アート・ビジネスの将来の担い手などを育成する山梨学院大学アートマネジメントプログラム『オークション経営と実践』(柴山哲治客員教授)の学生が7月13日、山梨県の河口湖オルゴールの森美術館で行われた「富士山世界文化遺産登録記念アート・オークション」で体験学習を行った。この日、正装して参加した学生は、『アート・マネジメント概論』を修めている中の4名。このオークションには、東京藝術大学大学院などを卒業した有望な若手アーティスト16名の、富士山をイメージした現代アートの力作16点が出品された。作者が作品の説明をするなか、運搬係に扮した学生が客席を回り作品を披露。すると会場にオークショニアの「スタート価格は1万円」の競りの声が響く、客はお気に入りの作品に番号札(パドル)を挙げ競り落とす。軽快な競り声とともに瞬く間に作品が売れていく。学生たちは緊張した面持ちで、受付・運搬・署名係などの大役を果たすとともに、若手アーティストとふれあうなど、ライブオークションを通じてアートを愛でる感性をさらに高めた。
◆『オークション経営と実践』は、山梨学院大学が2013年度より開講した。学部の枠を越えた学びの学部横断型副専攻「アートマネジメントプログラム」における授業の一環。
◆運搬係に扮した若林開(法学部3年)は「心臓が止まるかと思った」と胸を撫で下ろす。「アーティストが命をかけて仕上げた作品を自分が運んで客席を回る。その見せ方次第で印象が変わり、値段がつくと思うと緊張した」と額の汗を拭う。「1割増でも高く売れますようにと、自分で出来る限りのことはした」と力を出し切り、「自分が一回り大きくなれた気がする」と満面の笑みを浮かべた。
◆やはり運搬係を担当した宮崎泰介(法学部4年)はオークションは「臨場感があった」と目を輝かせる。「アーティストが作品作りの思いを語るコーナーでは、それぞれ作品に凄い熱い思いがあるんだと心にひしひしと感じた」と振り返る。「私は絵を描くことは出来ないので、むしろ、それをプロデュースする側の方が可能性があると感じた」と深く頷く。日本では「オークションのイメージが硬い(敷居が高い)。今回のように、気軽にアーティストと絵(作品)と、その思いにふれられ、買える場が増えると良いと感じた」と切実に述べた。
◆指導教員の柴山哲治客員教授は「成熟した国・街・企業にはアートが根づいている」。残念ながら「日本においては、まだアートを気軽に買い、収集して楽しむ習慣が未成熟だ」と目を伏せる。「アートは『教養』と『産業』の両方の側面があり、心を豊かにするとともに、経済的な付加価値をつけて国をも豊かにする」と力説。日本は「戦後の経済復興から経済成長(経済大国化)した。これからはクリエイティブな芸術立国を目指さなければならない。それには市民のアートを見る目を養うことと、アートの産業化が急務だ」と目を凝らす。「次のジェネレーション(世代)には、『衣•食•住•アート』があたりまえの社会になってもらいたい」と身振り手振りよろしく話す。そのために「山梨学院大学ではアートに造詣が深い学長のもと、学生にアートを愛でる感性を育ませ、アート・ビジネスの将来の担い手を育成するとともに、国際人に必要な教養教育を包括的に行っている」と熱い。そして「今日、学生たちはライブオークションを通じて作者と作品、それに買い方(客)にふれ、アートを愛でる感性をさらに高めてくれた。これで、初代の学生が『アート・マネジメント概論』と『オークション経営と実践』の体験学習で有終の美を飾ってくれたことで、アートマネジメントプログラムの第一歩を大きく踏み出せた」と安堵した表情で語った。
文(H.K) カメラ(藤原稔)
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