
神奈川・横浜国際プールで開催されてきた「第90回日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)競泳競技」は9月7日、大会最終日の戦いが繰り広げられた。最初の決勝レース女子800m自由形決勝で、初のファイナリストとなった長距離の星2年松浦由佳が6位入賞しチームに勢いを与えた。山学勢もう一人のファイナリスト100m背泳ぎの3年竹迫麻澄は、3年連続の決勝進出、1年の時は7位、昨年はあと一歩で表彰台の4位だった。そして、3年目についに表彰台に上がった。自己ベストの泳ぎで3位、山学応援席に最高の笑顔を向けた。このほか5人がB決勝に進み、最終種目の800mリレーは男女ともにB決勝に進出した。今年の山学大は、厳しい戦いになると予想されたが、出場全選手が自分の限界に挑み全員が健闘した。特に、ラストスイムの4年生たちがひたむきに水泳 と向き合い、B決勝ながら決勝と呼ばれるレースに進む力をつけた。一人ひとりの努力が積み重なり、学校対抗最終成績女子は7位となり、昨年失ったシード権を1年で奪還、男子も11位と健闘した。
≪女子800m自由形決勝 松浦由佳≫
松浦由佳(まつうら ゆか 2年 福井・北陸)は、高校時代はバタフライの方が専門種目だったそうだ。国体のときに神田監督に声をかけられ、最初はバタフライ選手として入学した。長距離の才能が開花したのは大学入学後、同期の浅山美貴(2年 静岡・磐田農)に加えて、熊本真季(1年 京都外大西)が入り、長距離勢3人で一緒に切磋琢磨しているうちに次第に力がついてきた。前日の予選で出した自己ベスト(8分46秒01)とほぼ同じタイム(8分46秒04)で決勝を泳ぎ切り6位となった。
松浦由佳選手は「インターハイでは決勝は夢でした。去年は17位で予選落ち、インカレの大舞台で決勝を泳ぐなんて、夢のまた夢でしたので、楽しかったです。自分はキックよりもプル(腕のかき)の強さに頼るタイプです。腕だけの練習だったら男の選手に負けないという気持でやっています(笑い)、まだ2本続けて良いタイムで泳ぐ体力がないので、決勝でもタイムを上げれる体力をつけて行きたい」としている。
≪女子100m背泳ぎ決勝 竹迫麻澄≫
竹迫麻澄(たかば ますみ 3年 愛知・中京大中京)は、長姉の麻貴・次姉の麻弥に続き山学大に進学した3姉妹の3女。1,2年の頃は実績を残せなかったが、3年になって急成長した。2月の短水路選手権で50m・100mともに3位の表彰台に上がり、6月のジャパンオープン50mで長水路初の3位、2人の姉を超えた。午前中の予選4位で決勝に進み、50mでは4位だったが60mで順位を上げ、3位でゴールした。去年(当時の自己ベスト)と比べると1秒近くも早い1分01秒44の大躍進自己ベストでついにインカレの表彰台を獲得した。
竹迫麻澄選手は「昨日のメドレーリレーのタイムで泳げれば表彰台に上がれると思っていたので、予選から心に余裕を持ってレースに臨むことができました。周りの人のおかげで伸び続けることが出来ているので、周りの人たちに感謝して、来年は優勝できるように頑張りたい」と努力でつかんだ3位を振り返った。
このほかの山学勢は、5人がB決勝に進出した。100m自由形の
本間あかり(3年 山形・羽黒)は、決勝を泳いだ選手よりも早いタイムで泳ぎ、B決勝1位を獲得、レース後「予選からタイムを出すことが来年への課題です」と語った。女子100m背泳ぎB決勝には2人が進み、200mで3位の表彰台を獲得した
山下安輝(3年 山口・豊浦)が3位、瀬下茉莉(1年 愛知・豊川)7位となった。400m個人メドレーの
青木健紘(4年 香川・高松工芸)はラストスイムでB決勝5位、レース後、万感の思いで涙が溢れ出て来た、「自分は山梨学院に来て本当によかった、神田コーチをはじめ周りのみんなのおかげで人間として成長することが出来ました。おかげで故郷の香川県警への就職が決まりました、幸せ者です」と話した。同じくラストスイムの200m平泳ぎB決勝6位の
大林稜典(4年 山口・下関南)は「自分は速くない選手だったがコーチや周りのおかげで決勝やB決勝を泳げる選手になりました。故郷の企業に就職が決まりました、水泳は難しくて、苦しいけれど、楽しい、一生の友です」と物静かに語った。また、最終日最終種目の800mリレーは男女ともにB決勝に進出した。
女子800mリレーの4人(本間あかり・松浦由佳・竹迫麻澄・岩永有加)は抜群のチームワークでB決勝1位を獲得した。
男子800mリレーの4人(江原騎士・石橋翔・柴田伍郎・青木賢)は江原を中心に健闘しB決勝5位となった。また、この日の400m個人メドレー表彰式では、この種目大会2連覇した
OG遠藤(旧姓坂井)菜穂子さんがプレゼンターを務めた。遠藤さんは水泳部時代のチームメートと結ばれ山梨で新婚生活を始めた。
3日間の大会を振り返り、
神田忠彦監督は「選手層が薄くなった中で、出場した各選手は非常に良く頑張ってくれました。女子は少ない人数でよくシード権を奪還してくれましたし、男子も3年の甲斐耕輔君が他の大学が驚くほど伸びてくれました。江原君は力があるのに個人種目では力を発揮できませんでした。調子に心が左右されてしまうメンタル面を直して行かないと世界には行けない」。各選手の健闘を称えながらも、あえてエースの江原には苦言を呈していた。
この大会はラストスイムの4年生たちが大健闘した。最終日に健闘した青木と大林だけではない、巽彩華も、原田侑弥も、岩永有加も、青木賢も、高校時代はみんな無名選手だった、ひたむきに水泳と向き合い、少しずつ、少しずつ自分の力を高めインカレの舞台に立つ選手に成長した。B決勝ながら決勝と呼ばれるレースに進む力をつけた。そして、記録が伸びずにマネージャーに回った金田有加も、上里守も、川津久志も、最初からマネージャーとして笑顔でチームを支えてきた鈴木凌太も、みんなでチームを支え、みんなが人間として成長した。今年のチーム山梨学院が咲かせたのは大輪の花ではない、チーム全員の心にいつまでも残る、小さな花をたくさん咲かせた。
山学大勢の全成績
文(M.T) カメラ(平川大雪)2014.9.7
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アルバム松浦選手 |
アルバム竹迫選手 |