山梨学院パブリシティセンター
第89回箱根駅伝1日目(往路)
〜2区オムワンバが快走モグスに並ぶ12人抜き〜
〜過去にない強風のレース、往路11位で復路へ〜

"箱根駅伝"第89回東京箱根間往復大学駅伝競走が始まった。正月2日午前8時、19大学と学連選抜の1区ランナー20人が大手町・読売新聞社前を一斉にスタートした。今年の往路は、突風に体を持っていかれるほどの過去に例がない強風下のレースとなった。27年連続27回目の山梨学院大の1区は4年生の土田俊徳、最初で最後の箱根、土田はプルシアンブルーの伝統の襷を肩に、疾風となって都内を走り抜けた。2区の新留学生エノック・オムワンバは、先輩のモグスが記録した1年生留学生最高記録に並ぶ12人抜きの快走。3区の日本人エース井上大仁は、強い向かい風の海岸線を力走。4区の鳥羽和晃も最初で最後の箱根、4年間の集大成の走りで小田原へ。5区の松本大樹は両足が痙攣を起こしそうになり足が動かなくなったが、懸命につなぎ往路11位で芦ノ湖のゴールに入った。往路の1位は山上りで逆転した日体大、2位早大、3位東洋大の順。山学大は、明日、トップと7分54秒差で箱根の山を下る。


今年の山学大は決して前評判は高くない。上田誠仁監督に言わせると、個々の力は劣っても、力を寄せ集めて良い味を出す"寄せ鍋軍団"、往路で上位争いをして流れを作り、9区の主将牧野俊紀以外は1・2年生を配した復路で粘り切る作戦。27年目の箱根が、いよいよ始まった。

1区[21.4キロ 大手町 ⇒ 鶴見] 
土田俊徳(つちだ としのり〈4年 山形・仙台育英〉)
☆区間16位 1時間05分32秒

1区に起用された土田俊徳は、4年、最初で最後の駅伝、大学三大駅伝初出場だが、6月の全日本大学駅伝選考会で好走し抜擢された。土田はチームの期待を背に飛び出した。最初はスローペース、20人の集団の後方で、無駄な動きをせずに、落ち着いて走った。中盤で東洋大の田口雅也がスパート、集団がばらけ、先頭集団からやや遅れた。青学大・早大・東農大・帝京大らと競り合い、一旦は17位に後退したが、終盤追い上げ16位で襷をつないだ。土田俊徳選手は「チームの流れを作る重要な区間、最初はスローペースで落ち着いて入れたが、中盤で力のある選手がペースを上げたのに対応できなかった。先頭集団に遅れても、自分のペースを守るようにして懸命につなぎました」。土田は2区のエノックに「頼むぞ」と声をかけて襷を渡した。土田は結果報告会で「チームに迷惑をかける結果になり申し訳ありませんでした。自分たち4年は、走れたものも走れなかったものもこれで終わりですが、10区の選手がゴールした時から、戦いは始まっていると思う、来年は頑張ってもらいたい」と後輩たちに後を託した。

2区[23.2キロ 鶴見 ⇒ 戸塚] 
エノック・オムワンバ〈1年 ケニア・ナイクル〉)
☆総合4位 2時間15分04秒 / 区間2位 1時間09分32秒

各大学のエースが集まる花の2区を任されたのは、ルーキーの新留学生エノック・オムワンバ。ケニアの高校時代は中距離ランナーだったが、上田監督・飯島コーチの指導で長距離の才能が開花、インカレ5千m・1万m優勝など、走るたびに距離と成績を伸ばして来た。そして、やってくれた。16位で受けた襷を一気に4位に引き上げた。日大のベンジャミンとともに12人抜き、先輩のモグスが作った1年生留学生のごぼう抜き記録に並ぶ快走を演じた。エノック・オムワンバ選手は「体が軽いので、風に飛ばされそうになった。悪いコンディションだったが、我慢、我慢、と思って走った。12人抜きは嬉しいが、ラスト勝負で勝てなかったのは悔しい。来年はモグス先輩のタイムを越えたい」と覚え立ての日本語で語った。オムワンバの箱根目標は、2区を1時間06分04(区間記録)で走ったモグス先輩の記録に迫れるように努力すること。そして、将来の目標は、実業団に入り、オリンピックに出てトラック種目で優勝すること。1年の箱根路で、目標への第一歩を刻んだ。

3区[21.5キロ 戸塚 ⇒ 平塚] 
井上大仁(いのうえ ひろと〈2年 長崎・鎮西学院〉)
☆総合5位 3時間21分44秒 / 区間7位 1時間06分40秒

井上は2年生ながら、チーム内日本人トップの実力の持ち主。出場した3つの駅伝はすべて1区を担い、前回箱根10位、出雲5位、全日本2位と安定した成績を残して来た。準エース区間を任され果敢に挑んだ。襷を受けてから明大・駒大と3位争いを展開した。上田監督は、残り3キロで先に仕掛けたのがよくなく最後に疲れが出たと分析、終盤に後から来た早大のエース大迫傑らに抜かれ5位で平塚の中継所に飛び込んだ。井上大仁選手は「周りに気を取られて、弱さが出た。風の中で仕掛けたというより、利用されて終ってしまった。前半じっくり行って、後半勝負と思っていたが、納得できない。次ぎに活かさなければ意味がない、本当の意味の強い選手になりたい」と悔しさを滲ませた。高校時代の井上は長崎県の県高校駅伝1区区間賞が主な競技成績だったが、山学大入学後に急速に力を伸ばした。将来の目標は、マラソンでオリンピックに出ること。来年の建て直しを心に誓い、明日に向かい、甲府盆地の風を切って練習に励む。

