平成26年全日本学生柔道優勝大会(男子63回・女子23回)が6月28日、東京・日本武道館で開幕した。1日目は女子の1回戦から決勝までと男子の1回戦が行われた。13年連続13回目出場の女子は、順当に決勝に勝ち進み、2年連続優勝を許した岡山の環太平洋大と3年連続対決した。出場した5人はみなケガを押しての出場、主将の大将井上愛美は肩と腰と足を痛めた満身創痍の体で、環太平洋大のエース梅木真美と死闘を繰り広げ引き分けに持ち込んだ。結果は2−1で勝利、3年ぶりに優勝旗を奪還し5度目の大学日本一に返り咲いた。今年のチームは、決勝2年連続敗退の悔しさに加え、関東大会で筑波大に敗れる屈辱を味わった。悔しさを胸に稽古に励み、悔しさを糧にして戦った選手たちは、念願だった嬉し涙を流し、110キロの巨体井 上愛美の体を聖地日本武道館の宙に放り上げた。
女子は5人制の部と3人制の部の2部制、山学大は強豪校が集う5人制の部に前年度準優勝校として出場した。初戦の岡山商大戦は全員一本勝ちの5−0、2回戦の天理大戦3−1、準々決勝金沢学院大戦3−0、準決勝帝京大戦3−1で決勝に進出した。対戦相手の環太平洋大学(IPU)は新興チームながら、バルセロナオリンピック金メダリストの古賀稔彦氏が総監督を務め近年急速に力をつけて来たチーム。大会史上初の3連覇を狙った一昨年と、昨年の2年連続して優勝を許した。決勝戦を前にした控え室で、山部伸敏監督は「関東の惨めな思いを思い出せ、これが最後だ、やるぞ、やりきるぞ、最後まで守らない、自分を信じて強い気持ちで戦え」と選手を鼓舞した。山梨学院大柔道部女子は、今 年こそ絶対に勝つとその胸に誓い、どーんと響きわたる大太鼓の音とともにすべての照明が点灯された決勝の大舞台に立った。
全日本学生柔道優勝大会・女子5人制の部決勝(6/28)於 日本武道館
≪山梨学院大vs環太平洋大≫
|
先鋒 |
次鋒 |
中堅 |
副将 |
大将 |
山梨学院大 |
鶴岡 |
出口 |
長内 |
佐野 |
井上 |
|
○
有効 |
引分け |
●
一本 |
○
一本 |
引き分け |
環太平洋大 |
広木 |
渡部 |
宇野 |
千葉 |
梅木 |
山学大2勝1敗2分 優勝
先鋒には2年の鶴岡来雪(57kg 愛媛・新田)が起用された。抜擢に応えて有効を奪い勝利、チームに流れを引き寄せた。次峰の新人出口クリスタ(1年 57s 松商学園)が健闘して引分け、中堅の長内香月(2年 70kg級 高岡龍谷)は宇野と力比べをしてしまい技あり2回の合わせ一本で敗れたが、副将の佐野賀世子(3年 63kg 高岡龍谷)が再び流れを呼び戻す一本勝ちを収めた。大将の井上愛美(4年 110kg 愛媛・新田)は、万全には程遠い体調の上に、相手の梅木は78s級の学生チャンピオン、引分けると優勝だが、一本負けすると内容差で敗れる展開、非常に苦しい戦いだった、ポイントを取ることができず残り1分に指導3を取られ、あと一つ指導を取られると一本負けとなる苦境に追い込まれた。ここから懸命に踏ん張った、ぎりぎり踏ん張りきった瞬間に優勝の時が来た。全員が抱き合って喜び、井上はうれし涙が止まらなかった。
先鋒の鶴岡来雪選手は「先鋒といわれて緊張しましたが、やるしかない、攻めの柔道をしよう、流れを作ろうと、気持ちで戦いました。一本を取りきれなかったからまだまだです」と精進を誓っていた。次峰の出口クリスタ選手は「高校時代は自分の戦いだけしか考えなかったが、大学に入ってみんなで一丸となって戦う団体戦に初めて出て、新鮮だった上に優勝を味わうことが出来て嬉しいです」と笑顔を見せた。準決勝、決勝とも一本勝ちで貢献した副将の佐野賀世子選手は「大会前に左手中指を痛めて腫れ上がって練習できなくなり苦しみました。ずっとアイシングしてやっと間に合い、優勝に貢献できてよかった」と振り返った。大将の井上愛美主将は「関東大会で筑波大に負けてとても悔しい思いをしました。みんなで意見をぶつけ合い練習に励んできました。決勝は絶対に負けてはいけないと思い、頭の中真っ白になりながら懸命に戦いました。チームの全員で勝ち取った優勝です」と最後はほっとした表情で苦しかった戦いを振り返った。山部伸敏監督は「この2年間は決勝で負けてきましたので、優勝旗奪還を目標にやってきました。IPUとの決勝は接戦になると分かっていましたので、選手に攻めの気持ちを忘れずに戦えと指示しました。本当に良く頑張って戦ってくれました」喜びを語るその眼には涙がにじんでいた。西田孝宏総監督は「決勝の先鋒は4年最後の塚田紗矢と考えていましたが、準決勝の負け方が悪かったので、鶴岡に替えました。塚田の悔しい思いも背負って鶴岡が踏ん張ってくれた。この2年間負けて、負けてきたので、苦しい思いをさせてきました。やっと勝利の喜びを味合わせることが出来た。スタッフを含めた全員の勝利です、明日は男子に頑張ってもらいたい」と厳つい顔をほころばせた。その男子は、28日の1回戦は旭川大に6−1で勝利、29日の2回戦に駒を進めた。
女子5人制の部は、優勝山学大、準優勝環太平洋大、3位日大と帝京大。女子3人制の部は、優勝鹿屋体育大、準優勝創価大、3位びわこ成蹊スポーツ大と早稲田大となった。大会優秀選手に山学大から佐野賀世子が選ばれた。
文(M.T)カメラ(平川大雪)2014.6.28
| アルバム女子1 | アルバム女子2 | アルバム男子 |
≪追記≫
大会2日目(29日・最終日)の男子は、2回戦で同志社大を5−2、3回戦で日体大を5−2で下し、準々決勝で西の名門天理大と対戦し1−6で敗れ、ベスト8で大会を終えた。鈴木誉広主将は「普段やっていることが出来なかった、天理とはまだ力の差があった。この悔しさを忘れずに練習を重ねて秋は勝ちにいきます」。身長187cm、体重140kgの巨漢主将は流れ落ちる汗に悔しさを滲ませた。西田孝宏総監督は「強豪の天理に今年も勝てなかった。勝つ力はあったのだが、私が組んだオーダーが外れたことも敗因の一つ、捲土重来を期します」。部員たちが日本一熱い指導者と呼ぶ熱血指導者は、次に勝つために唇を噛んだ。男子の優勝は東海大、準優勝日大、3位天理大と筑波大、ベスト8は山学大、明大、桐蔭横浜大、国士舘大となった。
文(M.I)カメラ(平川大雪)2014.6.29
| アルバム天理戦 |