北海道帯広市で開催されている第86回日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)は1月8日、帯広の森に点在するスピード、フィギュア、アイスホッケー3会場で熱戦が繰り広げられた。明治北海道十勝オーバルで行われているスピードスケートは、男女の1500m・男子1部1万m・男子2部5000mが行われた。山梨学院大勢のうち、前日の3000mで優勝した高橋菜那が、この日の女子1500で3位に入り2日連続で表彰台に上った。また、男子の大林昌仁が10000mで3位を獲得、前日の5000m準優勝に続き、大林もまた2日連続で表彰台に上った。一方、フィギュア会場の帯広の森スポーツセンターでは、山学大に全国フィギュアの道を切り開き、昨年の女子総合優勝に大貢献した那須野光が、競技生活最後の演技を行った。大怪我をした右膝をテーピングで保護して出場、負傷をまったく感じさせないノーミスの演技で有終の美を飾った。
スピードスケート会場の明治北海道十勝オーバルは、それまでの屋外リンクを全面改装して平成21年に開設された屋内リンク、風雪や外気の影響をまったく受けない記録製造高速リンク。86年の歴史を持つインカレが屋内リンクで開催されるのは初めて、大会3日目も大会新記録が続出した。
≪女子1500m 朝倉由佳・池田千奈美・高橋菜那≫
3日目最初の種目1500mは、スピードと持久力の両方が求められるペース配分が非常に難しい種目。山学大勢は、最初に新人の朝倉由佳(1年 東海大三)が滑り11位となった。2番目に持久力抜群の池田千奈美(2年 駒大苫小牧)が滑り8位入賞。最終8組で高橋菜那(2年 白樺学園)が滑り、中学時代に五輪出場した高木美帆(日体大)、昨年優勝の阿部友香(高崎健大)に次ぐ3位に入り、2日連続の表彰台を獲得した(上位5人は大会新)。高橋菜那選手は「好きな3000mに比べると1500mには苦手意識があり、上位の2人にはまだ勝ったことがありません。ぎりぎり3位に入り、学校対抗争いに貢献できたことは良かったです。ペース配分などをもっともっと学んで行きたい」とやや苦手な1500mを振り返った。
≪男子10000m 高浪健太・由井翔・大林昌仁≫
1万mは、2組が200m差で同時に滑走するカルテットスタートで行われる。1周400mのリンクを25周もする最も過酷な鉄人レース。山学大勢は、第1カルテットで高浪健太主将(4年 白樺学園)がすべり11位、第3カルテットで由井翔(3年 市立長野)が滑り7位入賞。第4カルテットで滑った大林昌仁(1年 佐久長聖)は、終始33秒台と34秒台でラップを刻み、ラスト1周は32秒台に上げる理想的なレース運びで3位の表彰台を獲得した(6位まで大会新)。大林昌仁選手は「1万を滑るのは今シーズン2本目、5千とは違う緊張感がありました。コーチの指示通り33秒後半から34秒前半を維持し、ラストスパートも出来たので自分の持ち味は出せました。目標にしていた14分10秒を切れた(正式タイムは14分09秒37)ので良かったと思います。大学生活中に一回でも多く国際大会に出れるよう、これから体をしっかり作って行きたい」と新星は飛躍を誓った。
この他、男子1500mは由井篤樹(3年 佐久長聖)10位、山中敏愛(1年 小海)15位、岸田昌也(4年 白樺学園)18位となった。
≪フィギュア・フリー 那須野 光・中村 智≫
フィギュア競技は8日が最終日。男女ともにショートプログラム(SP)上位24以内選手によるフリー演技が行なわれた。山梨学院大の2人は、ともに大会前に大怪我を負い出場が危ぶまれた。女子Aクラスの那須野 光(4年 東海大三)は、1年の時に山学大初の全日本フィギュア出場選手となり、昨年はたった一人でインカレフィギュア団体6位を獲得、山梨学院女子総合4連覇に大貢献した立役者、今年も活躍が大いに期待された。しかし、大会1ヶ月前に右膝の靭帯を損傷、本来なら棄権するレベルの大怪我だったが、インカレを競技生活最後の舞台にしたいと奮い立ち、1週間前にやっと実戦練習を再開させ、ぎりぎりで出場に漕ぎ着けた。ショートプログラムは、黒鳥の衣装で登場しノーミスの演技を行ったが、高難度ジャンプを避けたために得点は伸びず、20位でフリーに進んだ。また、男子の中村智(3年 長野東)も怪我に泣いた。10月に疲労骨折して戦列を離れ、故障が回復しない状態で出場、ショートプログラム12位でフリーに進んだ。
2人はともに、岡谷駅から毎日1時間半かけて山学大に遠距離通学している。子どもの時から教わっている元五輪日本代表の村田光弘コーチの指導で、毎日夕方から岡谷市やまびこの森アイスアリーナで練習を積み重ね、Aクラスの選手に育ってきた。
向かえた8日のフリー演技、那須野は、黒鳥が大人の鳥になり黄土色の羽根をまとったとも思える艶やかな衣装で表れ、誰よりも実に艶やかに、芸術的に舞った。ジャンプも、ステップも、コンビネーションスピンも、コンビネーションジャンプもみんな決めて見せた。負傷している右膝をテーピングで保護して演技していることなど、会場の誰にも気付かせなかった。ノーミスの演技で競技生活を締めくくった。なんという精神力の強さなのだろう、人間は努力を惜しまなければ、これほどの逆境でもここまで出来るのだと、鳥肌が立つほど感動した。フリーは11位を獲得、トータル100、17で順位を15位に上げた。男子Aクラスの中村智は11位(トータル142、17)で大会を終えた。
那須野光選手は「1ヶ月前は滑ることが出来ませんでした。最後はインカレでと思い、何とか間に合わせることが出来ました。本当はトリプルやダブルアクセルを入れたかったけれど、間に合わなかった。それでも、今出来ることは全部出し切れたと思います」。小さい時から寡黙に努力を積み重ねて来た那須野は、最後は涙が溢れて来て唇を震わせながら答えてくれた。中村智選手は「負傷のために、インカレが久しぶりの全国大会でした。緊張した部分と自分なりに楽しめた部分もありました。課題が残る部分もたくさんあったので、次の国体に向けて直して行きたい」と振り返った。那須野はこの日で競技生活を引退、中村は明日から練習を再開させる。
3日目を終わった段階での山学大学校対抗総合成績は、女子は3位、男子は7位から5位に上った。明日9日は大会最終日、2000mリレーとチームパシュートが行なわれる。
文(M.?) カメラ(平川大雪)
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