4区[18.5キロ 平塚 ⇒ 小田原] 
鳥羽 和晃(とば かずあき〈4年・群馬・前橋育英〉)
☆総合5位 4時間21分49秒 / 区間14位 1時間00分05秒 

鳥羽和晃は、出雲と全日本には出場経験があるが、箱根は最初で最後、「4年間の集大成の走りをする」と心に近い平塚を飛び出し、小田原に向かった。ここも風が強かった。鳥羽の走りは跳ねる走り方だが、向かい風で跳ねると疲れが倍加するので意識して抑えた走りをした。前半は落ち着いて走れた。4,5キロで6位の明大八木沢元樹に抜かれたが、14キロ付近で駒大を抜き、5位をキープして襷をつないだ。鳥羽和晃選手は「群馬育ちなので、風には慣れていると思っていたが、想像以上の風で、リズムが取れなかった。沿道から「鳥羽、頑張れ」という声援が聞こえて来て、ものすごく嬉しかった」。集大成の走りと感動を胸に、生涯ただ一度の箱根を走り終えた。復路後の結果報告会で鳥羽は涙を流しながら「エノックと井上がいい流れで運んで来てくれたが、自分が、最後に甘さが出て流れを悪くしてしまった。それがシード落ちにつながったと思う。(絶句)後輩たちには大きな課題を残してしまったが、自分はこのチームで走れて幸せでした。この悔しさを繰り返さないように頑張ってもらいたい」と後輩たちに訴えた。

5区[23.4キロ 小田原 ⇒ 箱根] 
松本 大樹(まつもと だいき〈4年 島根・出雲工〉)
☆総合11位 5時間48分09秒 / 区間13位 1時間26分20秒

最難関の山上り5区は昨年3人抜きを演じた松本大樹が2年連続で起用された。松本はチーム全員の期待を背負い懸命に箱根の山を駆け上がったが、去年とは条件が違った。今年は苦しい走りになった。5位で襷を受け、小涌園までは順調に走れたが、16キロで足に違和感が出て力が入らなくなり11位に後退した。松本大樹選手は「風が強かったので、サバイバルレースになると思ってレースに入った。気持ちの面で引かないようにして頑張ったが、途中で足が止まってしまった、走り込みが足りなかったと思います。自分が襷をつながなければ明日につながらないし、前が見える位置で渡すことが大切なので11位ですけど、最後の1秒まで必死に走りました」。懸命に明日に望みをつなげた。結果報告会で松本は「4区までのいい流れを自分が完全に断ち切ってしまいました。シード落ちというのは完全に自分の責任です。申し訳ありませんでした。後輩たちには、自分たちのような悔しい思いはしてほしくない、来年に向けて気持ちを切り替え、来年は笑顔でゴールしてほしい」と涙をこらえて訴えた。



上田誠仁監督は「1区は出遅れたが、2区・3区は想定内、4区で耐えて、5区で勝負出来るかなと思ったが、後半向かい風にやられた。過去にない過酷なレースになった。ちょっと残念だったが、守りに入るといいことはないので、明日も攻めの走りを貫きたい。後半を走る選手も体調万全で整えている。相手の出方がどうということではなく、自分たちのレースをする」と語った。明日の復路、山梨学院は牧野俊紀主将を中心になんとしてもシード権を確保する。

山梨学院大 往路成績11位 タイム 5時間48分09秒
区間
ランナー
学年
区間タイム
区間順位
総合順位
1区
土田俊徳
4年
1時間05分32秒
16位
16位
2区
オムワンバ
1年
1時間09分32秒
2位
4位
3区
井上大仁
2年
1時間06分40秒
7位
5位
4区
鳥羽和晃
4年
1時間00分05秒
14位
5位
5区
松本大樹
4年
1時間26分20秒
13位
11位


往路順位(15位まで)
順位
大学名
総合タイム
復路スタート差
1位
日体大
5時間40分15秒
 
2位
早稲田大
5時間42分50秒
2分35秒
3位
東洋大
5時間42分54秒
2分39秒
4位
明治大
5時間44分37秒
4分22秒
5位
法政大
5時間45分39秒
5分24秒
6位
青学大
5時間46分27秒
6分12秒
7位
帝京大
5時間46分27秒
6分12秒
8位
順天堂大
5時間46分29秒
6分14秒
9位
駒沢大
5時間47分12秒
6分57秒
10位
学連選抜
5時間47分52秒
7分37秒
11位
山学大
5時間48分09秒
7分54秒
12位
大東大
5時間48分46秒
8分31秒
13位
中央学院大
5時間50分05秒
9分50秒
14位 國學院大 5時間53分03秒 10分(繰上げ)
15位
日本大
5時間54分31秒
10分(繰上げ)


文(M.I) カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・小池裕太・Y.Y)
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