天皇杯平成25年度全日本レスリング選手権大会が12月21日から23日の3日間、東京・代々木第2体育館で行われた。今年の日本チャンピオンを決める年末の大一番に、山梨学院大から6人が出場した。このうち、フリー55kg級高橋侑希とグレコ66kg級の長崎宏樹の2人が3位の表彰台を獲得した。高橋は準決勝でライバルの森下史崇(日体大)に惜敗したが、3位決定戦を圧勝で制した。長崎は優勝した音泉秀幸(ALSOK)に2回戦で敗れたが、敗者復活戦と3位決定戦に勝利、初の天皇杯表彰台を獲得した。グレコ60kg級の雨宮隆二は準決勝に進出したが、2連覇を達成させた山学大の先輩倉本一真(自衛隊)に敗れ、敗者復活戦に回り5位となった。学生2冠王者で優勝が期待されたフリー60kg級鴨居正和は怪我のため棄権した。
≪F55kg級 高橋侑希(たかはし ゆうき 2年 三重・いなべ総合)≫
高橋侑希は、1回戦で折田誠治(国士舘大)、2回戦で守田泰弘(和歌山県教育庁)をいずれもテクニカルフォールで下し、準決勝で1学年上のライバル森下史崇(日体大)と対戦した。実力伯仲の2人は、戦うたびに火花が飛ぶような緊迫した試合をする。第1ピリオド(1P)を高橋が1−0でリードし2Pに入った。中盤で攻めに入ったところを返され1−3と逆転され、残り15秒に3−5としたが再逆転ならず敗れた。3位決定戦で半田守(専大職員)をTフォールで下し表彰台に上った。高橋侑希選手は「森下選手とは今季2勝3敗で負け越したが、去年よりは確実に差が縮まっていると思う。ルール改正で来年から57kg級になるので、冬場に体力をつけて来シーズンに備えたい」と高校時代からのライバル対決を振り返った。
≪G66s級 長崎宏樹(ながさき ひろき 3年 長野・上田西)≫
長崎宏樹は、大学1年の時に新人戦で優勝したが、その後、肩を痛めて手術、2年の時はリハビリで1年間試合に出場できなかった。3年になってようやく出れるようになったが、表彰台とは無縁だった。明治杯5位の実績で天皇杯の出場権を獲得し日本一を競う大会で大飛躍した。1回戦で中村尚弥(日体大)に大差で勝利、2回戦で優勝した音泉秀幸(ALSOK)に敗れたが、敗者復活戦を勝ち上がり、3位決定戦で昨年度3位の横山巧(岡山龍谷高教員)を圧倒した。1Pの開始早々に胴タックルで3ポイントを取り、直後に相手を持ち上げて投げ飛ばす俵返しの大技を連続して決めた。ルール改定で3ポイントの大技を2回決めると勝利となる。相手陣営はチャレンジしたが、ビデオ判定の結果、チャ レンジは認められず勝利が決定、見事に天皇杯の表彰台を獲得した。長崎宏樹選手は「肩を痛めて手術した後、思うような結果を出せませんでしたが、朝練や走り込みを地道に続けて来たから力が出せたのだと思います。コーチに教えてもらったお陰です。苦しい時に励ましてくれたチームの仲間と、支えてくれているに親に感謝したい」と周囲への感謝を言葉にした。
≪G60s級 雨宮隆二(あめみや りゅうじ 2年 山梨・韮崎工)≫
雨宮隆二は、甲府市出身、中学までは柔道選手だった。県内唯一の強豪校韮崎工でレスリングに取り組み、高3の山口国体で優勝。山学大で強くなりたいと入学、今年の全日本大学グレコローマン選手権で準優勝した。初戦の2回戦で中村勇太(自衛隊)を3−1、3回戦で下山田培(日体大)を5−3で下し、準決勝に進出した。準決勝の対戦相手は昨年度の優勝者で山学大の先輩倉本一真(自衛隊)、倉本と対戦するのは、高3で天皇杯3位となった時に敗れて以来2度目。力を付けて臨んだが、ロンドン五輪2位の選手を破り、世界選手権で7位になった倉本の力には及ばなかった。敗者復活戦に回り5位となった。雨宮隆二選手は「勝ち上がって倉本さんとやれたのはよかったが、敗者復活戦の最初に肩を痛め冷静さを失った。相手の狙っているところに自分から行ってしまった感があり、悔しい気持ちが強いです。来シーズンから階級が変わるので、66kg級で戦うつもりで準備したい」と来シーズンを見据えた。
この他の山学勢は、負傷からの復帰戦だったフリー84kg級亀山晃寛(3年 群馬・大泉)が惜敗のベスト16。4年最後のフリー66kg級濱本豊(4年 山口・宇部鴻城)は試合中に負傷しベスト16。フリー120kg級松野裕也(3年 茨城・霞ヶ浦)も健闘したが1回戦で敗退した。優勝が期待された今年の学生2冠王者フリー60s級鴨居正和(3年 香川中央)は大会1週間前に怪我を負い、やむなく棄権した
OB勢は、G60s級倉本一真(自衛隊体育学校)が大会2連覇、G96s級山本雄資(警視庁)2位、F120kg級金澤勝利(自衛隊体育学校)3位、F84s級奈良部嘉明(筑西広域消防本部)4位、G96s級有薗拓真(ALSOK)5位となった。
3日間の大会を振り返り、小幡邦彦コーチは「高橋は優勝を狙っていたので残念ですが、森下との差はなくなっている。冬の間に海外の試合にも行くと思うので、外国の選手と戦い色々吸収してもらいたい。長崎は練習の成果を試合で出してくれた。亀山は負傷からの復帰戦だったが、勝てる試合を落とした。社会人とやる時には、駆け引きや時間の使い方も必要になる。各選手に技術だけでなく試合の駆け引きについても、この冬にしっかり教えて行きたい」と各選手の健闘を称え、更なるレベルアップを求めていた。
文(M.T) カメラ(平川大雪)
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