平成24年度女子第21回関東高等学校駅伝競走大会が11月24日、茨城県のひたちなか市総合運動公園陸上競技場周辺コースで1都7県(各代表6校)の48チームが参加して行われた。午前10時00分、スターターのピストル音が総合運動公園内に鳴り響き一斉スタート。常陸の晩秋路、5区間21.0975キロメートルで関東一の健脚が競われた。山梨県第1代表の山梨学院(21年連続21回目)は、1区・青葉愛(2年)が区間賞の走りでトップに、混戦で襷を受けた2区・高橋真以(1年)が4位しと、3区・田中結女(3年)がアップダウンの上りで力を発揮し3位に上げると、体調が戻った4区・野田友梨花(2年)が快走し更に2位に浮上させる。5区アンカー・斉藤暁(1年)は15秒前を走る白鵬女子に区間1位の区間賞で猛追し7秒差の2位でフィニッシュ。山梨学院は昨年の全国高校駅伝で出した県最高記録を48秒更新する1時間8分57秒をマーク。萩倉史郎監督は「総合タイムもまずまずだった。子どもたちが良く走ってくれた」。チームの競り合いの激化の中、「白鵬女子に肉薄する走りが出来て、都大路に向け弾みがついた」と語った。
スタート地点の概ねの気象状況は、天気「曇り」、気温「9度」、湿度「50%」、風向「東北東2m/s」。21年連続21回出場の山梨学院・萩倉史郎監督は「白鵬女子にどれだけ肉薄できるか」と課題をあげた。「腸感冒で体調を崩していた選手などが戻り、チーム力は上向いている」と声が弾む。オーダーは1区・青葉愛(2年)、2区・高橋真以(1年)、3区・田中結女(3年)、4区・野田友梨花(2年)、5区・斉藤暁(1年)。1年生ながら県予選で3区1位区間賞と活躍した榑林万由子(1年)と、何と山梨県予選4区1位区間賞(前回5区1位区間賞)・前回2区・都大路3区と実績実力のある塩川結(2年)が入れ替わった。いよいよ都大路に向けチーム内の鎬を削るレギュラー争いが激化してきた。茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨からの代表6校の48チームがスタートラインに着いた。21年連続21回出場で優勝を目指す山梨学院は2列目左端から、午前10時00分の号砲とともに一斉スタート。
◆第1区・青葉愛(2年)〈1位 19'30〉(区間賞)チーム《1位 19'30》[6,000m]
□県予選と打って変わってウエイト管理万全な青葉は、「全国トップレベルの選手と走るのを楽しみ」にスタートラインに着いた。青葉は敢えて「前には出ずに先頭集団の後方で様子を窺った」。総合運動公園を一周あまりして、道幅が狭くなるV字に折れる道でも焦ることなく、やや縦長になった先頭集団の後方で走る。左折し1.4キロの直線コースの500メートル手前、常陸那珂有料道路に架かるひたちなか大橋のアップダウンを「力を出さないようにリラックスして走る」。しばらく平地が続き、そして下って上がるアップダウンを「下りを利用して、さらにリラックス」する。日立建機手前を左に曲がると先頭がスパート。折り返し地点へ約700メートル、集団が散けだす。青葉は集団から置いていか れないように走り「残り、300メートルが勝負」と逸る気持ちを抑える。残り300、青葉が満を持してラストスパートを仕掛けトップに躍り出る。日立建機の角を左折し約80メートル、第1中継所で待つ高橋に区間1位(区間賞)の走りで襷を手渡した。
【1位 山梨学院(山梨)、2位 白鵬女(神奈川)・埼玉栄(埼玉)、4位 荏田(神奈川)、5位 秦野(神奈川)】
◆第2区・高橋真以(1年)〈4位 13'15〉チーム《4位 32'45》[4,0975m]
