平成24年度男子第65回関東高等学校駅伝競走大会が11月24日、茨城県のひたちなか市総合運動公園陸上競技場周辺コースで、1都7県(代表6校)の48チームが参加して行われた。午前10時50分、スターターのピストル音が総合運動公園内に鳴り響き一斉スタート。常陸の晩秋路、7区間42.195キロメートルで関東一の健脚が競われた。山梨県第1代表の山梨学院(17年連続17回目)は、1区・上田健太(2年)が5位と上々の走り。2区・深沢優(3年)が粘りの走りで7位と凌ぐ。3区・市谷龍太郎(2年)が快走し4位に、すると4区・河村知樹(2年)が1位・区間賞と快走し8秒差の2位に一気に浮上するものの、白鴎大足利に先をいかれる。5区・南嘉紀(2年) が走りを抑え過ぎトップ白鴎大足利との差を21秒、6区・矢ノ倉弘(2年)が2秒広げられ23秒差で7区アンカー・西山令(2年)にリレー。西山は白鴎大足利を必死に6秒差まで追い上げる激走をし2位でフィニッシュ。山梨学院は全国高校駅伝で出した県最高記録を2分3秒更新する都大路入賞圏内の2時間5分48秒をマーク。箱崎孝久監督は「記録的には良かったが、順位的には残念な結果となった。もう一度、鍛え直して都大路で、この経験を生かしたい」と語った。
スタート地点の概ねの気象状況は、天気「曇り」、気温「10度」、湿度「50%」、風向「北東3m/s」。17年連続17回出場の山梨学院・箱崎孝久監督は「関東で優勝し、都大路に挑みたい」と目を輝かせる。今月18日の日本体育大学長距離競技会5000メートルで上田健太がチームメートの市谷龍太郎の県記録を4秒51更新する14分9秒26(県高校新記録)をマークしたのを始め、河村知樹(2年)、西山令(2年)が約2秒自己記録を更新するなどチーム力は上昇中。「力の順に区間に似合った選手を抜擢した」と、1区・上田健太(2年)、2区・深沢優(3年)、3区・市谷龍太郎(2年)、4区・河村知樹(2年)、5区・南嘉紀(2年)、6区・矢ノ倉弘(2年)、7区アンカー・西山令 (2年)の布陣。茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨からの代表6校の48チームがスタートラインに着いた。17年連続17回出場で優勝を目指す山梨学院は1列目真ん中から午前10時50分、号砲が総合運動公園内に鳴り響き一斉スタート。
◆第1区・上田健太(2年)〈5位 29'54〉チーム《5位 29'54》[10,000m]
上田は今シーズン、県予選3区で区間賞・区間新、その後の記録会5000メートルで県高校新記録14分9秒26をマークするなど絶好調。関東大会初出場の上田は総合運動公園周回を「内側への位置取りを意識」し2周、道幅が狭くなるV字コースをも意識し、先頭の那須拓陽の後を2番手で走る。上田はクレバーな走りで左折し1.4キロの広い直線コースへ。500メートル手前で上って下る常陸那珂有料道路に架かるひたちなか大橋のアップダウン。「上半身の使い方や視線の使い方」に留意し走行する。二つ目の下って上がるアップダウンを過ぎて、早稲田実業が仕掛ける。日立建機手前を左に曲がり、折り返し地点の直線で集団は縦長になった。上田は「向かい風、自分のリズムを大切に」と自制し順位を落とす。日立建機を左折し約300メートル先の信号を左折、265号線の平坦な直線コースをひた走る。自動車安全運転センターの信号を過ぎ、残り1キロ「納得のいく、ラストスパートが出せない」。それでも第1中継所で待つ主将・深沢に、区間5位、トップの作新学院と18秒差、4位の八千代松陰に6秒差として、チームに勢いをつける位置で襷を手渡した。
【1位 作新学院、2位 那須拓陽、3位 早稲田実業、4位 八千代松陰、5位 山梨学院】
◆第2区・深沢優(3年)〈19位 8'53〉チーム《7位 38'47》[3,000m]
昨年に続き2度目の2区抜擢となった主将・深沢「昨年は体調不良で思う走りが出来ず、9分17秒と不本意なタイムだった」。「高校に入って初めて万全な体調で臨めた」と県予選2区(3キロ)を走る。深沢は8分57秒の区間賞で「納得のいく走りが出来た」と復活の狼煙を上げた。体調万全の深沢は、襷を受け取ると「最初は押さえて入ろうと」自制し400メートル直進し信号を左折。1.5キロのやや起伏のある平坦なコース走る。落ちてきた早稲田実業を抜くが、「慎重になり過ぎて抑え過ぎた」と後続の白鴎足利、東京農大三、藤沢翔陵に抜かれる。信号を左折し、ラスト1キロ、満を持してラストスパート。左折して400メートルのコースを力走、東京農大三と藤沢翔陵の後ろ姿が大きくなる 。さらに右折して、残るパワーを全快にして約150メートルを力走。チーム順位を7位と下げたものの、県予選より3秒、昨年のタイムより24秒上回る好走。トップの八千代松陰に40秒差、5位の東京農大三に2秒差、6位の藤沢翔陵に1秒差として、第2中継所で待つ3区・市谷に襷を渡した。
