第65回春季関東高等学校野球大会は5月20日、栃木・宇都宮清原球場と栃木県総合運動公園野球場で準々決勝4試合が行われた。初戦で高崎健康福祉大高崎高校(群馬第2代表)を下しベスト8に名乗りを上げた山梨第1代表の山梨学院高校は、栃木総合公園野球場第1試合で、浦和学院(推薦・埼玉第1代表)と戦った。相手はセンバツ甲子園で優勝した全国トップのチーム。対戦前はコールド負けを心配するほど、不安のほうが強かった。しかし、山学打線は逞しかった。菊池徹コーチの指導で冬場に徹底的に鍛えたセンターに弾き返す打法が、全国区の投手にも通用することを立派に証明した。ただ、エース梅原隆斗はこの試合もボール先行ピッチングで、四球を与えたあとに打たれた。結果的には強 豪校に3−6で敗れたが、何よりもほしかった「俺たちはやれる」という自信と、課題と、収穫を得た。
春季関東高校野球大会準々決勝≪山梨学院vs浦和学院≫(5/20)栃木県営球場
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山梨学院高 |
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浦和学院高 |
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× |
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バッテリー 梅原→山口→坂本―結城→富山(山学)、山口―西川(浦学)、
3塁打 竹村(浦学)、2塁打 梅原(山学)小暮(浦学)、
安打数 山学12安打・4四死球、浦学7安打・7四死球、
山学のエース梅原隆斗(3年)は1回3四死球、2回2死四球と、1・2回だけで5四死球。2日前の健大高崎戦以上に制球が定まらないピッチングで立ち上がり、2回に2点、3回に1点を与えた。しかし、山学打線は関東でも2試合とも逞しかった。4回表に6番田中郁也(3年)が右前打で出塁、7番加藤卓弥(3年)との間で初球ヒットエンドランを敢行、見事なセンター返しで1死1・3塁のチャンスを作り、8番梅原の2球目にワイルドピッチでまず1点、梅原が失点を打点で返すライトオーバー2塁打を放ち2―3と1点差に迫った。自らの打点で梅原は少し立ち直り、4回・5回は強力打線を三者凡退に打ち取った。しかし、6回裏に再び先頭打者に四球を与え1死1・3塁のピンチを招き、タ イムリーとスクイズで2点を失い、この回で降板した。7回裏からは、ライトを守っていた山口大輔(2年)がマウンドに上がった。8回裏に1点を奪われたところで3番手の坂本秀仁(3年)に交代、坂本は4球で後続を打ち取った。山学打線は、4番に座った菊池海斗が4打数3安打1四球と気を吐いた他、8回表にはこの日4打数2安打1打点1得点と活躍した7番加藤のタイムリーで1点を返した。しかも、9回表には連続ヒットで無死1・2塁とし、主将の3番大下拓馬(3年)がライトオーバー2塁打コースのヒットを放ったが、ランナーの判断ミスで挟まれチャンスをつぶした。野球にもしもはないが、1点を返しなお無死2・3塁となっただけに惜しまれる。ただ、これはいい勉強をしたと考えるべ きだ。結果的には3‐6で敗れ2002年以来11年ぶりの4強はならなかったが、全国制覇した強豪校に一歩も引けを取らなかった。最後には相手のベンチを大慌てさせるほど詰め寄った。
吉田洸二監督は「今日は面白い試合になっていたと思うが、2回の2死1塁の場面で深く守らずに頭を越されたライトの守備位置や、9回のタッチアップを選択した2塁走者の走塁ミスは、いけない。野球の思考的な所のミスをなくして、状況に応じた動きが出来るようになれば、チャンスはあると思う」と振り返った。大下拓馬主将は「冬場のトレーニングで、菊池徹コーチからセンターに鋭く弾き返す打法を徹底的に鍛えてもらいました。インコースもアウトコースも関係なくセンター返しだったので、その面のバットコントロールは冬場で身についたと思います。これがたまたまなのか、夏も打てるか分かりませんが、関東で収穫と課題をもらいました。夏に向けてしっかり練習します」と語った。梅原隆斗投手「2試合とも、自分で勝手に荒れてしまって失点を重ねてしまった。自分はまだまだ通用しませんが、チームは関東の強いチームと戦っても、十分戦えることが分かりました。自分たちピッチャーがしっかりしなければ夏は勝てないことも分かりました。シャドウと投げ込みをしっかりやって、夏までにフォームを固めます」と精進を心に誓った。
ミスしたところは、砂田グランドで反復練習すればいい。梅原はストライクをなかなか取れなかったが、甘い球は1球も投げなかった。シャドウピッチングと投球練習で制球力をつければいい。2日前の健大高崎戦の後、吉田監督は次の試合についてこんな発言をした「どちらが出て来ても全国トップレベルのチーム、そういうチームとこういう場で試合をすることは、練習の1カ月分以上に値します。全力で一生懸命やらないと何も得るものはないので、すごい差はあるが、勝つことを目標に取り組ませようと思います」。山学ナインは言葉通り全力で戦い、何よりもほしかった「俺たちはやれる」という自信と、課題と、収穫を得た。ナインの本当の戦いは"夏"、選手たちは夏に勝つための糧を、宇都宮の 地でその心とその体に得た。
文(M.T) カメラ(今村佳正)
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