山梨学院生涯学習センターは9月14日、酒折連歌講座2013の第3回目の講座を開催した。今年の酒折連歌講座は、国民文化祭の関連事業として5・7・9・11の各月に各1回開催され、第3回となる14日には「俳句と酒折連歌」をテーマに、俳人で現代俳句協会特別顧問の宇多喜代子氏を講師に迎え開催。今回も山梨県内外から国文学や短詩型文学などに興味がある100人近い市民が申し込み、会場に詰め掛けた。宇多氏は講演の中で古事記を歳時記から読み解き、倭建命の動向を当時の食生活や時代背景とともに解説を行った。その中で、甲斐国での場面に触れ、古事記で具体的な食物(糒と蒜)の名前が初めて登場したことを紹介すると、参加者からは感嘆の声が上がった。また、短歌と俳句の違いについてそれぞれ参考になる歌や句を提示し説明。宇多氏は俳句と短歌の大きな違いは「切れ」であるとし、説明を切るのが俳句であり、俳句で大事なものは、定型と季語と切れであると詳説した。
酒折連歌講座は、山梨学院大と酒折連歌賞実行委員会が主催する「酒折連歌賞」が創設10周年を迎えた2008年に記念事業として実施され、その後も山梨県内への「酒折連歌」の普及・啓発、文学の振興、文化の創造に寄与するため毎年開講し、今年で6回目の開催となる。今年度は、1月12日から第28回国民文化祭・やまなし2013が山梨県内で開催されており、甲府市が酒折連歌を市町村主催事業『「酒折連歌」祭』として実施し、酒折連歌賞、酒折連歌講座、酒折連歌の歴史展の3部門が行われる。講座は5・7・9・11の各月に1回ずつ計4回開講され、第3回目となった9月14日は、俳人で現代俳句協会特別顧問の宇多喜代子氏が講師を務め、「俳句と酒折連歌」と題し講演を行った。国民文化祭の関連事業とあり、この講座には、県内外から100人近い申し込みがあり、連歌発祥の地での連歌に関する学術講座への興味・関心が伺えた。
講演に先立ち、この講座のコーディネーターを務めた「酒折連歌の会」の齊藤幸三会長が講座の主旨説明と講師紹介を行った。講師の宇多喜代子氏は1935年山口県徳山市(現・周南市)生まれ、武庫川学院女子短期大学(現・武庫川学院女子大学短期大学部)卒業。1999年から読売新聞俳壇選者、2005年から俳誌『草樹』代表、2006年から現代俳句協会会長(2011年から特別顧問)、2012年からNHK俳句選者を務める。第29回現代俳句協会賞、第35回蛇笏賞、第27回詩歌文学館賞を受賞。2002年度春の紫綬褒章、2008年春の旭日小綬章を受章。酒折連歌賞は昨年の第十四回から選考委員を務めている。
宇多氏は、近年、古事記を歳時記から読み解くことをしており、講座の前半では酒折宮での連歌発祥の由来などについて、倭建命の動向を当時の食生活や時代背景とともに解説し、各地の関連した句などを例示した。その中で、甲斐国での場面に触れ、古事記で具体的な食物(糒と蒜)の名前が初めて登場したことを紹介。宇多氏は「もし仮に、この物語に季節をつけるのであれば、今の歳時記だと糒(かれい)は干飯(ほしいい)として夏の季語で立項され、蒜(にんにく・のびる・にら)は春の季語として立項されているので、倭建命が酒折宮を訪れたのは、遅い春だと思います。具体的な食品や調理したものが登場したのは、酒折が初めてです」と述べると、参加者からは感嘆の声が上がった。講座の後半では、自身と俳句の出会いについて幼少期の頃から現在に至るまでを語り、各時代に流行した身近な五・七・五の世界をユーモアを交え紹介した。また、短歌と俳句の違いについてそれぞれ参考になる歌や句を提示し説明。宇多氏は俳句と短歌の大きな違いは「切れ」であるとし、説明を切るのが俳句であり、俳句で大事なものは、定型と季語と切れであると詳説した。さらに、宇多氏は俳句と歳時記(季語)の関係に触れ、「俳句は"理科"でもあると思います。宇宙や雲、雨などの天文や植物、動物などをどういう字で書くか、どのように表現するかを勉強するのが国語であり、俳句はそれらをトータルした学問であると言えます。ですから、歳時記を熟読するとその辺に非常に明るくなり、歳時記は日本人に通じる何か深いものがあり、ミニ百科事典だと思います」と語った。講座は終始宇多氏の軽妙な語り口で進められ、参加者らは時折メモを取りながら宇多氏の話に耳を傾けていた。
酒折連歌講座の第4回目は国民文化祭記念特別講座として11月2日に国立歴史民族博物館館長で山梨県立博物館館長の平川南氏が「酒折宮と古代甲斐国」と題し講演を行う。また、「酒折連歌」祭では、11月1日から10日まで甲府市酒折3丁目の酒折宮で地理的・歴史的背景、伝統芸能などについて紹介し、酒折連歌に関する資料を展示する「酒折連歌の歴史展」も開催される。さらに、9月20日まで酒折連歌賞の作品も募集している。酒折連歌は五・七・七の問いの片歌に、答えの片歌を五・七・七で返す二句一連の片歌問答。俳句などと違い、作歌上の約束事は五・七・七で返すことのみ。問いの片歌に続く答えの片歌を作者の感性で自由に発想し、老若男女を問わず詠むことができる歌遊び。詳しくは第28回国民文化祭甲府市実行委員会(酒折連歌祭ホームページ)(酒折連歌賞ホームページ)
文・カメラ(Y.Y)
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