山梨学院パブリシティセンター
第十五回酒折連歌賞表彰式
〜大賞・文部科学大臣賞に東京都の大原健三さん〜
〜直木賞作家・辻村深月のトークショーも開催〜

第28回国民文化祭・やまなし2013「酒折連歌」祭の事業として実施された「第十五回酒折連歌賞」の入賞者が11月9日に発表され、山梨学院メモリアルホールで表彰式が行われた。十五回目を迎えた酒折連歌賞は、今年の2月1日から募集が開始され、9月20日に締め切られ、全国から29,628句の応募があった。三枝昂之選考委員長、宇多喜代子、今野寿美、もりまりこ、辻村深月の各選考委員が選考を行い、入賞者を決定。大賞・文部科学大臣賞は「小さいね冥王星も人の心も」の問いの片歌に「「だけど」でも「だから」でもいい君が好きだよ」と返した東京都の大原健三さんが受賞した。また、山梨県知事賞には兵庫県の山本町子さん、山梨県教育委員会教育長賞には神奈川県の水野真由美さん、甲府市長賞には山梨県の勝俣麗奈さん、アルテア賞最優秀・山梨県教育委員会教育委員長賞には埼玉県の風間彩花さんが選ばれた。表彰式では、選考委員を務めた辻村深月さんが「直木賞作家 辻村深月の原風景"ふるさと山梨"」をテーマにトークショーを行い、会場に詰めかけた約400人の一般市民や学生・生徒らが耳を傾けた。


第十五回酒折連歌賞は、今年山梨県で開催された第28回国民文化祭・やまなし2013「富士の国やまなし国文祭」の甲府市主催事業「酒折連歌」祭の事業として、山梨学院大学と酒折連歌賞実行委員会などが主催して実施。国文祭の会期に合わせ、募集期間を例年と変更し、2月1日から9月20日まで募集が行われ、全国から29,628句の作品が寄せられた。三枝昂之選考委員長、宇多喜代子、今野寿美、もりまりこ、辻村深月の各選考委員が選考を行い、入賞者を決定した。

大賞・文部科学大臣賞
(問いの片歌2.小さいね冥王星も人の心も)
「だけど」でも「だから」でもいい君が好きだよ 
大原健三(東京都大田区 82歳 いけばな教師)

山梨県知事賞
(問いの片歌2.小さいね冥王星も人の心も)
北斎の富士山波に飲み込まれたり  
山本町子(兵庫県明石市 72歳)

山梨県教育委員会教育委員長賞
(問いの片歌4.夏の蝶あしたにつづく道を教えて)
木漏れ日を浴びて祈りが輝いている
水野真由美(神奈川県横浜市 23歳 保育士)

甲府市長賞
(問いの片歌1.ふるさとの深き眠りの雨の日曜)
持ち物は歯ブラシタオル古い本だけ 
勝俣麗奈(山梨県立富士河口湖高校 16歳)

アルテア賞最優秀・山梨県教育委員会教育委員長賞
(問いの片歌2.小さいね冥王星も人の心も)
大きいよ近くでみてよ心でみてよ 
風間彩花(行田市立西中学校 14歳)

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表彰式は、シンガーソングライター"伸太郎"が作詞・作曲した酒折連歌イメージソング「風なりて」のハーモニーに乗せて開幕。バックコーラスは山梨学院中高合唱部が担当した。「酒折連歌」祭の主催者を代表し、第28回国民文化祭甲府市実行委員会事務局長の堀井昇甲府市教育委員会教育部長が「甲府市では、今回の国民文化祭の開催に合わせ、山梨学院大学と連携し、酒折連歌が山梨独自の文芸であることに注目して、「第十五回酒折連歌賞」「酒折連歌講座」「酒折連歌の歴史展」を甲府市独自事業「酒折連歌」祭として開催いたしました。酒折連歌賞には約3万句の応募をいただき、全国から高い関心を寄せていただき、実行委員会といたしましても大変喜んでおります。この「酒折連歌」祭が郷土の誇りを再認識するとともに全国の多くの皆様にも親しまれるよう、次代につながる新しい文化を創造し、発信していく機会となることを期待しています」と挨拶。また、酒折連歌賞を創設し、酒折連歌祭の共同主催者である山梨学院大学の古屋忠彦学長は「現存する我が国最古の歴史書・古事記や日本書紀に「酒折」という地名が登場することから、ふるさとの振興などを考え、今から十五年前に酒折連歌賞を創設いたしました。文部科学大臣賞という冠もいただき、連歌という敷居の高い文学形式ですが、徐々に見直され、普及してきている実感をしております。本日、このような素晴らしい場で酒折連歌賞の表彰式を行えることに感謝を申し上げます」と挨拶した。選考委員を代表し三枝昂之選考委員長が総評を行い、三枝委員長は総評の中で「酒折連歌は五七七で問いかけをして五七七で答えを返す片歌問答で、日本で一番古い詩韻のケースです。現在、短歌や俳句を親しむ人が多くいますが、古い根幹にあるものが酒折宮で交わされた連歌です。酒折連歌は、古いけれど最先端の詩型です。酒折連歌には、問いかけに対して1万人以上の人が答えを返す、コミュニケーションがあり、絆を象徴する文芸です。しかしながら、問いにどう返すかが難しく、"付かず離れず"が大切です。あまり近づきすぎたり、遠すぎてぼやけてしまってもダメで、問いの片歌を作るにはこの付かず離れずが要諦です」と語った。表彰式終了後、受賞者らは連歌発祥の地「酒折宮」を訪問し、「酒折連歌の歴史展」などを見学した。


