山梨学院パブリシティセンター
第89回箱根駅伝2日目(復路)
〜山学大は総合11位でシード権獲得ならず〜
〜牧野俊紀主将区間4位の激走も一歩届かず〜

第89回東京箱根間往復大学駅伝競走2日目、復路は3日午前8時に箱根・芦ノ湖畔を、往路トップの日体大を先頭に19大学と学連選抜の6区ランナー20人が次々にスタートした。往路11位の山学大は、トップから7分54秒遅れで山を下った。6区の2年桃澤大祐は苦しい走りになった、順位を2つ下げ13位で小田原の中継点へ。7区の阿部竜巳も2年、初の箱根路を懸命に走り13位のまま平塚中継所へ。8区に起用された双子の弟1年前田拓哉も13位のままでつないだ。シード権が遠のいたここから、9区の主将牧野俊紀が激走した。10位中央学院大との差を区間4位の走りで54秒差に縮め12位でアンカーへ。10区は当日エントリー変更した2年の福澤潤一、プルシアンブルーの襷を 肩に懸命に前を追い学連選抜を抜いたが、あと一歩届かなかった。総合11位(復路11位)でシード権を逃した。総合優勝は往路を制した日体大がそのまま逃げ切り、30年ぶり10回目の復活優勝を成しとげた。


駅伝は何が起こるか分からない筋書きのないドラマ。初日の往路は大波乱のレースだった。過去に例がない風速18mの猛烈な強風の中を走るレースとなり、サバイバルゲームとなった。5区の山上りで、中央大と城西大の選手が走行不能に陥り2校がリタイア。予選会から勝ち上がった日体大が、山嵐の中で逆転劇を演じ、前評判を覆して過酷な戦いを制した。山上りで順位を下げた山学大は、往路11位で芦ノ湖の湖畔をスタートした。

6区[20.8キロ 箱根 ⇒ 小田原] 
桃澤 大祐(ももざわ だいすけ〈2年・長野・上伊那農〉)
☆総合13位 6時間50分43秒 / 区間18位 1時間02分34秒

桃澤大祐は、上伊那農高時代は5000mの自己ベストが15分を超える並の選手だった。山学大は選手のレベルや能力ごとに「強化」「育成」「サテライト」の3グループに分け、それぞれの体力、走力、レベルに見合った練習を積んでいる。桃澤は最初サテライトで基本練習を繰り返した。そこで力をつけて這い上がり、入学当初は夢のまた夢だと思った箱根のメンバーに2年で選ばれた。しかし、気負ってしまった。最初は落ち着いて入ったが、下りに入ってから足が思うように動かなくなってしまった。宮ノ下で大東大に抜かれ、大平台でさらに一つ下げ、13位で小田原の中継所に倒れ込んだ。桃澤大祐選手はレース後の報告会で泣きながら「6区は後半の流れを作る区間なのに、後から走る選手に負担をかけてしまった。本当に申し訳ありませんでした。来年はこんな悔しい思いは絶対したくないので頑張りたい」言葉を詰まらせてチームメイトに詫びた。報道陣の質問に「出場するための努力は出来たが、出場して結果を出すための努力が出来ていなかった」と唇をかんだ。

7区[21.3キロ 小田原 ⇒ 平塚] 
阿部 竜巳(あべ たつみ〈2年・秋田・秋田工〉)
☆総合13位 7時間57分21秒 / 区間13位 1時間06分38秒

7区は前半の小田原市街地はほぼ平坦、9キロ過ぎの国府津あたりから小さな起伏が続く区間。気温が上昇する時間帯にあたり、全区間で最も気温差が激しい。8区とともにつなぎの区間と呼ばれる。阿部は、中学までは野球少年だった。陸上に取り組んだのは、秋田工業高に進んでから、全国高校駅伝に2年・3年と出場し、山学大に進学した。13位で襷を受け、ずっと東農大と並走、平塚までの21,3キロを懸命につないだ。阿部竜巳選手は「前を追おうと思って前半から積極的に行ったが、前と詰まるか詰まらないかのまま東農大と並走した。後半は風がきつかったが、沿道から「山梨学院頑張れ」という声援が途切れないで聞こえて来て、自分の力になり前に前に進むことが出来ました。チームの流れを支える7区の役目を果たすことが出来ずに、後の8区から10区の人にすごい負担をかけてしまった。来年は上位で走れるよう1年間頑張って、しっかり力をつけて行きたい」。順位を保ち13位で襷をつないだ。

