第65回春季関東高校野球山梨県大会は4月27日、甲府・小瀬球場と富士北麓球場で2回戦5試合が行われた。山梨学院高は大会初登場、4月1日に赴任したばかりの吉田洸二新監督が初采配、富士北麓球場で甲府昭和高と対戦した。山学の投手陣は先発した坂本秀仁、リリーフした上原進、梅原隆斗の3人ともシーズン初の試合で硬くなり、四球を連発して5失点。打撃陣は昭和のエース林亮太の遅球に戸惑い、チャンスに凡打の山を築いた。チームの窮地を救ったのは控え組だった。5回表に代打の笠原雅矢が満塁の走者を一掃する2塁打、9回表に途中から出場の庄司智哉が、走者のミスを帳消しにする起死回生の本塁打をレフトスタンドに打ち込み、ようやく初戦を突破した。
春季関東高校野球県大会2回戦≪山梨学院vs甲府昭和≫(4/27)富士北麓球場
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
山梨学院高 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
0 |
0 |
1 |
1 |
6 |
甲府昭和高 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
5 |
バッテリー 坂本→上原→梅原―結城(山学)、林―川野(昭和)
本塁打 庄司(山学)、2塁打 笠原・福本(山学)
安打数 山学9安打、昭和7安打・11四死球
先発の左腕坂本秀仁(3年)は、初回に先頭と3番に四球を与え無死満塁2-3から4番に2点打を浴びるなど、被安打1ながら4四死球とボール先行の不安定な登板で3回途中で降板。6回まで投げたスライダー主体右腕上原進(2年)は被5安打3四死球、7回から登板の左腕梅原隆斗(3年)は被1安打4四死球。山学の3投手が与えた四死球は実に11四死球、3人ともにピリッとしなかった。そして、打撃陣もピリッとしなかった。甲府昭和のエース林亮太(3年)が内外角いっぱいに正確に投げる130キロ台の遅いストレートと、さらに遅い変化球に惑わされ、チャンスは作っても凡退の山を築いた。流れを変えたのは吉田洸二監督の代打起用に応えた笠原雅矢(2年)だった。5回表に満塁の走 者を一掃する流し打ちの2塁打をレフトセンター間に放ち、一気に逆転させた。6回裏にヒットと押し出しで2点を与え再逆転されたが、8回表に4番大下拓馬(3年 主将)のこの日2本目の犠牲フライで同点、途中から出場の庄司智哉(3年)が、初打席の9回表に走者のミスを帳消しにする起死回生の本塁打をレフトスタンドに打ち込み、ようやくやっと勝利した。
庄司智哉選手「送りバンドの予定だったが、ランナーが盗塁死したので、打つしかないと気持ちを切り替えた。吉田監督は、練習は厳しいが、試合は思い切ってやれと言ってくれる、自分たちはやりやすい」。笠原雅矢選手「ベンチで監督に気合を入れてもらい、やってやろうと代打の打席に立った。強い風がライトからレフトに吹いていたので、引っ張らずにレフト方向を狙いました」。大下拓馬主将「自分が一番ガチガチだった、情けない。打者は打ち急ぎ、投手はピリッとしなかった。粘ってようやく勝つことが出来た、次はしっかりプレーしたい」。吉田洸二監督「9回は、ランナーが送りバンドのサインを読み違えて盗塁死した直後に、送る予定だった庄司が本塁打を打つという不思議な勝ち方で勝てました。練習試合では打てるチームだったが、初の公式戦は硬かった、いい勉強になりました。夏までにもう一試合できることになったのはラッキー、選手になるべく多く経験させたい」。4人は、それぞれの立場で苦戦した初戦を振り返った。
吉田丸の船出は、バックスクリーンの真後ろで圧倒的迫力の富士が裾野を広げる日本一の借景を持つ富士北麓球場が舞台だった。その処女航海は順風満帆ではなかった。頼りなげな投手陣と力なげな打撃陣が、船酔いしながらやっと勝利をつかんだ覚束ない航海だった。その山学ナインを五合目以上白雪の富士が温かく見守ってくれた。山頂から沸き立つ白煙が「日本一のこの高みまで駆け上がってこい、心と体を鍛えて、日本一を目指せ」と静かに、優しく語りかけてくれた。「次の航海では、両足でしっかり甲板に立ちます」、山学球児は富士に自身の成長を誓っていた。
山梨学院の次の試合は29日(祝日)、甲府商を破って勝ち上がってきた吉田高と、今度は甲府・小瀬球場午後2時開始予定で対戦する。
文(M.Ⅰ) カメラ(今村佳正)
アルバムはこちら