男子第64回全国高校駅伝大会山梨県予選が11月2日、富士河口湖町の西湖湖畔周回コース(男子 42.195キロ)7区間で昨年より2校多い22校が参加して、都大路の出場1枠と関東大会出場6枠を目指して健脚を競い合った。山梨学院は2列目の左から4番目。1区・市谷龍太郎(3年)が午前10時30分の号砲とともにスタート。市谷が後方からジグザグに選手を抜き去り、すぐトップに躍り出て10キロを29分34秒と超特走。区間新の区間1位で2位の韮崎に3分2秒の差をつけチームを勢いづける。後続の2区・3区・4区・5区も区間賞の好走。2位の韮崎に6分52秒の大差をつける独走。すると6区・河村知樹(3年)が5キロを14分39秒の区間新・区間賞の快走。アンカー7区 ・上田健太(3年)も5キロを14分42の区間新・区間賞。山梨学院は西湖のタフなコースにもかかわらず、上田が2位の山梨農林を10分29秒引き離す驚異的なチームタイム2時間6分25秒で2年連続の大会新記録と全区間区間賞(区間新3人)の完全優勝でゴールテープを切り、3年連続13度目の優勝を果たした。山梨学院は12月22日(日)に京都で行われる第64回全国大会(都大路)と第66回関東高校駅伝に山梨県を代表して出場する。なお、女子も5年連続13度目の優勝を果たし、9度目のアベック優勝となった。
山梨学院は昨年、関東で山梨県最高順位2位と最高記録2時間5分48秒をマーク。これで波に乗り全国大会の都大路は山梨県勢初の8位入賞、山梨県最高記録を樹立。それでも箱崎孝久監督が「優勝に絡めるチームにして都大路に戻ってきたい」と結んだ。その大舞台に舞い戻れるかの戦い。山梨学院のオーダーは、1区・市谷龍太郎(3年)、2区・小林雄斗(1年)、3区・矢ノ倉弘(3年)、4区・西山令(3年)、5区・熊谷堯之(1年)、6区・河村知樹(3年)、7区アンカー・上田健太(3年)。スタート時点の概ねの気象状況は、天気「晴れ」、気温「10度、降水量「0mm」湿度「67%」、風向「東」、風速「1m/s」。西湖レストハウス前に参加22校の選手が集合。3年連続13度目の 優勝を目指す山梨学院は2列目の左から4番目から午前10時30分の号砲とともに一斉スタートした。
1区[10,000m]【西湖レストハウス前〜旧ガソリンスタンド前】 |
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◇市谷龍太郎(3年)
1位 〈29'34〉
区間新・区間賞
チーム1位 《29'34》 |
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2列目の左4番目「最初、前の選手につこうかなと思った」が、号砲とともに体が勝手に反応し「スタートの位置は関係ない」と、頭を切り替えラガーマン顔負けの軽快なフットワークで、ジグザグに前の選手を次々に抜き去り中央に躍り出る。直近の日体大記録会5000メートルで日本人トップの記録13分56秒をマークしている市谷は、「体も動きコンディション的に良かった」と矢のように飛ばす。一時は西湖独特の風の影響で3分台に落ちたときもあったが、記録会そのまま体は動いていた。市谷は強風も何のその、すこぶる快調だ「良いパフォーマンスができると思った」と激走する。市谷の脳裏に、今年1月「広島で行われた男子都道府県駅伝で、小林と山梨県代表として高校生と中学生リレーし た」情景がよみがえる。市谷は「小林のデビュー戦、気楽に走らせてあげたい」と、さらにギアをあげる。市谷は「自分に良い評価をつけたい」と超特走。29分34秒の区間新記録・区間賞で、2位の韮崎に3分2秒の大差をつけ、1区中継所の旧ガソリンスタンド前で待ち構える2区・小林雄斗(1年)に山梨県代表に次ぐ2回目の襷リレーをした。 |
2区[3,000m]【旧ガソリンスタンド前〜西湖漁業組合駐車場】 |
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◇小林雄斗(1年)
1位 〈8'49〉
区間賞
チーム1位 《38'23》 |
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1年生の小林は「中学ではサッカー部」だった。山梨県の浅川「中学校に陸上部がなかった」ので、陸上競技会に誘われて「1500メートルに出場し、箱崎監督の目に留まったのが切っ掛け」となった。「都道府県駅伝で市谷との襷リレー、まして1年生でしかも「全国駅伝『都大路』につながる予選で、再現できるとは夢にも思っていなかった」。チームのために「襷を確り繋ごう」とスタート。「『いい感じだからいけ』と両親の応援」に後押しされ、1キロを好走する。小林は「1500キロ過ぎの上がり坂」を懸命に走る。タフなコースに「気持ちがだれそうになる」。そんな自分をかき消そうと、「直近の日体大記録会で5000メートルで14分41秒をマークした」ことを思い浮かべ、確り手を振り足を前に運ぶ。小林は「中盤で足を使っしまい後半響いた」とペース配分を悔いる。「都大路をイメージし、最初に突っ込んで、中盤粘って、後半上げるという構想通りの走りはできなかった」。それでも小林は8分49秒の区間賞でチームタイム38分23秒で、2位の韮崎に3分45秒差と広げ、2区中継所の西湖漁業組合駐車場で待つ3区・矢ノ倉弘(3年)に襷を託した。 |