□1年生の高橋は県予選2区で初出場1位を守る走りながら「チームの責任を背負って走ることの難しさを痛感した」。そして初の関東大会を「練習からメニューをこなしていたので不安はない」と迎えた。1区・青葉からトップで襷を受け取る。2位の埼玉栄と荏田と1秒差。8位までが4秒差と大混戦。すぐに後続に吸収され集団となった。約200メートル直進し信号機を左折。1.7キロの直線コース265号線へ、高橋は「強い選手と競っている」喜びに浸りながら走り、自動車安全運転センターの信号を過ぎ次の信号を左折。ひたち海浜公園の直線コース、誰ともなくスパートが掛かる。高橋は食らい付くがひたち海浜公園ICの高架の信号の上り坂で「白鵬女子が飛び出し集団が散け」後方に下がった 。3つ目の信号を左折し600メートルの直進「3位の埼玉栄と競り合う」が区間4位の力走で、1位と19秒、2位と7秒、3位と2秒差のチーム順位4位で第2中継所で待つ主将・田中に襷を手渡した。
【1位 荏田(神奈川)、2位 白鵬女(神奈川)、3位 埼玉栄(埼玉)、4位 山梨学院(山梨)、5位 八王子(東京)】
◆第3区主将・田中結女(3年)〈4位 9'50〉《3位 42'35》[3,000m]
□主将・田中は昨年5000メートルで日本人1位をマークし、山梨県予選1区1位区間賞、関東大会5区3位とチーム3位のリードオフマンとしてチームを牽引。今年は調子が上がらず山梨県予選は主将としてチームを支えた。「今回も裏方にまわるのかなと思っていた」が、このタフなコースで「走る切っ掛けをつくる」ことでノミネートされた。敢えて「まわりからも期待されていない」と居直り、プレッシャーを吹き飛ばし大会に臨んだ。トップ荏田と19秒差の4位で襷を受け「先頭が見える距離、頑張らなければ」と、気合いを入れて積極的に走る。しばらくして埼玉栄を抜き、狭くなるコースを抜け左折。田中はアップダウンの難所にさしかかると、アスリートとしての血が騒ぎ、前を行く荏田を果 敢に攻め2位に浮上。ラストのカーブを曲がったところで埼玉栄に抜き返されたものの、完全復活の切っ掛けとなるチーム順位を一つ上げる3位の快走。トップとの差9秒、2位との差1秒と縮めて第3中継所で待つ4区・野田に襷を手渡した。
【1位 白鵬女(神奈川)、2位 埼玉栄(埼玉)、3位 山梨学院(山梨)、4位 荏田(神奈川)、5位 常磐(群馬)】
◆第4区・野田友梨花(2年)〈3位 10'01〉《2位 52'36》[3,000m]
□腸感冒で出遅れた野田は関東初出場。昨年度の都大路4区で1年生ながら区間2位の好成績を収め脚光を浴びた。体調を崩してどん底を味わい「もう失うものはない」とリラックスして大会に臨む。主将・田中から無心で襷を受け取り走り出す。前を行く埼玉栄を200メートル過ぎで捕らえ抜き去る。残り約1000メートルで折り返し地点、「折り返しのターンが上手く行くか、不安でスピードが落ちた」と、前を行く白鵬女子との差が見る見る広がる。野田は「このままでは、いけない」と必死で白鵬女子を追い上げる。左折して300メートル「前との差を、少しでも詰めようと」力走する。左折し、約400メートル先で待つ「暁ちゃんが見えたので、勇気づけられ1秒でも多く縮めよう」と自分に鞭 打ち区間3位と快走、1位の白鵬女子に15秒差、3位の埼玉栄に21秒差をつけるチーム2位で、5区アンカーの斉藤に襷を託した。
【1位 白鵬女(神奈川)、2位 山梨学院(山梨)、3位 埼玉栄(埼玉)、4位 荏田(神奈川)、5位 常磐(群馬)】
◆第5区・斉藤暁(1年)〈1位 16'21〉(区間賞)《2位 1:08'57》[5,000m]
