学生テニス界最強リーグ「平成25年度関東大学テニスリーグ戦1部リーグ」最終戦が9月9日に行われた。山梨学院大テニス部女子は、前年度優勝校早稲田大と戦った。午前中のダブルス1勝1敗の後、午後からシングルスの5試合が行われた。S5の寺見かりんとS4の本郷未生が揃って勝ち、3勝1敗として王手、常勝軍団の連勝を止めるところまであと一歩に迫った。しかし、S3からS1までの3人が伝統校の壁に阻まれた。試合が開始されたのは午前9時、試合が終了したのは午後7時、10時間の激闘の末に3勝4敗で惜敗した。山学大テニス部女子は創部8年目の新興チームだが、5試合とも伝統校と互角に戦い、いずれも大接戦を繰り広げた。最終成績は早慶に次ぐ3位となり、4位 亜細亜大、5位専修大、6位筑波大となった。
リーグ戦は9月1日から1日おきに6校が総当りで各5試合を戦う過酷な短期決戦(第3戦は雨で順延され3・4戦は連戦)。1部リーグの舞台は聖地、東京・有明テニスの森公園。山学大は第1戦の専修大に4勝3敗で勝利、第2戦の亜細亜大にも4勝3敗で勝利、第3戦の慶応大に3勝4敗で敗戦、第4戦の筑波大には4勝3敗で勝利、対戦成績3勝1敗で最終戦を向かえた。
昨年度準優勝の山学大は、9連覇中の早稲田大とセンターコートで対戦した。午前9時にダブルスのD1とD2が同時に始まった。D2の久次米夏海(2年 大阪・城南学園)・寺見かりん(1年 岡山・山陽女子)組は、梶谷桜舞・林恵里奈組に4−6、4−6のストレートで敗れたが、D1の田村実里(4年 神奈川・弥栄)・尾崎仁美(3年 徳島・小松島西)組が早大No1ペアと大激闘を繰り広げた。第1セットを7―5で取り、第2セットは3−6で取られたが、第3セット第8ゲームで相手サーブをブレークし5−3、勝敗のかかった第9ゲームで、田村がサービスエースを決め30−15、前衛の尾崎がボレーを決めて40−15、最後は相手のリターンがアウトしてゲームセット。3時間の激闘の末に6−3で勝利した。早大の2人は高校時代から全国大会上位のエリート、山学の2人は全くの無名選手だった。その2人が、8月のインカレでは、田村は久 次米と組んで、尾崎は岡田と組んで、山学大史上初のインカレ・ベスト8を獲得、今度は最強リーグ戦で早大No1ペアに打ち勝った。尾崎仁美選手は「高校時代は少人数の部活で、団体戦の経験も、ダブルスの経験もありませんでした。山学大に入ってからダブルスを始め、3年目にインカレに初出場させてもらい、リーグ戦にも出させてもらって早稲田に勝てた。チームに貢献出来て本当によかった」。初出場の3年生は目を潤ませていた。
ダブルス1勝1敗を受けて、午後1時前からシングルスが始まった。まず、S5の寺見かりんVS辻恵子戦と、S4の本郷未生(2年 神奈川・東海大相模)VS長谷川芙美戦の2試合が同時に始まった。
S5の寺見かりんは、コンパクトなスイングからのドライブボレーを得意とし、1年生ながら団体戦メンバーに選ばれ、初戦から第5戦までフル出場、チームの勝利に貢献してきた。最終戦はフルセットになり、3時間45分にもなった戦いを制して勝利した。寺見かりん選手は「ファイナルで5−0とした時に足がつってしまいましたが、何とか勝つことが出来ました。得意な早いタイミングでのテニスを磨いて行きたい。勝負所で打ち抜くメンタル面の強さを身につけたい」。1年生は技術と心を磨きたいと語った。
S4本郷未生の対戦相手長谷川芙美は、8月のインカレで準優勝した早稲田のキャプテン、いわば格上の相手だったが、本郷はまったく怯まなかった。一歩も引かずに戦った。2人はまるで男子の試合のような速さで激しく打ち合い、火花が散っているように見えた。強敵を相手に、何と6−4、6−3でストレート勝ちを収めた。本郷未生選手は「春の早大との対抗戦で長谷川さんと対戦しファイナルで負けましたが、やれるという手応えをその時に感じました。3月から8月までずっと戦績を残せずに悩んでいましたが、落ち込んでいる時に4年生に励ましてもらい、気持ちを振るい立たせました。慶応戦から出させてもらい、後ろ向きにならずはつらつとプレーすることを心がけ、勝利をつかむことが出来ました」。2年生は早稲田のキャプテンに打ち勝った。
S3岡田優里(3年 三重・四日市商)は、尾崎と組んだインカレ・ダブルスで山学史上初のベスト8を獲得するなど、8月の夏関、インカレで大健闘した。その両足は肉離れ寸前の状態だが、チームには欠かせない選手。9月のリーグ戦でも全試合に出場し、最終戦も太ももと膝をテーピングしてチームのために出場した。S2の久次米夏海は、勝てた試合だったがフルセットの末に勝利を逃がした。田村実里は早稲田のエース吉冨愛子と力と力をぶつけ合う激しい戦いをして敗れた。