3区[8,1075m]【西湖漁業組合駐車場〜西湖こうもり穴手前】 |
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◇矢ノ倉弘(3年)
1位〈24'41〉
区間賞
チーム1位 《 1:03'04》 |
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矢ノ倉は「日体大の記録会で14分14秒をマークしてから調子は上がっていた」。後輩の小林から襷を受け取ると、その調子を維持したまま「1キロをリズム良く2分54秒で通過し、走っていて楽に感じた」と軽快に飛ばす。矢ノ倉が中盤のトンネルを抜けると強風が襲うが、何のそのおかまいなしに飛ばす。「6キロまでは、自分でも納得のいく」素晴らしいタイムで走る。ラスト、2キロを切る上り坂で、足がぴたっと止まり思うように走れない。矢ノ倉は「ウクライナで2000メートル障害を走って、ケニア人はどんなに激しいレースでも最後はきっちり上げてくる」。「世界ではラストを上げられなければ戦えない」という経験をした。矢ノ倉は「後続に勢いをつけるために、ラストをあげた い」ともがく。それでも「ラストの切り替えができない」。矢ノ倉は「後半、スピードを上げるためには、太ももを一回り大きくしなければ駄目だ」と心に決める。矢ノ倉は24分41秒の区間賞で、チームタイム1時間3分4秒で、2位の韮崎に5分35秒差と広げ、3区中継所の西湖こうもり穴手前で待ち受ける4区・西山令(3年)に襷を手渡した。 |
4区[8,0875m]【西湖こうもり穴手前〜カーブミラー付近】 |
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◇西山令(3年)
1位 〈 24'59〉
区間賞
チーム1位 《 1:28'03》 |
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主将・西山は「本来、5キロを得意としているが、4区という長い距離を志願した」。これは上田と河村が直前の日体大記録会で10000メートルを走り無理をさせたくない配慮から主将として、自ら担ったからだ。西山は「8月20日右足の甲を痛め約1ヶ月、水泳と自転車マシーンで毎日リハビリを続けていたが、10月初め日本海駅伝で怪我明けとしては納得のいく走りができた」と今は体調は万全。「前との差が、ずいぶん開いていたので、落ち着いてスタートラインに立つことができた」と襷を受け取ると、最初の上がりも苦にせず1キロを「1分56秒と設定どおり」の好走。残り2キロ過ぎ、平坦なコースからゆるやかな傾斜が長々と続く。「それまでにタイムを稼いでおきたい」と力走するが、「距離を増すごとに設定タイムから2秒遅れる」。西山は「スタミナを考慮」して無理をしない。「5キロを全て良い流れで走るには、長い距離を走るスタミナが必要。良い経験になった」と24分59秒の区間賞。チームタイム1時間28分3秒で、2位の韮崎に7分16秒差と広げ、4区中継所のカーブミラー付近で待ち構える5区・熊谷堯之(1年)に襷を手渡した。 |
5区[3,000m]【カーブミラー付近〜青木原看板先】 |
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◇熊谷堯之(1年)
1位 〈 9'01〉
区間賞
チーム1位 《 1:37'04》 |
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熊谷は最後の学内タイムトライアルで結果をだし「一週間前に走れることを知った。素直に嬉しかった」。熊谷は主将・西山から襷を受け取ると「初めて走るので確り、コンディションを整え試合に臨んだ」。「少し、緊張していたが『2位とは差がついている』と、聞いていた」ので落ち着いて入る。熊谷は「練習で手応えがあった」と軽快に飛ばす。「山梨学院だけでなく、他校も応援してくれる」嬉しくなり元気付く。熊谷は「1キロからの上がり坂がきつい」が歯を食いしばり力走する。2キロ地点、西湖のタフなコースに「体がきつくタイムを落とす」。熊谷は「前半の上りを押さえて、ラスト勝負でいけば良かった」と不安がよぎる。不安を吹き飛ばすために、「ラスト1キロの平坦なコースを懸命に走るが、なかなか思うようにタイムがあがらない」。熊谷はあきらめることなく「この最後の下りで、遅れを取り戻そう」と力走する。「山梨学院の応援が耳に届く」体が反応しスピードアップ。熊谷は9分1秒の区間賞。チームタイム1時間37分4秒で、2位の韮崎に6分52秒差と広げ、5区中継所の青木原看板先で待ち構える6区・河村知樹(3年)に襷を託した。 |