【1位 八千代松陰、2位 那須拓陽、3位 作新学院、4位 白鴎大足利、5位 東京農大三、〈7位 山梨学院〉】
◆第3区・市谷龍太郎(2年)〈3位 24'18〉《4位 1:03'05》[8,1075m]
市谷は昨年4区を走り1年生ながら8位と1人気を吐いた。今年も県予選4区で区間賞・区間新と相変わらずの好調。市谷は「トップとの差30秒位なら行ける」と踏んでいたが、1位八千代松陰とは40秒差。襷を受け取り「焦らずに、自分のペース」で走る。総合運動公園入口の信号を左折、狭くなるV字コース付近で藤沢翔陵と東京農大三を難無く抜き去る。市谷は上って下る常陸那珂有料道路に架かるひたちなか大橋のアップダウン、下って上るアップダウンも、視線をぶらさず前を見据え軽快に走る。市谷は日立建機手前を左に曲がり1005メートルの折り返し、作新学院と八千代松陰を抜き3位に浮上。さらに前を行く那須拓陽、白鴎大足利を必死で追い上げるがとどかない。ひたち海浜公園の直線コ ース、ひたち海浜公園ICの高架の信号の上り坂付近、後方から来た佐野日大と競り合うが「相手が強かった」と先を越される。市谷は信号を左折し約140メートルを直進し、順位を3つ、トップとの差を15秒縮める快走で、第3区中継所で待つ4区・河村に4位で襷を手渡した。
【1位 那須拓陽、2位 白鴎大足利、3位 佐野日大、4位 山梨学院、5位 八千代松陰】
◆第4区・河村知樹(2年)〈1位 24'05〉(区間賞)《2位 1:27'10》[8,0875m]
河村は昨年1区を走り区間25位と大きく出遅れたが、県予選で5区を走り区間賞・区間新と上り調子。トップ差25秒で襷を受け「自分の役割は先頭と確り争うことがテーマ」と気を引き締め走る。前を行く佐野日大を「攻めの気持ちで」、攻めに攻めて1キロ過ぎに捕らえる。平坦で道幅が狭くなるV字に折れる道を、さらに快調に飛ばす。左折し1.4キロのひたちなか大橋などのアップダウンを力走。佐野日大との差を広げるとともに前の集団との差を詰める。日立建機手前を左に折れると、コーチの「『行ける、行ける。確り最後まで粘れ』と声が聞こえたので力が湧いた」。折り返し地点を回り那須拓陽と白鴎大足利に追いつき、日立建機の信号を左折しすぐに那須拓陽を抜き去る。河村は265号線の平坦な直線コースに出て「向かい風が強い、無理をせずに風よけに」と白鴎大足利の後につく。ラスト1キロ、「白鴎大足利がスパートを掛ける気配を感じて、ついて行こうとしたが粘れなかった」と差が広がる。ひたち海浜公園の直線コースを快走。河村は区間賞の走りでトップ差8秒の2位として、第4区中継所で待つ5区・南に襷リレーした。
【1位 白鴎大足利、2位 山梨学院、3位 那須拓陽・佐野日大、5位 東京農大三】
◆第5区・南嘉紀(2年)〈16位 8'54〉《2位 1:36'04》[3,000m]
南は県予選の5区を2年連続で走り、2年連続の区間賞と調子は良い。昨年の6区から5区に起用された南は「河村は、上位で来ると思っていた。前で走るんだ」と決意を新たに気合いを入れる。南は河村から襷を受け取り肩にかけると、ひたち海浜公園の直線コースをトップで走る白鴎大足利の背中に集中。ひたち海浜公園ICの高架の信号の上り坂も無我夢中で追い快走。信号を左折した中間地点に差し掛かると「身体が重くなり、ペースが落ちる」。歯を食いしばり、さらに左折しラスト1キロの標示。南は時計を止めて確認すると5分40秒と表示されている。20秒のオーバーペース、「走りを切り替えて行こう。ラスト400でスパートしよう」と自制しペースダウンする。右折して総合運動公園の外周コースを走る。南はラスト400で「1秒でも前との差を詰めよう」と自分に言い聞かせスパートを掛ける。「前半、飛ばし過ぎ」足が思う様に動かない。それでも確り手を振り力走。南はトップ白鴎大足利に21秒差の2位として、総合運動公園外周の第5中継所で待つ6区・矢ノ倉に大声で「たのむ」と叫んで襷を渡した。
【1位 白鴎大足利、2位 山梨学院、3位 佐野日大、4位 那須拓陽、5位 東京農大三】
