態勢を築く。山梨学院は昨年6 区で区間新を出した4区・市谷龍太郎が区間新を43秒更新する新記録、5区・南嘉紀が区間賞、6区・河村知樹も区間新を31秒更新する快走で勝利を確実なものとし、7区アンカー・西山令に襷を託す。昨年2区で区間新を出したアンカー西山が区間新を6秒更新する快走を見せ、チーム記録2時間8分29秒の大会新記録でゴールテープを切った。全国を視野にいれた7区間全員区間賞(区間新4人)の超快走で、2年連続12度目の優勝を達成した。山梨学院は12月23日に京都で行われる全国大会(都大路)に山梨県を代表して出場する。なお、女子も山梨学院が4年連続12度目の優勝を果たし、8度目のアベック優勝となった。
2年連続12度目の優勝を目指す山梨学院は、昨年1年生ランナーとして経験した6人全員と、故障から復帰し力をつけた3年生の深沢優が主将として選手登録された。午前8時に大会本部に提出されたオーダーは、1区・矢ノ倉弘(2年)、2区・深沢優(3年)、3区・上田健太(2年)、4区・市谷龍太郎(2年)、5区・南嘉紀(2年)、6区・河村知樹(2年)、7区アンカー・西山令(2年)となった。スタート時点の概ねの気象状況は、天気「曇り」、気温「10.3度」、湿度「48%」、風向「北1.9m/s」。西湖レストハウス前に参加20校の選手が集合、2年連続12度目の優勝を目指す山梨学院は2列目の真ん中から午前10時30分の号砲とともに一斉スタート。
◆第1区・矢ノ倉弘(2年)〈1位 31'27〉(区間賞)チーム《1位 31'27》
【西湖レストハウス前〜旧ガソリンスタンド前】[10,000m]
□矢ノ倉は、昨年4区を走り残り3キロで山梨農林に並ばれ3位に甘んじた。その矢ノ倉が、流れをつくる最長距離の1区に抜擢された。矢ノ倉は適度な緊張感で「レースを楽しもう」と2列目の真ん中からのスタート。すぐに集団のトップに躍り出て自然体で走る。集団は1キロ、2キロ、3キロまで牽制し合いゆっくりなペース。「このままではいけない」と、この流れを変えるために向かい風の中を、敢えてペースを上げ先頭を引っ張る。「中盤からリズムに乗れ、5キロ過ぎには自分のペース」で快調に走る。この走りで「ラスト3キロで体力を奪われた」。「タイムより順位にこだわるレースを展開し、後ろとの差を思うように離せなかった」としながらも、立派に1位(区間賞)と流れをつくる走りに 徹し、1区中継所の旧ガソリンスタンド前で待つ深沢優(3年)に襷を手渡した。
◆第2区・深沢優(3年)〈1位 8'57〉(区間賞)チーム《1位 40'24》
【旧ガソリンスタンド前〜西湖漁業組合駐車場】[3,000m]
□故障で2年間走れなかった主将の深沢は実弟の駿(2年)に付き添われ中継所で待ち構えていた。襷を受け「力まずに、ゆっくりいこう」と坂を上がり、平らでくねるコースを2年間のブランクを感じさせない軽快な走りで飛ばす。1キロ地点、陰日向になり支えてくれた母親の「『優、頑張れ』」の声、時計に目を落とすと明らかにオーバーペース。深沢は走れたことへの喜びが勝り身体が自然に動いていた。「押さえなければ、終盤の下り坂に捕まる」と1キロから2キロの上り坂を自重し走る。中間地点、「上がり坂で押さえ過ぎて、逆にペースダウン」。懸命に応援してくれている祖母の姿が見える。残り1キロ、この下りで遅れを取り戻そうと懸命に走るが「思うようにラップが上がらない。支えてく れた家族や仲間の顔が浮かぶ」。深沢は走れる至福の時を全身で感じながら力走し、父親や親戚が応援している2区中継所へ。トップを守る区間賞の走りで西湖漁業組合駐車場の上田健太(2年)に襷を託した。
◆第3区・上田健太(2年)〈1位 24'37〉(区間賞・区間新記録)《1位 1:05'01》
【西湖漁業組合駐車場〜西湖こうもり穴手前】[8,1075m]
□上田は昨年、体調不良で直前に1区から7区に変更されたが、今年は体調万全。上田は「さらに自分が後続を引き離し、チームに勢いをつけたい」と走り出す。入り「3分ペースで走るつもりが、追い風で予想より早いタイム」で飛ばす。自然に走れていたので「力まないで、このままのペースで押した」と快走する。中盤、左のトンネルを曲がったところが「向かい風で、少しきつかったが、前傾姿勢でテンポ良く走り」、「3分3秒以上はかからないように」と力走する。向かい風がなくなったラスト1キロ「死ぬ気で走った」と激走。「目標タイムをやや下回ったものの、独走の中で、確り自分のペースで最後まで押せた」と区間新記録で後続を大きく引き離し、西湖こうもり穴手前の3区中継所の4区・市 谷龍太郎(2年)に襷を繋いだ。
◆第4区・市谷龍太郎(2年)〈1位 24'16〉(区間賞・区間新記録)《1位 1:29'17》
【西湖こうもり穴手前〜カーブミラー付近】[8,0875m]