6区[5,000m]【青木原看板先〜勧岳園オートキャンプ場前】 |
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◇河村知樹(3年)
1位〈 14'39〉
区間新・区間賞
1位《 1:51'43》 |
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長距離を走る河村は「直前の日体大記録会で10キロを走り」、今年も昨年と同じ6区をまかされた。河村は熟知している、このコースを力まず「いつも通りの走り」と心に言い聞かせスタートした。1キロを「やや押さえて2分45秒で入る」。体が軽快に動く「2キロまでは、余裕で自己ベスト」の快走。「2•5キロの中間点でも7分5秒で、自己ベスト」で通過する。絶好調の河村に襲いかかった敵は、3キロ過ぎての西湖独特の強風。河村は「強風に見舞われ、徐々にペースが落ちる」。それでも妥協することなく、強風に立ち向かい力走する。「後半のトンネルを曲がったところで、風を再び受け、さらにペースが落ちる」。河村は「総じて、スピードも体力的にも、去年に比べてよく走れた」と、自らが持つ「14分51秒」の区間新記録を12秒も更新。この大幅な更新にも、河村は「ラス ト2キロの単独走の切り替えに課題」と自分を戒める。河村は14分39秒の区間新・区間賞で、チームタイム1時間51分43秒として、2位に浮上した山梨農林に8分41秒、3位に下がった韮崎には8分51秒の差をつけて、6区中継所の勧岳園オートキャンプ場前に居るアンカー7区・上田健太(3年)に襷を手渡した。 |
7区[5,000m]【勧岳園オートキャンプ場前〜西湖南グランド】 |
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◇上田健太(3年)
1位〈 14'42〉
区間新・区間賞
チーム1位《 2:06'25》 |
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上田はエースとして2年間必ずしも本調子ではなかったが、今年の上田は「貧血も生活リズムをかえることで克服できた」と最上の状態。日本で海外で納得のいく記録を連発。主将の「西山やチームメートの気遣いに感謝」しつつ、上田は2年ぶりのアンカーを務める。「みんなの思いを繋いできた襷。ただゴールに運ぶことだけを考えて」襷を受け取りスタートする。平坦なコースを「1キロ、2分50秒を目安に」軽快に飛ばす。「400メートルのポイントで、仲間と走りをチェック」。上田は順調な入りに壮快な気分で「後半は上りが多いコース、タイムが落ちる」と平坦をぐんぐん飛ばす。早いペースで2キロ過ぎの上り坂にさしかかるが難なく力走。すこぶる調子が良い上田は、平坦な道を西湖民宿村看板を右折し、グランドに入り右回りにて1周と約300メートルとを快走。上田は「力どおりの走りができた」と仲間が迎えるゴール目指して、右手を突き上げ2位の山梨農林を10分29秒引き離す驚異的なチームタイム2時間6分25秒で2年連続の大会新記録と全区間区間賞(区間新3人)の完全優勝を果たし、3年連続13度目の優勝のテープを切った。 |
□主将の西山令(3年)「去年のタイムより2分以上、早いタイムでゴールできたのは、1年間の成長かなと思いますが、まだまだ課題は各々にあると思うので、その課題を一人一人が少しずつ改善して行けば、関東大会と都大路の優勝も可能だと思います」と一気に謙虚に述べる。「普段から両親始め、保護者の方々、先生方、様々な人に応援してくださる方々に、走りで恩返しできるのは都大路で優勝することだと思うので、それに向けてがんばりたい」と感謝の意を表した。
□箱崎孝久監督はレースについて「市谷が最初からいってくれたので、安心してみていられた」と振り返る。「市谷のスタートからの独走29分34秒は、日体大で活躍の服部翔太が高3の埼玉栄時代に競り合いでだした29分22秒に匹敵する」と称える。また、西湖における山梨学院の2時間6分25秒は、「あくまでも統計上のことだが」としたうえで、「2004年に東京農大二高が2時間8分13秒で、2008年に埼玉栄が2時間7分20秒で、都大路ではともに3位に入っている。それより約1分は良いので十分優勝に絡める位置にいる」と自信のほどをのぞかせる。ただ「昨年の記録2時間8分29秒から市谷の走りと上田・河村が短い距離に回ったことを除く、2区から7区で約10秒しか伸びていないのは、都大路でトップを競り合うには物足りない」と厳しい。関東大会は「全国大会のシミュレーション、記録も順位も狙いたい。関東で優勝できなければ、都大路でのトップ争いなどあり得ないでしょう」と、優勝すると明言し西湖を後にした。
文(H.K)、カメラ(今村佳正)(小池裕太)(八巻和夫)
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