女子第24回全国高校駅伝競走大会が12月23日、京都府の西京極陸上競技場を発着とする付設ハーフマラソンコースで都道府県代表47校が参加して行われた。10時20分に一斉スタートし、5区間21.0975キロメートルで高校駅伝女子の日本一を競った。例年になく大混戦と予想されたレース、山梨県代表の山梨学院(4年連続12回目出場)は関東大会2位で都大路入賞圏内のタイムを出した布陣で挑んだ。レースは主将の田中を中心に5名の選手が襷を繋ぎ1時間9分31秒の12位で、昨年自らが記録した山梨県の最高順位と最高記録をともに塗り替えた。山梨学院は青葉愛がスローペース(ラスト勝負)の展開に本領が発揮できず13位のトップ差17秒と入賞圏外に弾き出されると、一転して2区から5区はスピード駅伝となり、2区・高橋真以14位、3区・田中結女15位、4区・野田友梨花は昨年の同区間2位より6秒速い走りを披露したが区間10位の12位で、アンカーの齋藤暁に襷リレー。齋藤は力走したが順位を上げることが出来ずに、スタンドで応援する応援団・チアリーダー・吹奏楽に後押しさながら、皆の待つゴールに山梨県の最高順位と最高記録の襷を届けた。優勝は立命館宇治が1時間7分22秒で5年ぶり3回目の日本一となった。
□4年連続12回目の出場の山梨学院は、関東大会2位で1時間8分57をマーク。萩倉史郎監督は「エース欠場の白鵬女子と言えども7秒差と肉薄する2位は評価に値する」と手応えを掴んだ。都大路のオーダーは、この流れを汲んで、同じオーダーとなった。都大路経験組は1区の青葉(昨年・7区)、3区の田中(昨年・2区)、4区の野田(昨年・4区)、初出場組は2区の高橋と7区の齋藤の1年生。「ここまで皆、調子良く来ている。8位入賞を目指す」と都大路に挑む。この日の西京極陸上競技場は、天候 晴れ、気温 8.5度、湿度 60%、風向 北、風速 1.2m/s。北の旭川龍谷(北海道)から南の北山(沖縄)まで47都道府県代表がスタートラインに付いた。山梨学院は青葉が3列目のインコースから10時20分の号砲とともに一斉にスタートした。
第1区 6km【西京極陸上競技場~平野神社前】
青葉愛(2年)〈13位 19:56〉チーム《13位 19:56》(トップ差0:17) |
花の1区、青葉は「全国クラスでどれだけ戦えるか、楽しみでわくわくして」競技場を一周。青葉は大集団の中、なだらかな上がり坂の西五条通をあわてずゆとりをもって走る。青葉は1キロ地点「スローペースだなと感じながらもゆったりと走る。青葉は2キロ地点、横に膨れた大集団の中で「リラックスして後半に体力を温存しよう」と流れに身を委ねた。中間地点、長野東が揺さぶりをかけ集団を引っ張るもののスパートは掛けない。JR嵯峨野線の円町駅付近の4.65キロからの上がり「この坂で集団が動いて、付いて行けなかった」。「ここで引き離されたら皆に迷惑がかかる」と力走し、「もう一度、集団に付くことが出来た」。ラスト1キロの上がり坂「ここで頑張らないとチームも流れて行かないと、自分で流れをつくろうと」無我夢中で走る。残り400メートルで先頭集団の前にいた筑紫女学院が仕掛け集団は縦長になった。ロードの青葉は、スプリンターのスピードにみるみる置いて行かれる。青葉は2区の高橋が見えた300メートルで必死にラストスパート。「先頭から置いて行かれて済まないと言う気持ちと、『未だ先頭は見える頑張って』」と襷を、平野神社前の第1中継所で待つ、高橋に区間13位トップ差17秒で襷を託した。
☆1位 筑紫女学院(福岡)、2位 大阪薫英女(大阪)、3位 興譲館(岡山)、4位 青森山田(青森)、5位 豊川(愛知)、6位 八王子(東京)、7位 立命館宇治(京都)、8位 神村学園(鹿児島)。13位 山梨学院(山梨)