市谷は「上田は絶対1位で来ると思っていたので、自分のペースで、先頭で確り走ろう」と落ち着いて襷を受け取り走る。前半、最初は上りがあり、それから下りが多いコースを、「入りは2分52秒で入る」。確り手を振り、2分台をキープ。「この調子でいけば23分台では走れる」と淡々と走る。6キロ過ぎの平坦なコースを快走する。だらだらな上りに入ると強い向かい風、「一番辛かった。ここまで、繋いでくれた仲間のことを思い、自分がここでもっと引き離さなければ」と自身に鞭を入れる。市谷は昨年の6区でマークした区間新記録に続く、他の追随を許さない区間新の疾走ながら、「自分の持ちタイムに結果が及ばなかった。自分を褒める走りではなかった」と自分を戒めながら、4区中継所の カーブミラー付近で待ち構える5区・南嘉紀(2年)に襷を手渡した。
◆第5区・南嘉紀(2年)〈1位 9'02〉(区間賞)チーム《1位 1:38'19》
【カーブミラー付近〜青木原看板付近】[3,000m]
南は2年連続で5区を走ることとなった。昨年、怪我で思う練習ができないなかでも力走し区間賞に輝いた。今年の体調はすこぶる良い。「今年こそ、区間新を塗り替える」と誓い中継所に立った。市谷から「頑張れ」と襷を受け取ると気合いが入り、勢い良く走り出す。向かい風500メートルも気にすることなく気分が乗り、ハイペースで走る。上がり坂も飛ばし、監督から「1キロ3分を守っていけ」という指示よりはるかに速く走る。それが祟り1キロ過ぎの上り坂でペースが狂ってきた。気持ちとは裏腹に徐々にペースが落ちる。ラスト1キロの平坦なコースと下りを気力を振り絞り力走。「区間新を狙って力走したが及ばなかった。それでも昨年に比べて、良く走れた」と、昨年に続く区間賞で青木原看板付近の5区中継所の6区・河村知樹(2年)に襷を託した。
◆第6区・河村知樹(2年)〈1位 14'51〉(区間賞・区間新記録)《1位 1:53'10》
【青木原看板付近〜勧岳園オートキャンプ場】[5,000m]
河村は「襷をもらって、わくわく感があって」、くねくねしたコースを「3分の予定を2分50秒で突っ込んだ」。2,000メートルまで快調に飛ばす。中盤、向かい風が河村を襲う。河村は前傾姿勢を意識して走るが「3,000メートルからきつくなり」、4,000メートルまでに3分5秒かかった。風に押され苦しい中を、リズムが崩れないように慎重に走る。終盤はほぼ平坦で直線コース「スピードがでるところ、前半ハイペースで走ったのできつかった」が、「昨年1年生で硬くなり、3区で自分の走りが出来なくて、区間3位と悔しい思いをした」。それを払拭しようと力を振り絞り激走。河村は昨年に市谷龍太郎が出した区間新記録を31秒塗り替える走りで、後続をはるか彼方に置き去り、最 終中継所の勧岳園オートキャンプ場で待つ、7区アンカー・西山令(2年)に襷を手渡した。
◆第7区・西山令(2年)〈1位 15'19〉(区間賞・区間新記録)《1位 2:08'29》
【勧岳園オートキャンプ場〜紅葉台キャンプ場前】[5,000m]
西山は「河村が、すごい差を広げて襷を繋いでくれたので、自分はきっちりゴールに持って行くことを心掛けた」と平坦なコースを走る。監督の「入りは3分で落ち着いていけ」という指示どおり、向かい風にもめげずに1キロ3分ジャストで落ち着いて走る」。平坦なコースが2キロ過ぎに終わり、坂に入って「少しきつくなり、ペースが少し落ちた」が残り2キロの坂を力走する。平坦なコースの残り800メートルを「皆の応援の中を、気持ちよく走る」。最後の200メートルは「思い切り、下っているので逆らわずに」さらにラップタイムを上げる。ゴール付近では「仲間が笑顔で迎えてくれていたので頑張れた」と声援に応え激走。西山は昨年の2区に続き、区間新を6秒更新する快走で2位の山梨農 林との差を7分55秒と引き離しゴールテープを切った。山梨学院は7区間の全てで区間賞を獲得し、そのうち4区間で大会新記録を出す超快走で、チーム記録2時間8分29秒の大会新記録をマークし優勝した。
□主将の深沢優(3年)は「区間新記録4つと全区間で区間賞をとれて、大会新記録で優勝できたので、自分達のまずまずの力は出せたと思う」と強調。一方この優勝は「保護者の方に土・日の食事をつくって頂いて、OBの皆さんに応援に来て頂き、力を頂いた御蔭」と感謝の念を忘れない。そのうえで「残りの期間で練習を積み、関東では優勝を狙い、全国大会で勝負し恩返しをしたい」と決意を述べた。
□箱崎孝久監督は、試合前に「選手の仕上がりは怪我や風邪もなく例年になく上手くいった。穴はない」と言い切っていた。それが現実となり「選手は思ったより良く走ってくれた。95点を上げたい」と誉め称えた。「欲を言えば、1区に『最初は押さえて入りなさい』と指示をしたのが効き過ぎて、それが原因で区間賞は取ったもののタイム的に遅かった。1区が力どおりに走っていたら県大会新記録(都大路H13・山梨学院)が出ていたと思う」と欲を覗かせ苦笑い。「これからインターバルトレーニングの質を上げたり、時間を延ばしたりして選手の力を引き出し力をつけ、関東では優勝を目標に戦い、都大路では山梨県代表最高順位・谷村高の記録10位を目指したい」と語った。
文(H.K)、カメラ(今村佳正)(小池裕太)(八巻和夫)
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