センバツ甲子園につながる「第66回秋季関東高等学校野球大会」は10月29日、茨城県内の2球場で準々決勝4試合が行われた。山梨学院高はひたちなか市民球場第2試合で群馬第1代表高崎健康福祉大学高崎高と対戦した。4回裏に先制したが、6回表に2点本塁打とスクイズで3点を奪われ逆転された。7回裏に無死1・2塁の走者を牽制球で2人とも刺され、一時は敗色濃厚となった。しかし、8回裏に2死1・2塁のチャンスを作り、8番稲葉皇介が左中間同点2塁打、途中出場の富山将希が魂で中前に落とす逆転打を放った。山学ナインは武田家発祥の地(旧勝田市)で、炎の如く魂を燃やし、疾風のように3点を奪い返した。奇跡が起きたような逆転劇だった。ベスト4は、山梨学院、白鴎大足利、佐野日大、桐生第一の4校となった。山梨学院は、明日30日、白鴎大足利高と決勝進出をかけて対戦する。
秋季関東高校野球大会準々決勝≪山梨学院高vs健大高崎高≫(10/29)ひたちなか市民球場
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健大高崎高 |
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山梨学院高 |
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山学バッテリー 山口−笠原、 健大バッテリー 高橋―柘植
本塁打 脇本(健大)、2塁打 松野(健大) 稲葉(山学)、
山学12安打 健大10安打、山学無失策 健大1失策、
山学のマウンドには、2日連続で山口大輔(2年)が上がった。昨日に比べるとボールがやや高めに上ずり気味だったが、この日も非常に落ち着いていた。前夜のミーティングで吉田洸二監督は「健大高崎の足を封じるために牽制球を多く投げろ」と指示した。山口は指示通り牽制球を多投し1回表と2回表に、1塁ランナーを2度も牽制球でアウトにした。打線は4回裏に女房役の7番笠原雅矢捕手(2年)が右前適時打を放ち先制した。しかし、6回表に落とし穴が待っていた。1死1塁の場面でランナーの牽制に気を取られ過ぎ、初球に甘いボールを真ん中に投げてしまった。健大の3番脇本直人にライトスタンドに運ばれ逆転された。なおも連打を浴びスクイズを決められ1−3とされた。山学打線は、7回裏に1・2番がヒットと悪送球で無死1・2塁のチャンスを作ったが、バンドを見送ったときに2塁ランナーが飛び出し、直後に1塁ランナーが牽制球でアウトになるミスを犯しチャンスをつぶした。このプレーで球場には健大高崎勝利の空気が一気に広まった。しかし、山学球児は決して諦めなかった。その胸の山学魂で立ち向かった。8回裏の先頭打者4番の主将菊池海斗(2年)がようやくヒットを放ち出塁した。2死になったが7番笠原の内野安打で2死1・2塁とした。相手チームがタイムを取った間に吉田監督は8番稲葉皇介(2年)をベンチに呼び戻し「ヒットエンドランにするか、自分で打つか」と尋ねた。稲葉は「自分で打たせてください」と答え、初球を左中間に弾き返した。県大会決勝でも本塁打を放っている恐怖の8番打者が放った起死回生の2塁打で2者が生還し同点に追いついた。続けて、6回に代打出場しそのまま1塁に入った9番富山将希(2年)が2塁手の頭を越えるポテンヒットを放った。富山は正捕手だったが肘の故障で控えに回ったスラッガー、懸命にリハビリして復帰した2打席目の当たりは、決していい当たりではなかったが、渾身の力で振った打球には富山の魂が込められていた。2塁・遊撃・中堅のちょうど間、絶妙な場所に飛び貴重な再逆転打となった。山口は9回表最後の打者を空振り三振に仕留めた。やった、勝った、奇跡じゃないのか、夢なら覚めないでくれと祈るような、牧野塁(元オリックス)で初出場した平成6年の第66回大会以来、実に20年ぶり2度目のセンバツの夢がぐっと近づいたような勝利だった。
2日連続完投勝利の山口大輔投手「なるべく牽制したり、長く持ったりしてランナーが走り難いように心掛けましたが、勝っていた時に、甘いボールを投げてホームランを打たれたことが課題です、次はしっかり投げたい」。殊勲の同点2塁打の稲葉皇介選手「吉田監督から、ヒットエンドランにするかと聞かれ、打たせて下さいと答えて打席に入りました。気持ちが吹っ切れて、初球から思い切って振り抜きました。優勝を目指して、明日も挑んで行きたい」。決勝打の富山将希選手「肘の怪我でリハビリをやっていて、監督の出たら頑張れという言葉を励みにずっと頑張ってきて、いい当たりではなかったけど、結果的にチームの勝利に貢献できて良かった」。菊池海斗主将「先制したが逆転され、7回の拙攻で流れが相手に行ったが、みんな最後まで諦めずに戦いました。ピッチャーの山口と打ってくれた稲葉と富山に感謝したい。明日も一戦一勝の気持ちで頑張ります」。吉田洸二監督「相手の足を封じることを昨夜のミーティングで徹底的にやって選手が応えてくれた。7回にチャンスがあったが、大きな走塁ミスを連続してしまった。ああいうミスをするチームは勝てない。ただ、選手に今日勝つとしたらこの8回しかないぞと話し、開き直ってやった結果がいい方に今日は出ました。ベストを尽くすことしかまだ出来ないチーム力ですので、明日も自分たちの持てる力を精一杯出して戦いたい」。山梨学院は、熱いハートと精一杯の力で、ベスト4の戦いに挑む。
3塁側の応援席には、早朝に甲府を出発した応援委員会・吹奏楽部・チアリーダー部の部員たちが駆けつけ、ベンチに入れない野球部員と一体になって懸命に応援した。応援リーダーの田中里奈さんと眞田帆風さんは「逆転されて、悪い雰囲気になったけど、気持ちを持ち直して勝ってくれました。3日連続の遠征応援になりますが、明日も精一杯頑張ります」と言葉に気持ちを込めた。吹奏楽部の前島政道部長は「選手たちに自分たちの思いが届くように演奏しました。思いと願いがかなって本当に良かった」とガッツポーズだった。チアリーダー部の門坂有紗新部長らは「ピッチャーの山口君が頑張ってくれて、途中で逆転されたけど、最終的に逆転するという凄い試合で興奮しました。自分たちの応援は、笑顔で協力してやれたと思います、明日も頑張ります」と話し勝利のポーズを決めた。
ベスト4に進出した山梨学院高は、明日30日、ひたちなか市民球場10時00分開始予定で、栃木第2代表白鴎大足利高と決勝進出をかけて対戦する。
文(M.T)、カメラ(平川大雪)
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