8区[21.5キロ 平塚 ⇒ 戸塚] 
前田 拓哉(まえだ たくや〈1年 熊本・熊本国府〉)
☆総合13位 9時間05分07秒 / 区間13位 1時間05分07秒

8区は、序盤は平坦だが中盤からはだらだらした上り坂、海からの追い風が選手たちの体力を奪う区間。相模湾に別れを告げ、残り5キロ地点にある遊行寺の急な上り坂が難所。8区の区間記録は、山学大の先輩古田哲弘が第73回(1997年)大会で記録した1時間04分05秒がいまだに破られない最も古い区間記録。その8区を託された前田拓也は、双子の兄直人とともに熊本国府高から山梨に来た1年生。風と上りに強いと抜擢された。大先輩の記録を目標に走り出したが、初の箱根は力を発揮できないレースとなった。前田拓哉選手は「初めての箱根でとても緊張しました。サポートしてくれた先輩方がリラックスさせてくれて、スタートはリラックスして入れましたが、後半粘れずに順位を上げれなかったので悔しい箱根駅伝になりました。今年は悔しい思いをしたので、来年はみんなで笑ってゴールしたい。高校時代はいい記録を残せなかったが、山学大に入って伸びていると思います」。もっと上のレベルで戦える選手になりたいと語った。

9区[23.2キロ 戸塚 ⇒ 鶴見] 
牧野 俊紀(まきの としき〈4年・西武台千葉〉)
☆総合12位 10時間16分11秒 / 区間4位 1時間11分04秒

最上級生になり主将となった牧野は、3年連続の出場。2年は8区12位、3年も8区を走り6位だった。最後の箱根で、キャプテンは4年間の集大成といえる激走を見せた。到着順では17番目(13位)で襷を受けた時はシード権内の10位中央学院大とのタイム差は1分39秒あり、11位の学連選抜だけでなく、繰上げスタートの國學院大、大東大、城西大が前を行く非常に走りづらい状況。牧野は、穏やかな顔を闘争心の塊の顔に変えた。なんとしてもチームをシード権内に上げようと必死の形相で猛然と前を追った。横浜駅前で12位に上がり、10位の中学大との差を54差に縮めてアンカーの福澤に襷を渡した。牧野俊紀選手は「個人的には満足行く走りが出来たが、チームがシード権を落としてしまい、キャプテンとして申し訳ない気持ちで一杯。2年前と同じシード落ちとなってしまったが、2年前もしっかり乗り越えてきた。後輩たちは、来年1年しっかりトレーニングして試練を乗り越えてもらいたい」。4年間の集大成の走りをしたキャプテンは、卒業後実業団の中電工に進む。

10区[23.1キロ 鶴見 ⇒ 大手町] 
福澤 潤一(ふくざわ じゅんいち〈2年・長野・佐久長聖〉)
☆総合11位 11時間28分24秒 / 区間5位 1時間12分13秒

