第45回全日本大学駅伝対抗選手権大会が11月3日、熱田神宮(愛知県名古屋市)から伊勢神宮(三重県伊勢市)までの8区間106.8キロで行われ、伊勢路を舞台に26チームが健脚を競った。「全日本大学駅伝」は、10月の「出雲駅伝」正月の「箱根駅伝」とともに大学三大駅伝の一つと称されている。その中でも「全日本大学駅伝」は全国の予選会を勝ち抜いた25の大学が頂点を競うため、この大会が事実上の大学駅伝"日本一"決定戦となっている。伊勢神宮が20年に一度の式年遷宮を迎えた記念すべき年に、全国の代表25校とオープン参加の東海学連選抜チームの26チームが出場。山梨学院大は、昨年の44回大会でシード権を失ったが、6月の関東予選会を1位通過し、2年連続26回目の伊勢路。山学大は1区・佐藤孝哉が区間11位と出遅れたものの、2区・井上大仁が5人抜きの区間賞の活躍で5位まで順位を上げる。しかし、続く3、4、5区と順位を1つずつ落とし、7区で7位に浮上するもシード圏外のまま最後の襷はオムワンバに託される。先月の箱根予選会1位のオムワンバは、わずか1秒で区間賞に届かなかったものの、チーム順位を5位に上げ5時間20分07秒でフィニッシュテープを切った。山学大は4年ぶりにシード権を確保した。大会は駒澤大が5時間13分09秒で3連覇を達成した。
午前8時5分、雲一つない熱田の杜上空に号砲のピストルの音と各大学の応援団やチアリーダーの声援が響きわたり、106.8キロの大学駅伝日本一を決める熱い戦いの火蓋が切られた。レース序盤、先頭集団の1kmの通過が2分42秒と例年にないハイペースな展開。初の大学駅伝出場の1区・佐藤孝哉は徐々に遅れ、トップから1分51秒差の11位で襷を2区・井上大仁につなぐ。井上は日本体育大の山中秀仁と同時に襷を受け取るとそのまま第3中継所まで並走。途中後ろからの追い上げや山中にかわされそうになったが落ち着いて粘り、道中5人を抜き順位を5位に上げ、3区・上村純也に襷を渡す。井上は、日体・山中、早稲田大・大迫傑とともに区間同タイムで2区・区間賞を獲得した。3区・上村も初の大学駅伝。上村は、日体に抜かれ順位を一つ落ちして6位で襷を4区・兼子侑大に託す。兼子は後続の明治大と早稲田に追い上げられるも、耐えしのぎ、10km過ぎに早稲田と共に明治を振り切る。しかし、早稲田の走りについていけず区間5位と健闘したものの順位を一つ落として7位で襷を5区・伊藤淑記に襷をつなぐ。伊藤は後続の明治に抜かれ8位で6区・森井勇磨に襷を渡す。森井は、昨年8区を走っている全日本経験者。前を行く、7位大東文化大に追いつき競り合ったものの、順位を上げることができず、7位と2秒差の8位で7区・阿部竜巳に襷をつなぐ。阿部も昨年の全日本経験者。阿部は、区間5位の力走で大東文化を抜き7位に浮上し、シード圏内の6位まで24秒差で最後の襷を8区・エノック・オムワンバに渡す。エノックは、昨年の全日本で2区・区間新記録を記録し、先月の箱根予選会では個人1位に入っている。エノックは5km過ぎに前を行く6位・青山学院大をかわし、11km過ぎに5位・日体大を一気に抜き去り5位に浮上。エノックは、そのまま5位でフィニッシュテープを切り、4年ぶりのシード権をチームにもたらした。
レース後、2区・区間賞の井上大仁選手は「あまりタイムを意識していなかったが、設定通りのタイムで走れた。日体の選手と一緒に走り、何度かかわされそうになったが落ち着いてレースができた。最終的にチームもシード権を取れたので良かった。区間賞の実感は沸かないが、タイムよりも順位を意識して、良い位置で渡せることを考えて走った。これからもっと力をつけてもっと強くなって箱根でも良いタイムで区間賞を取りたい。最近スパートの練習をよくやっていたので、最後にそれが出せたので良かった。チームとしてシードが取れたのは良かったが、課題もあるので、箱根は距離も伸びるし簡単にはいかないと思うのでもう一度気を引き締めて、このシードを自信につなげたい」と述べた。あと1秒区間賞に届かなかったものの、チームにシード権を引き寄せたエノック・オムワンバ選手は「箱根の予選会では(日大の)キトー選手に勝てたがきょうは負けてしまった。箱根では負けずに必ず勝ちます」と話し、リベンジを誓った。飯島理彰コーチは「4年ぶりにシードとなるが、内容を見ると区間記録2桁が3人いるので、もう少し走らなければいけないと思う。このようなレースをしていると、足もとをすくわれ、シード圏外、勝負にならない走りになってしまうので、危機感や厳しさをもって今後もやっていきたい」と語った。上田誠仁監督は「シードを取ることだけが絶対的な課題だったので、達成できたのは良かった。シードを取れたので、来年のチームの組み立てには大きなプラスになる。だがこれで胸を撫で下ろせるわけではなく、やるべき課題は多く残されている。エノックにシード圏内でたすきを渡せなかったことも課題。色々な課題はあるが、3強プラス1の手前まできているので、その"1"に入れるよう、そういうイメージを持って箱根まで残り2か月、十分な準備をして過ごしたい」と語った。
[最終順位]優勝・駒澤大学(5時間13分09秒・大会3連覇)、2位・東洋大学、3位・明治大学、4位・早稲田大学、5位・山梨学院大学、6位・青山学院大学。以上、来年のシード権獲得。
文(Y.Y)、カメラ(小池裕太、藤原 稔、Y.Y)
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