平成25年度全日本大学グレコローマン選手権大会が10月17、18の両日、東京・駒沢体育館で開催された。大会はグレコ7階級の学生日本一と、総合得点で大学日本一を決める各大学代表対抗戦。初日の17日は軽・中量級4階級、2日目の18日に重量級3階級の戦いが行われた。1日目は、昨年無名選手から大飛躍して準優勝した最軽量55s級の内山雄喜が、4年最後の大会でも大健闘、2年連続の準優勝を獲得し有終の美を飾った。一方、昨年1年生で3位に入った期待の星60s級の雨宮隆二は、さらに力を伸ばし決勝に進出したが、決勝で同学年の太田忍(日体大)に敗れ準優勝となった。自身の最高成績だが、同学年との対決だっただけに、雨宮にとっては悔しい2位となった。2日目は、 120s級の1年生留学生ボルチン・アレッグが未経験のグレコに出場して3位に入った。大学対抗戦は昨年より順位を上げ、日体大、早大に次ぐ3位となった。
≪55s級 内山雄喜(うちやま ゆうき 4年 群馬・前橋西)≫
高校時代の内山雄喜は、関東大会2回戦が最高成績のフリースタイル選手だった。グレコ55s級の先輩梶雅晴(23年度卒)の練習相手を務めるうちに、グレコの楽しさが判るようになり転向した。55s級選手としては日本一背が高い172cm、長いリーチと柔軟な体が武器。1、2年の頃は結果を残せなかったが、昨年、梶の後継者として大学代表でこの大会に臨んだところ、自分でもビックリするほどの快進撃を見せた。それまで勝った事がなかった相手を次々に下して決勝に進出、決勝で大会2連覇を達成させた田野倉翔太(日体大)に敗れたが、レスリング人生初の銀メダルを獲得した。その田野倉が卒業した今年は、強かった。初戦から圧倒的な強さで対戦相手を次々に投げ飛ばし、いとも簡単に決勝に進出した。決勝も2Pの途中まで5−3とリードしたが、木村洋貴(日体大)に逆転の一本背負いを決められ、2年連続の準優勝となった。内山雄喜選手は「就職活動があるので、これが最後の大会と決めて臨みました。決勝も1Pを取り、2Pで負けましたが、練習してきた技をすべて出し切ることが出来た集大成の準優勝で嬉しいです。レスリングは大好き、社会人になっても仕事優先だが続けたい。毎回6kg減量して大会に臨んで来ましたが、今後は減量をせずに筋力をつけ、楽しみながら続けたい」と格闘技選手とは思えない優しい笑顔で語った。
≪ 60s級 雨宮隆二(あめみや りゅうじ 2年 山梨・韮崎工)≫
雨宮隆二は甲府市の出身、中学までは柔道をやっていた。ロンドン五輪で金メダルを取った富士吉田市出身の米満達弘選手と同様に、県内唯一の強豪校韮崎工でレスリングに取り組み、高3の山口国体で優勝、高3で出場した天皇杯では、山学大OBの先輩倉本一真(自衛隊)とも戦い3位の実績を作った。山学大入学後は、新人だった1年のインカレとグレコ選手権でともに3位に入った。2年になった今年は、心も体も一段と逞しくなった。初戦で宮島善太(大東文化大)、2回戦で韮崎工の同期山田龍誠(東洋大)、準々決勝で中村裕真(東農大)、準決勝で青木成樹(青学大)を下し、決勝初進出を果たした。決勝の対戦相手太田忍(日体大)は55kg級から1階級上げてきた選手、高校時代も対戦したことがなく初対戦した。1Pで3−7とリードされ(1Pの得点がそのまま2Pに持ち込まれるルールに改正)、流れを引き戻せないまま3−11とされてテクニカルフォール負けした。雨宮隆二選手は「1回戦から準決勝までは全然大丈夫だった。決勝が勝負だと思っていたが、始めての相手に対し自分のレスリングでなく相手のレスリングに合わせてしまった。同学年なので、これから色々な大会で常にライバルになると思う、この借りは返したい。12月の天皇杯に出れるので、ライバルとも倉本先輩とも対戦できるように自分を鍛えたい」。武士の雰囲気を持つ闘技戦士は、努力と成長を重ねると語った。
この他の山学勢は、120s級ボルチン・アレッグ(1年 カザフスタン)は、やったことがないグレコに出場し3位入賞、貴重な学校対抗得点をもたらした。66kg級長崎宏樹(3年 上田西)は、屋比久翔平(日体大)と大接戦を演じ同点で終了したが、新ルールのコーション差で2回戦惜敗となった。74s級山岸元気(4年 栗東)2回戦。84s級中村風太(4年 佐倉南)2回戦。96s級松野裕也(3年 霞ヶ浦)2回戦敗退となった。小幡邦彦コーチは「グレコキャプテンの内山がチームに貢献してくれた。雨宮が敗れた相手は国体のチャンピオン、同級生のライバルとなるので来年に向けて修正して行く。長崎は負けてない試合でコーション1個差で敗れた。アレッグはグレコ未経験だが、グランドに持ち込めればと出場させ得点を稼いでくれた。今回の大会でグレコは基礎体力が大事だとつくづく思い知らされた。しっかり走り込ませ、基礎体力をつけさせて次につなげて行きたい」と大会を振り返った。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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