シード権争いは、最終10区に持ち込まれた。山学大のアンカー福澤潤一にとっては、見える國學院大、大東大、城西大ではなく、見えない10位の中学大と11位の学連選抜を抜かなければならない厳しい展開。小柄な福澤は見事なバランスのピッチ走法で、ぐんぐん前を追った。残り9,5キロの新八ッ山橋で学連選抜を抜き去り、1分近くあった中学大との差を46秒差に縮め、残り1キロの日本橋の手前では33秒差まで詰め寄った。しかし、オーバーペース覚悟の追走だったので、中学大山田侑紀のラストスパートについて行けず11位で無念のゴールをした。チームメイトに抱きかかえられ激しく泣く福澤を、主将の牧野と走ったメンバーが目に涙をためて慰めた。報告会で福澤純一選手は「今回参加させて頂いて非常に悔しい思いをしました。この思いを全員で共有して、来年ここに立つための栄養として、1年間しっかり温めて、この地で笑顔のゴールをして、喜びの涙をみんなで流したいと強く思いました。来年に向かって頑張って行きましょう」と涙をこらえてチームメイトに訴えた。


報告会で飯島理彰コーチは「何故キャプテン牧野が、あのプレッシャーの懸かるところで4位で走れたのか、それは「俺がやる」「何とかしてやろう」というメンタル面が強かったからだと思う。自分を厳しく見直して、どんなことからも逃げないことが大切、厳しい1年になると思うが逃げないで頑張って行こう」と後輩選手に訴えた。上田誠仁監督は「予選会から勝ち上ってきた日体大が優勝した。帝京・法政もシード権を獲得した。我々とどこが違ったのか、何が足りなかったのか。良い練習が出来ていた、舞台練習のパートパートのセリフ回しは出来ていた。リハーサルも抜群だった。しかし、ステージに立ってスポットライトを浴びた時に、今までやって来たことを出し切れない自分がいた。じゃあどうすればいいのか、悔しさ、辛さ、切なさを心に植え込んで、それを忘れず、その思いから生まれてくる芽を1年間かけて育てろ!」と選手に奮起を促した。

山学大 総合成績11位(往路11位・復路11位)11時間28分24秒

往路成績11位 往路タイム 5時間48分09秒
区間
ランナー
学年
区間タイム
区間順位
総合順位
1区
土田俊徳
4年
1時間05分32秒
16位
16位
2区
オムワンバ
1年
1時間09分32秒
2位
4位
3区
井上大仁
2年
1時間06分40秒
7位
5位
4区
鳥羽和晃
4年
1時間00分05秒
14位
5位
5区
松本大樹
4年
1時間26分20秒
13位
11位

復路成績11位 復路タイム 5時間40分15秒
区間
ランナー
学年
区間タイム
区間順位
総合順位
6区
桃澤大祐
2年
1時間02分34秒
18位
13位
7区
阿部竜巳
2年
1時間06分38秒
13位
13位
8区
前田拓哉
1年
1時間07分46秒
13位
13位
9区
牧野俊紀
4年
1時間11分04秒
4位
12位
10区
福澤潤一
2年
1時間12分13秒
5位
11位

総合順位(15位まで)

順位
大学名
復路タイム
総合タイム
備考
1位
日体大
5時間33分11秒
11時間13分26秒
30年ぶり10回目
2位
東洋大
5時間35分28秒
11時間18分20秒
 
3位
駒沢大
5時間32分11秒
11時間19分23秒
復路優勝
4位
帝京大
5時間35分12秒
11時間21分39秒
 
5位
早稲田大
5時間38分49秒
11時間21分39秒
 
6位
順天堂大
5時間38分14秒
11時間24分43秒
 
7位
明治大
5時間40分37秒
11時間25分14秒
 
8位
青学大
5時間39分32秒
11時間25分50秒
 
9位
法政大
5時間41分01秒
11時間26分40秒
 
10位
中央学院
5時間37分29秒
11時間27分34秒
 
11位
山学大
5時間40分15秒
11時間28分24秒
 
12位
大東大
5時間42分00秒
11時間30分46秒
 
13位
大学連選抜
5時間43分58秒
11時間31分50秒
 
14位 國學院大 5時間40分25秒 11時間33分28秒  
15位
日本大
5時間40分52秒
11時間35分23秒
 

文(M.I) カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・小池裕太・Y.Y)
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