平成25年度関東大学テニスリーグ最終戦
山梨学院大VS早稲田大 (9/9) 於有明テニスの森公園 |
|
勝敗 |
山梨学院大 |
|
早稲田大 |
D1 |
○ |
田村実里
尾崎仁美 |
7−5
3−6
6−3 |
長谷川芙美
吉冨愛子 |
D2 |
● |
久次米夏海
寺見かりん |
4−6
4−6 |
梶谷桜舞
林恵里奈 |
S5 |
○ |
寺見かりん |
7−5
6−7
6−4 |
辻 恵子 |
S4 |
○ |
本郷未生 |
6−4
6−3 |
長谷川芙美 |
S3 |
● |
岡田優里 |
4−6
2−6 |
林恵里奈 |
S2 |
● |
久次米夏海 |
4−6
6−3
2−6 |
宮地真知香 |
S1 |
● |
田村実里 |
3−6
4−6 |
吉冨愛子 |
総計 |
● |
3 |
D1−1
S2−3 |
4 |
短期決戦リーグ戦、山学大の最終成績は3勝2敗となった。勝った3試合はいずれも4勝3敗、敗れた2試合は3勝4敗だった。5試合とも伝統校と互角に戦い、いずれも大接戦を繰り広げた。去年は3勝2敗で慶大と並び、直接対決で勝っていたので2位となり、王座(全日本大学対抗テニス王座決定試合)に創部7年目で初出場したが、今年は、直接対決で慶大に敗れたため3位となり、2年連続の王座進出はならなかった。会場の有明テニスの森には、鳥取から駆けつけた大麻桃子さんや松山愛さん羽川沙織さんらたくさんの先輩が集まり、後輩たちと一緒に拍手を送った(第2戦から声を出しての応援が禁止された)。昨年の主将羽川沙織さんは「去年王座に初出場したけど、早大には1-6と完敗でした。今年はあと一歩で勝てそうだった。勝負どころの強さを身につければ来年は勝てる」と後輩を励ました。田村実里主将は「勝てるチャンスがすごくあったので、ものすごく悔しいです。技術の面でも気持ちの面でもまだ足りない部分があるんだなと思いました。後輩には、普段の練習から打倒早稲田、打倒慶応でやっていってほしい」。4年生は溢れ出る汗と涙をそっとぬぐった。
試合後、選手を集めた富岡信也総監督は「このチームは絶対日本一になれる、日本一になろう。日々の鍛錬をきちんと積み重ねて絶対やろうよ。人生は長いけれど、チャンスに努力を惜しんではいけない、出来るのにやらないのはもったいない。今年は果たせなかったが、ここまで来た。このチャンスに努力して、来年こそ日本一になろう」と沈む選手の心を鼓舞した。富岡好平監督は「打倒早稲田が手の届くところまで来ました。卒業した先輩たちが色々積み重ねてこのステージを作ってくれました。4年生はこれで部活を卒業するが、よく努力してくれた。3年生以下は4年生の思いも、先輩たちの思いも引き継いでプレーするのが使命だと思います。関東リーグを優勝で通過して日本一を取りましょう」と4年生をねぎらい、3年生以下に努力を求めた。倉田祐子コーチは「王座に行けると信じていたので私も悔しいです。時間は取り戻すことが出来ないが、負けた現実をしっかり受け止め、この悔しい思いを糧にして個々の力と、チームの力を上げていきましょう」と涙を抑えて語りかけた。三好勲コーチは「勝負は勝たないと意味がない、それは、みんなが今まで実感してきたこと。相手が伝統ある大学だろうが、どんなに努力しようが勝たなければ意味がない。去年はここで胴上げをして笑った。ここで笑うために長い冬、長い練習時間、長い試合時間をみんなで一緒に過ごして来た。チームとしては大きな課題が残った1週間強だったと思います。色々な反省があるし、色々な思いがあると思いますが、王座に行けなかったという事実をしっかり受け止めて下さい。4年生の実里は技術的には上の相手に対して最後まで勝とうと懸命に戦ってくれた。下級生はその姿を焼き付けておくように、秋からまた練習に励み、来年はいい報告が出来るようにしましょう」と全力で戦った先輩の思い を引き継ぐよう求めた。
山学大テニス部女子は、有明テニスの森公園のナイター照明の下で、円陣を組み、「フレー、フレー、ヤマガク」、「フレー、フレー、ワセダ」とエール交換をして、戦いを締めくくった。そして、その心に固く誓った、「来年は必ず勝つ・・・」と。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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