山梨学院中学校で新しい学校作りが進められている。生徒それぞれが興味や関心を抱いた分野について、1年間かけて自由な発想で創作活動や研究活動に取り組む「パーソナルプロジェクト」に続き、この秋には、伝統行事である輝学祭に向けて、9月11日から23日までの間、文化的・芸術的・科学的活動についてチームで取り組む「オータムプロジェクト」と命名された教育プロジェクトが実施されている。1年から3年の学年の枠を越えて取り組むプロジェクトで、土日を除く実質8日間の期間中、午後からの時限を使いそれぞれのチーム活動と各クラス合唱の練習に励んでいる。男子生徒8人で取り組む「エアバンド」チームや、総勢39人で公演する「劇」チームなど、13チームが最終日 23日の輝学祭ステージでそれぞれの練習成果を発表する。
山梨学院中学校が、新たな教育プロジェクトをスタートさせた最大の要因は大学入試制度の変化にある。早ければ数年後に実施される可能性がある改革案の核となるのが「到達度テスト」、アメリカをはじめ世界各国ですでに導入されているもので、目指すところは「暗記偏重入試」からの脱却。中学校教育もその流れに対応したものへと変わる必要があり、県内のどの中学校よりもいち早くグローバル時代に対応した新しい学校づくりに取り組み始めた。
目指しているのは、「受験に対応しうる知識型の学力」、「思考力や表現力を重視した活用型の学力」、「総合的な人間力」の3つの力を伸ばす教育。3つの力を高いレベルで同時に進めていく教育システムの一つとしてスタートさせたのが、生徒それぞれが興味や関心を抱いた分野について、1年間かけて自由な発想で創作活動や研究活動に取り組む「パーソナルプロジェクト」であり、今回の「オータムプロジェクト2014」。オータムプロジェクトの狙いは、1、「先生が教えること」から「生徒が学ぶこと」へのシフト。2、学年の枠を越えて学習に取り組み、共同で追求することの楽しさを味わうこと。3、輝学祭での学習成果の発表を通し、伝える力を育むこと。この3つに力点を置いて いる。6月から生徒と教師が話し合い、テーマ決定やチーム活動の立案・編成・準備を進め、9月11日からチーム活動を開始させた。一方通行の授業から双方向授業への脱却、生徒だけでなく教師にとっても自らの新たな教育スタイルを研究する場になっている。
チーム活動の内容は、「応援団」、「エアバンド」、「アート」、「楽器づくり」、「身体表現」、「ア・カペラ」、「劇」、「室内楽」、「動画制作」、「お笑い」、「エコハウス」、「群読」、「影絵」の13チーム、最終日23日の輝学祭で正午からこの順番で発表を行い、休憩をはさみ、午後3時過ぎからクラスごとの合唱発表が行なわれる。男子生徒8人(1年生2人・2年生3人・3年生3人)で取り組む「エアバンド」のリーダー小林大空君は「弾かないけど楽器を持って演奏するふりをして1・2年生は歌います、完成度の高いパフォーマンスをしてみんなを驚かせたい」と張り切っている。また39人で取り組む「劇」チームは、芙蓉ホールで練習に励む班と大道具や小道具を製作する班に分かれて発表準備に取り組んでいる。
山梨学院中は、今年度から山梨学院高校への進学ルートを複線化させることにした。山梨学院高が来年度から従来の特進と英語科を合体させ、超難関大学への現役合格や海外大学への留学も視野に入れた「特進コース」と、部活動と勉学を両立させながら大学進学を目指す「進学コース」に改編されるのに合わせ、希望のいずれにも進めるよう中高一体で生徒の夢や能力を育む進路指導方針に改めた。新たな取り組みとしてスタートした「パーソナルプロジェクト」、「オータムプロジェクト」などのプロジェクトとともに、従来のクラスごとの教室に教師が来るのを待つ授業スタイルから、教科ごとに設けられた特別教室に移動して学ぶ「教科センター方式」を県内で初めて採用、インタラクティヴ・ プロジェクター授業を実施するなど、自ら知を求める学習者を育成する新時代の学校づくりに取り組んでいる。
文(M.I)2014.9.19
オータムプロジェクト(写真提供:山梨学院中学校)
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