第2区 4.0975km 【平野神社前~烏丸鞍馬口】
高橋真以(1年)〈20位 13:36〉チーム《14位 33:32》(トップ差0:49) |
2区の高橋は「負けないように、流れをつくろう」と、襷を受け西大路通の坂を力強く上がる。高橋は金閣寺前信号付近を「1キロ過ぎてからは下りになるので、そこから前を追って頑張って行こう」と気合いを入れ臨戦態勢を取る。金閣寺前を通り過ぎ、カトリック衣笠教会を右に折れ北大路通へ順調に走る。いよいよ、ここから中継所までは下り坂の勝負所。高橋は北大路通の建勲神社前信号過ぎの中間地点を、下りに適応した「前を追って前傾姿勢を意識」して走る。残り1キロを「抜いたり抜かされたりの競り合いで途中粘った」が先頭との差が無情にも広がって行く。この攻防で茨城キリストと富山商を抜き長野東と常磐に抜かれた。高橋はやや平坦で緩やかに蛇行する紫明通を「コース取りを確りして、先頭が見えなくなるが食らい付いて追って行こう」と力走し、紫明通を右に曲がり烏丸通へ抜ける。高橋はラストスパートを掛ける前の500メートルで「白鵬女子に抜かれ付いて行ったが、そのまま白鵬が前に行った」。高橋は設定タイムより約50秒遅いタイムで、烏丸鞍馬口の第2中継所に順位を1つ落とす14位で駆け込み、田中に「大ブレーキで、足を引っ張ってしまった」と襷を託した。
☆1位 大阪薫英女(大阪)、2位 興譲館(岡山)、3位 立命館宇治(京都)、4位 神村学園(鹿児島)、5位 筑紫女学院(福岡)、6位 豊川(愛知)、7位 長野東(長野)、8位 青森山田(青森)。14位 山梨学院(山梨)
第3区 3km 【烏丸鞍馬口~室町小学校前折返し~北大路船岡山】
田中結女(3年)〈17位 10:04〉チーム《15位 43:36》(トップ差1:07) |
田中は襷を混戦の中で受け取ると、落ち着いて下って折り返しから上がりとなるコースへ出て行った。田中は地下鉄烏丸線の鞍馬口駅脇を軽快に走り過ぎる。田中は室町小学校前の折返点を「膨らみに注意し大回りせずに、かと言ってブレーキを掛けずに小回りせずに、ロスなくスムーズに上手く折り返された」とクレバーな走行を見せる。田中は鞍馬口駅付近の1キロを「自分のペースで、落ち着いた走りを心掛け」烏丸通を左折し紫明通へ抜ける。やや平坦で緩やかに蛇行する紫明通の中間点で、田中は「目の前に埼玉栄などがいたので追いつこうと追撃」、粘りの走行で堀川通へと抜ける。田中は「堀川通は上り。この上がりは譲れない、自分の走りの見せ所」とエンジンを全開にした。田中は前を行く埼玉栄などと追いつ追われつの激走を展開し、ついに埼玉栄などを捕え前に出た。田中は、その勢いのまま堀川通を左に曲がり北大路通へと駆け抜ける。いよいよ残り1キロを切り、最後のスプリント勝負。スプリント勝負は苦手な田中は、最後の最後で後から来た盛岡女子に抜かれ、さらには埼玉栄にも襷渡しの所で抜かれる。田中は北大路船岡山の第3中継所に順位を1つ落とし15位で、野田に襷を手渡した。
☆1位 豊川(愛知)、2位 立命館宇治(京都)、3位 大阪薫英女(大阪)、4位 興譲館(岡山)、5位 神村学園(鹿児島)、6位 筑紫女学院(福岡)、7位 須磨学園(兵庫)、8位 長野東(長野)。15位 山梨学院(山梨)
第4区 3km 【北大路船岡山~西大路下立売】
野田友梨花(2年)〈10位 9:33〉チーム《12位 53:9》(トップ差1:23) |