◎上位入賞者5人の横顔◎

大賞・文部科学大臣賞 大原健三さん

大原健三(おおはら けんぞう)さん、昭和6年生まれ、82歳、いけばな教師。東京都大田区在住。第十四回酒折連歌賞では、入選に入り、伊藤園主催の「おーいお茶新俳句」にも入選経験がある。最高の道楽として「酒折連歌」に親しんでいる。大賞と聞いて、まだ信じられない気持ちがあるが、創作した答えの片歌はきっと神様から見たら、星や人間は本当に小さい。「だけど」愛は大きいのではないか?「だから」こそ愛は大きいのではないか?という気持ち「君が好きだよ」につながったという。これからも最高のボケ防止として酒折連歌の応募を続けると語っている。(表彰式は代理人が出席)


山梨県知事賞 山本町子さん

山本町子(やまもと まちこ)さん、昭和16年生まれ、72歳。兵庫県明石市在住。普段から日記以外に毎日の自分の気持ちや考えを言葉に残したいと自己流で短歌を詠んでいる。知事賞の受賞について大変光栄に感じ、飛び上がりたいほど嬉しい気持ちで、創作した答えの片歌はテレビで北斎の絵を見る機会があり、山梨・北斎・世界遺産の富士山と結びついたという。酒折連歌への応募は夏の楽しみになっており、今回受賞したことを受け、来年の酒折連歌賞にも今年以上の作品で応募したいと意気込んでいる。(表彰式は都合により欠席)


山梨県教育委員会教育長賞 水野真由美さん

水野真由美(みずの まゆみ)さん、平成2年生まれ、23歳、保育士。神奈川県横浜市在住。普段から短歌を作ることが好きで応募し、イメージを膨らませるのが面白かったという。受賞を聞いたときは、本当に驚きと感動でいっぱいで、言葉にできないくらい嬉しかったという。創作した答えの片歌は木漏れ日が窓の外でキラキラ輝いているのを見た時に思い浮かび、"言葉のパズル"である短歌や連歌にこれからも挑戦したいと抱負を語っている。



甲府市長賞 勝俣麗奈さん

勝俣麗奈(かつまた れな)さん、平成9年生まれ、16歳、山梨県立富士河口湖高校1年。山梨県富士吉田市在住。俳句や短歌が好きで、高校の夏休みの宿題で取り組み応募した。創作した答えの片歌は自分がスマートフォンをしている時にふと、雨の旅だったらケータイもお金も持たない現代社会から離れた旅をしてみたいというイメージから思い浮かんだという。将来は、自分の好きな歌や本、絵などを小さい子どもたちに伝え、一緒に分かち合うことのできる保育士になりたいと語っている。



アルテア賞最優秀・山梨県教育委員会教育委員長賞 風間彩花さん

風間彩花(かざま あやか)さん、平成11年生まれ、14歳、行田市立西中学校2年。埼玉県行田市在住。短詩型文学では、俳句以外創作の経験はなかったが、酒折連歌に触れてみて、人それぞれ思うことが違うので、その思いを伝えあう面白いものだと感じたという。創作した答えの片歌は学校で友達と話をしている時、問いの片歌を見てふと思い浮かんだという。将来について、色々な事に興味を持って取り組み、"自分の人生をもう一度歩みたい"、そう思えるような人生を歩みたいと語っている。




表彰式後半では、第十五回酒折連歌賞選考委員を務めた山梨学院高校出身の直木賞作家辻村深月さんのトークショーが行われた。辻村深月さんは昭和55年生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒。平成16年、山梨学院高校時代に書き始めた『冷たい校舎の時は止まる』(講談社)で、第31回メフィスト賞を受賞してデビュー。『ツナグ』(新潮社)で、第32回吉川英治文学新人賞を受賞。『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)で、第147回直木三十五賞受賞。聞き手は元山梨放送アナウンサー・山梨文化学園専務理事で現在は酒折連歌賞実行委員会監事の加藤嘉晴さんが務めた。辻村さんは"酒折"について「酒折連歌や、著作の題名である『ツナグ』、親しみのある箱根駅伝の襷もつなぐもの。誰かと誰かの思いをかけたものをつなぎ合わせていくということにおいて凄く縁のある土地だと思う」と話し、酒折連歌賞の選考について「自宅に応募作品が届き、一つ一つ見ていくのですが、それぞれの方が思いを込めて書いてあり、肉筆の温かさや考えて書かれているのが伝わってきて選考作業も楽しかったです」と語った。山梨への思いについて「都内や海沿いの高校の場面を書くことはまずなかった。四方を山に囲まれていて東京から約2時間くらいの地方都市が舞台になることが多く、人間は自分の中で見てきた原風景というものが誰にでもあって、自分にとっての原風景が山梨だと思います。山梨の原風景を栄養のようにずっと吸収して物を書いてこられたことはとても幸せなことだと思います」と述べた。

文(Y.Y)、カメラ(藤原 稔)

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