学校法人山梨学院は、この秋「甲斐の古道プロジェクト委員会」を正式発足させることにし準備を進めている。江戸時代に編纂された『甲斐國志』には「本州九筋ヨリ他州ヘ通ズル路九條アリ(中略)皆酒折ヨリ路首ヲ發起ス」と記載されており、創立70周年記念地域貢献事業として、酒折を起点にした古道の現況調査に取り組む。昨秋には、先行調査として山学大考古学研究会の学生たちが、大学近くの山崎三叉路から山梨市までの雁坂道(秩父往還)・青梅街道に関わる石造文化財や民俗行事を調査した。当面は、この二つの古道にかかわる現況を継続調査する。事務局はプロジェクト委員会の初会合を10月末に開催する方向で準備を進めており、9月9日から山梨市下井尻地区を出発点に、青梅街道古道・旧道の現況調査を開始させた。また、9月17日には、大菩薩峠古道の登山調査も実施した。調査活動とともに山崎三叉路近くに「甲斐の古道公園(仮称)」を建設する方針。教職員と学生が一体となり、外部の有識者の協力を得て、4年間にわたり、民俗学的学術調査に取り組む。
「甲斐九筋」は甲斐国内の古道と地域区分の総称。河内路(駿州往還)、右左口路(中道往還)、若彦路、御坂路(鎌倉街道)、萩原路(青梅街道)、雁坂路(秩父往還)、穂坂路、大門嶺口(棒道)、逸見路(信州往還)の9路を指す。江戸時代後期に編纂された『甲斐國志』(巻之一「提要部」及び巻之三十八)には「本州九筋ヨリ他州ヘ通ズル路九條アリ(中略)皆酒折ヨリ路首ヲ發起ス」(甲斐の国から他国へ通じる道は9筋あり、それらはみな酒折を起点としている)と記載されている。連歌発祥の地酒折宮を中心とした甲府市東部地域は、『古事記』『日本書紀』の時代から、東海道と東山道の結節点、交通の要衝として、また、生産・流通の拠点、文化・行政の交流基地として、重要な役割を果たしてきた。現在でも、盆地を横断する交通路(甲州街道など)と、盆地を縦断する交通路(御坂路、中道往還など)が交差する交通の要衝として位置づけられている。
山梨学院大考古学研究会の学生たちは、昨年の秋、学生の活動を支援する山梨学院学生チャレンジ制度の認定を受け、大学近くの山崎三差路が雁坂道(秩父往還)と青梅街道の基点に当たる事から、山梨県側の雁坂道・青梅街道の歴史地理・考古学調査を行った。「甲斐の古道プロジェクト」の一環として先行実施したもので、甲府市東部・笛吹市・山梨市までの街道沿いの道標・道祖神・石造物などを実地踏査、街道沿いの町々に伝わる民俗行事について聞き取り調査を行い、2月末に調査結果を「甲斐の古道1−甲州裏街道と文化再考 青梅街道1−」報告書にまとめた。
学生たちの活動を受け、プロジェクト委員会事務局は、考古学研究会の学生と教職員、外部の有識者一体の古道プロジェクト調査団を編成させ、当面、二つの古道の継続調査を実施する。委員会初会合を10月末に開催する方向で準備を進めている。青梅街道の調査地域は、山梨市下井尻〜塩山市塩山〜裂石と大菩薩峠登山道及び丹波山村・小菅村を予定。秩父往還の調査地域は、山梨市小原東〜牧丘〜三富と雁坂路及び雁坂峠登山道〜雁坂小屋周辺を予定している。また、山崎三叉路が青梅街道、秩父街道の起点として、今にその姿を残していることから、「甲斐古道の起点、連歌発祥の地、酒折」にちなみ、三叉路近くの空き地を「甲斐の古道公園(仮称)」として整備することにし、甲府市東部の まちおこし、ふるさとおこし、学園都市さかおりの活性化を実現させていくことにしている。
文(M.I) 写真提供 小泉美津夫・里吉達美
山梨市古道調査アルバム 大菩薩峠登山調査アルバム