野田は昨年区間2位と相性のいいコース。「やってやろうと」と襷を受けとり、北大路通を1キロ上がり2キロ下がるコースを走る。「『どんどん行け』」と監督からゴーサインが出ている野田は、前を追い北大路通の上がりを渾身の力で駆け上がる。上がり最後の一番辛い所に「中学時代の陸上の先生や顧問の、応援してくれている顔が見え力が沸き」ギアを入れ替え力走する。野田は右奥に左大文字を見、カトリック衣笠教会の所を左に曲がり西大路通をひた走る。野田は西大路通の下り坂を「下りは得意なので飛ばして、一秒でも早く暁ちゃんに襷を渡そうと」と快走する。野田は金閣寺前を通り過ぎ、西大路通にある中間点を「昨年よりタイムが良くて身体が軽い」と気持ちよく速く走る。京福北野線の白梅町駅付近の残り1キロ付近「後ろからの追い上げと、前への追撃で辛かった」が、チームの8位以内入賞を目指して「死ぬ気で走った」と激走。さらに500メートルでトップギアに入れて、前を行く日本文理・盛岡女子・常磐の3人を抜き去り、昨年のタイムを6秒上回る快進撃。野田は区間10位の見事な走りで12位として、西大路下立売の第4中継所で待つアンカー・齋藤に襷を託した。
☆1位 豊川(愛知)、2位 立命館宇治(京都)、3位 須磨学園(兵庫)、4位 大阪薫英女(大阪)、5位 興譲館(岡山)、6位 神村学園(鹿児島)、7位 筑紫女学院(福岡)、8位 長野東(長野県)。12位 山梨学院(山梨)
第5区 5km 【西大路下立売~西京極陸上競技場】
齋藤暁(1年)〈10位 16:22〉チーム《12位 1'9:09》(トップ差2:09) |
アンカー・齋藤は「少し緊張しながら、『頑張ろう』」と襷を受け走る。すぐに「埼玉栄を抜いたが田村に抜かれ」西大路通のJR嵯峨野線の円町駅付近から下がって上がるコースを懸命に走る。地下鉄東西線の西大路御池駅脇を白鵬女子の背中を追いかけて通過。1キロ地点「身体は動いていると思ったが、前を走る白鵬女子がどんどん離れていく」。中間点を「田村だけには負けたくない」と走り去る。西大路通から右折し西五条通へ。残り1キロ「田村には『絶対勝つ』」と、追いつき追いこそうと走る。京都市体育館脇を左に曲がると、目に競技場が飛び込む。耳には確りと応援団の声援が聞こえる。「アンカーは自分の順位がチーム順位になるので最後まで諦めずに走ろう」と競技場に入る。齋藤は標的が先に行き、「これ以上順位を上げられない。チーム目標の8位以内の入賞が出来ない」と思った途端、「『情けない』感情が込み上げ」て胸がきゅんと締め付けられた。齋藤は観客の歓声と応援団・チアリーダー・吹奏楽の声援に後押しされ、最後までチームのために一秒でも早く襷を運ぼうとラストスパートを掛けて、昨年マークした自らの記録を塗り替える山梨県最高順位12位、最高タイム1時間9分31秒で皆の待つゴールに新たなデザインが託された襷を運んだ。
☆1位 立命館宇治(京都)、2位 豊川(愛知)、3位 興譲館(岡山)、4位 筑紫女学院(福岡)、5位 大阪薫英女(大阪)、6位 須磨学園(兵庫)、7位 青森山田(青森)、8位 神村学園(鹿児島)。12位 山梨学院(山梨)
◇主将・田中結女(3年)は「目標の8位以内入賞は出来なかったが、昨年の県最高タイムと最高順位を上回る成績が出せたことは良かった。1・2年生の若いチームなので来年は8位以内の入賞は出来ると思う。応援して頂いた全ての方々に感謝したい」と述べた。