□斉藤は山梨県予選アンカーで「攻める姿勢を出せずに、自分の弱いところが出て、腕振りが落ちてしまった」と区間賞ながら自分を戒めた。その斉藤がアンカーで、野田から15秒差で襷を受け取った。意外や意外斉藤は緊張していた。「ただただ白鵬を追うだけ」と前を見て走る。約1.4の直線コース、「向かい風で思うようにタイムが上がらない」。左折し1.5キロのやや起伏のあるコース、時計を見ると20秒差となっている。「いけない」とペースを上げ追い上げる。左折し、「相手がへばっていたので」600メートル、左折して400メートル、右折して総合運動公園の外周スタート地点を走り、総合運動公園入口の信号を左折すると「中学の恩師が応援していてくれて、『まだまだ行けるぞ』 」と励ましの激が飛ぶ、その声に後押しされた斉藤は平坦でなだらかなくの字のコースを猛追する。左折すると「相手の背中が大きく見える」斉藤は無我夢中で走る。「目の前で手を上げてゴールする白鵬女子を見た」斉藤は、その7秒後にゴールした。
【1位 白鵬女(神奈川)、2位 山梨学院(山梨)、3位 埼玉栄(埼玉)、4位 柏日体(千葉)、5位 八王子(東京)】
□主将の田中結女(3年)は「昨年、初めての3位で凄く嬉しかったが、今年はそれよりも順位が一つ上がり2位ということで非常に嬉しい」と無邪気に微笑んだ。「しかも、一二年が主なチームで、全国に向けても良い手応えがあった」と表情が明るい。「でもまだ、7秒前には白鵬がいるので、後一ヶ月でどれだけ白鵬に詰められるか、追い抜けるかを課題に取り組み、全国(都大路)でも勝負できるチームにし、指導者や支援していただいている保護者の方々などに報いたい」と熱く決意を述べた。
□萩倉史郎監督は「総合タイムもまずまずだった。子どもたちが良く走ってくれた」と微かに笑みを浮かべた。1区の青葉は「一週間前の記録会で転んで膝を打撲したが、回復しての区間賞、よく頑張ってくれた」と沁沁述べる。2区の高橋は「タイム的には非常に良く走っている。後、15秒から20秒縮めれば全国でも十分戦える」と成長ににんまり。3区の主将・田中は「今回のコースは最後でアップダウンがある。田中はクロカンが強いので起用。その期待に応えて、上りで力を発揮した。このコースで9分50秒で走れば大したもの」と復調を喜ぶ。4区の野田は「腸感冒で肝臓を低下させて、やっと10月頃から練習を開始し、徐々に調子が上がってきている。これからまだまだ上がってくる」と太鼓判を押す。5区の斉藤は「記録会で軽い捻挫気味だったが、昨日トレーナーが東京から来てくれて手当てしてもらい、区間賞を獲得した」と目を細める。「ここは意外に折り返しとアップダウンのあるタフなコース。1時間8分57をマークしたのは大きい」。昨年の都大路の1時間8分51秒で6位の白鵬女子に「エース欠場の白鵬女子と言えども、1時間8分台で7秒差で競り合えたことは評価したい」。都大路に向けて後一ヶ月、今日の5人に「明日6人の中から3人選考会で選び、明後日に全国大会オーダーリスト(8名)を提出する」。選手の「意識も高まり、ウエートの自己管理も出来ているので、良いチームに仕上がっている」。今回チーム競り合いの布陣と、タフなコースなどを考慮すれば、都大路 で「1時間8分前半を出せる可能性が出てきた」と頷き、「白鵬女子に肉薄する走りで、都大路に向けて弾みがついた」と競技場を後にした。
文(H.K)、カメラ(Y.Y)(平川大雪)(今村佳正)(小池裕太)
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