◆第6区・矢ノ倉弘(2年)〈3位 14'53〉《2位 1:50'57》[5,000m]
矢ノ倉は県予選で1区を任され「他校との駆引きに集中し、確実にトップで渡すことを心掛けた」とチーム大会新記録の流れをつくった。関東初出場ながら「緊張もなく普段通りで」南を待っていた。矢ノ倉は平坦で道幅が狭くなるV字に折れるコースを軽快に走る。左折し1.4キロの直線コース1位の白鴎大足利がはっきり見える。常陸那珂有料道路に架かるひたちなか大橋のアップダウンで「前との差が開いている。切り替えなければ」とペースを上げる。続く、下って上がるアップダウンを「プランでは前と10秒切る予定」と、「下りを利用してペースを上げる」が前から強く吹く風が重くのしかかる。日立建機手前を左に曲がり1005メートルの折り返し、保護者やチームメートの「前との差が詰まっ ているぞ」という声援に後押しされて力走する。日立建機を左折し、先を行く白鴎大足利を必死で追う。残り約400メートル、信号を左折したとたん気持ちとは裏腹に「身体が重くて動かない」。トップ差23秒の2位として第6中継所で待ち構えるアンカーの西山に「逆転してくれ」と襷を託した。
【1位 白鴎大足利、2位 山梨学院、3位 那須拓陽、4位 佐野日大、5位 藤沢翔陵】
◆第7区・西山令(2年)〈2位 14'51〉《2位 2:05'48》[5,000m]
西山は県予選アンカーで区間賞の走りをして、大会新記録でゴールのテープを切る時に、「何もパフォーマンスをしなかった。関東大会で優勝する時に取って置く」と述べた。西山の目の前で、白鴎大足利が襷交換を行い走り去った。トップ差23秒、西山は「1区から6区まで全力で繋いでくれた襷、関東優勝がチームの目標」と武者震いをして襷を受け取り駆け出す。1キロ「目視して20秒以上ある。『飛ばしすぎるな。焦らずに落ち着いて走れ』」と自分に言い聞かせ走る。ひたち海浜公園の直線コース、ひたち海浜公園ICの高架の信号の上り坂で「頭の中では坂とは考えずに、リラックスして上手く走り切る」。信号を左折し、600メートル「相手の背中が大きく見える」。左折して400メートルの 直進、主将・深沢などの声援を受け「きついが、白鴎を追い、さらにペースアップする」。右折して総合運動公園の外周スタート地点、箱崎監督の「『動いている、動いている。行けるぞ』」と声が掛かる。「心臓が、呼吸がきつい、でもまだ足が動いている」と差をどんどん詰める。「6人で繋いで来た襷とともにトップでテープを切りたい」とさらに猛追する。フィニッシュ地点、白鴎がテープを切る。わずか6秒差で、西山がゴールインした。西山は「都大路で関東の借りを返したい。指導者や応援してくれた保護者の恩にも報いたい」と誓った。
【1位 白鴎大足利、2位 山梨学院、3位 那須拓陽、4位 佐野日大、5位 藤沢翔陵】
□主将の深沢優(3年)は「チーム目標は春から関東優勝だった」と目線を落とした。目線を上げ「6秒差で負けて悔しい」と力を込める。「都大路まで残り一ヶ月、この悔しい気持ちをバネにして、チーム全員で練習し、自分達に足りないものを補いたい」。「都大路では1秒を大切にする自分たちのレースをし、チームメートと日頃から力を頂いている保護者の方、OBの皆さんと喜びを分かち合いたい」と一言一言一噛みしめて決意を述べた。
□箱崎孝久監督「記録的には良かったが、順位的には残念な結果となった」と肩を落とした。しばらくして「優勝できたと思う」。「皆、良く頑張ったが、一人、一人が1秒ずつ前に出ていたら勝てた。『勝つんだ』と攻めの姿勢がなかった」と振り返る。1区の上田は「前との差がなく、5位という良い順位で、予定どおりの走りをしてくれた」。2区の深沢は「もう少し頑張れたと思うが、まずまずの走り」。3区の市谷・4区の河村は「力どおり走ってくれた」。5区の南は「もう少し、頑張れたと思う」。6区の矢ノ倉と7区の西山も「もう少し、頑張れたと思う」。レース展開としては「4区で先頭に立つ予定だった。河村が一時は良く追いつき並んだが、ラストで競り負けて逆に離された」とポイント に上げた。「力のある子たち、負けたから、やらなければいけないと言う、気持ちになったと思う」と深く頷いた。後一ヶ月「もう一度、鍛え直して都大路で、この経験を生かしたい」と語り競技場を後にした。
文(H.K)、カメラ(Y.Y)(平川大雪)(今村佳正)(小池裕太)
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