◇萩倉史郎監督は「チームの調子は上向いていた。1時間8分前半をマークして入賞出来ると目論んでいた」と言葉を呑んだ。「1区・2区が都大路のムードに呑まれ、本領が発揮できなかった」と目を伏せる。特に「今日の1区のスローペース(ラスト勝負)の展開に、ロードが得意な青葉が、ラストスパートでスプリンターに対応出来ず、入賞圏内から弾きだされた」。一転して「2区から5区はスピード駅伝となった。4区・野田は昨年の同区間2位の記録より6秒早く走ったが、区間10位だったことが全てを物語っている」とレースを振り返り、「まだ、うちにはレースの流れを変えるだけの力がない」ときっぱり。「来年は新1年生を加え、スピートに磨きをかけるなど試合の流れをつくれるチー ムに育てたい」と語った。
文(H・K)、カメラ(Y・Y)(平川大雪)(藤原稔)(今村佳正)(小池裕太)
| アルバム1 |
女子第24回全国高校駅伝・山梨学院高校応援団
~仲間のために一丸となり、力の限り声援を送る~ |
スタート・ゴール地点となる京都市・西京極陸上競技場には、山梨学院高校駅伝部を応援するために吹奏楽部やチアリーダー部、応援団などおよそ100人が山梨から駆けつけた。山梨を前日22日にバスで出発し、京都に1泊しこの日の応援に備えた。今年度の全国大会のスポーツ応援は高校駅伝が初舞台。今までの練習の成果を発揮し、普段教室で机を並べ、一緒に勉学に励む仲間のために、力の限り、気持ちを一つにして声援を送った。女子のスタート時の競技場の気温は8.5度。日差しが出て若干の暖かさは感じられたが、京都盆地特有の「比叡おろし」が吹くと一変し、凍えるような寒さに。競技場バックスタンドの応援団は寒さを吹き飛ばし、選手の力になるよう熱のこもった応援を展開。山梨学 院のアンカー斎藤暁選手が昨年より順位を一つ上げて12位で競技場に戻ってくると、応援はますますヒートアップ。ゴール後は全選手を称え、惜しみない拍手を送った。凍える寒さの中、元気いっぱいの笑顔で声援を送ったチアリーダー部の
塩入玲未部長は「駅伝部の力がなければ全国の舞台で応援することはできなかったので、この場に連れてきてくれた駅伝部のために自分たちの力が選手に届くよう一生懸命応援しました。競技場からは私たちの声援が届かないかと思ったけど、しっかりと届いていたので良かったです」と語った。また、応援を音楽で盛り立てた吹奏楽部の
前島政道部長は「隣の観客席に強豪校の応援団がいて良い刺激になった。同じクラスメートが頑張っていたので一つでも順位を上げられるよう、力になるように演奏しました。昨年よりも順位が上がったので、少しは応援で貢献できたかなと感じています。この経験を私たちもコンクールなどでいかしたいです」と述べた。時折寒風が吹き荒れる中、応援団の最前線で声を張り上げた
浅川莉央応援団長は「去年よりはチアなどとも連携が取れていたので良かった。応援団は2年生が主体で不慣れな部分もあったが、駅伝部も2年生が主体で自分たちと同じ仲間が頑張っていたので、負けられないという思いで一生懸命応援しました。結果、前回よりも順位が上がったので良かったです」と語った。スタンドで声援を送った
椚謙一PTA会長は「去年よりもタイムが上がって良かった。選手一人一人が本当に良く頑張った結果。入賞はできなかったが着実に上がってきているので来年はさらに期待したい。頑張った選手にお疲れ様と言いたいです」と笑顔で答えた。この日の女子の結果や学校応援について
川手佳彦統括顧問は「選手たちは良く頑張った。少しずつ力を付けてきている。日頃の練習の成果が着実に根付き、来年に期待が持てる。駅伝は一人でできるものではない。応援団や保護者などたくさんの人の支えがあって初めて襷を繋ぐことができる。選手たちと応援団が見えない襷を繋いだことがこの結果に繋がったと思う」と総括した。
文・カメラ(Y.Y)
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