平成26年度全日本学生柔道体重別選手権大会2日目(最終日)の9月28日、東京・日本武道館で男子重量級3階級、女子軽量級3階級の戦いが行われた。初日の山学大勢は3人が決勝に進出し女子78超級の井坂希望が優勝、井上愛美準優勝、男子73kg級宮山翔多が準優勝したが、2日目は決勝進出者を出せなかった。しかし、男子2人、女子2人が準決勝まで進んだ。特に女子52kg級の塚田紗矢は膝に大怪我を負い手術を経験した4年生、最終学年の秋に挫折を乗り越えて3位の表彰台に上がった。この大会では、1年生の新星が次々に現れた、女子57kg級出口クリスタ、男子100超級藤井靖剛の2人が3位に入り、男子100kg級の春日良太と前野玲音、女子57kg級月野珠里の3 人が5位に入った。また、3年の100kg級飯田健伍が3位となった。
≪女子52kg級 塚田紗矢(つかだ さや 4年 国学院栃木)≫
52kg級塚田紗矢は、高3の時に春の高校選手権と夏のインターハイの2冠を獲得、大学1年の時には韓国ジュニア国際大会優勝など輝かしい実績を作ったが、膝に大怪我を負い手術、療養して復帰したがなかなか勝てなくなった。ずっと57s級で戦ってきたが減量に取り組み、この大会には52kg級で出場した。初戦から強敵との組み合わせばかりだったが佐々木愛(帝京大)、黒木美晴(環太平洋大)らを次々に下し準決勝に勝ち上がった。準決勝では小松柔(環太平洋大)と戦い、たった指導1の僅差で敗れた。その小松は決勝で1本勝ち優勝をした。塚田紗矢選手は「準決勝までは自分の動きが出来ましたが、準決勝は組み手争いに終始し、技が掛けれなかった。3位になれたことはうれしいが、優勝したかったです。怪我をしたり、団体戦は不甲斐ない成績ばかりで迷惑をかけたりして来ました、最後の年なので、もし団体戦に出させてもらえたらチームに貢献したい」。苦しい時を乗り越えてきた塚田は、表彰後、そっと目頭を押さえていた。
≪女子57kg級 出口クリスタ(1年 長野・松商学園)≫
57kg級出口クリスタは、長野県塩尻市出身、父親はカナダ出身で母親は日本人、3歳の時に自宅近くの道場で柔道を始めた。松商学園高1年の時に52kg級でインターハイ優勝、2年からは階級を57kg級に上げ、3年の時に全日本ジュニアで優勝、中学の時から時々出稽古に来ていた山学大に進学した。初戦から素早い動きを見せていたが準々決勝の山河茉莉(環太平洋大)戦では勝利目前で腰が引けて指導を取られゴールデンスコア(GS)戦終了直前までの約10分間戦いようやく勝利した。準決勝は優勝した趙睦煕(埼玉大)に指導1の僅差で敗れ3位となった。出口クリスタ選手は「準決勝は自分の組み手になることが出来ませんでした。相手のペースにはまったまま時間が過ぎてしまい、課題が残る負け方になってしまいました。大学は高校とは違うなと感じています。もっと力強くなって組み手争いに勝てるようにならないといけない、世界ジュニアに出させてもらえるので、そこでも力をつけて来たい。来年までに少しずつ課題を克服して優勝できるようにしたい」。新星は成長を期している。
≪男子100超級 藤井靖剛(ふじい せいごう 1年 富山・桐蔭学園)≫
100超級藤井靖剛は、高校は神奈川の桐蔭学院だが富山県高岡市の出身、中学時代に通った柔道クラブの先輩には佐野賀世子・長内香月がいる。全日本合宿で知り合った鈴木誉広と飯田健伍に魅かれ山学大に入学した。伝統校の天理大や東海大の強敵を倒して準決勝に進み佐藤和哉(日大)と対戦した。最初に両者に指導、次いで相手に指導が一旦は出たが取り消され、残り17秒に指導を取られ惜敗した。藤井靖剛選手は「自分の柔道スタイルは大内刈りや内股などで投げる柔道です。関東大会で左肩を痛めて練習できなかったが、足腰の強化を怠らないようにして備えました。今日は最後までやり切る柔道が出来たので良かったと思います。最終目標は全日本選手権優勝なのでそこに向かって励んで行きたい」。逞しい1年生が入って来た。
≪男子100kg級 飯田健伍(いいだ けんご 3年 東京・崇徳)≫
100kg級飯田健伍は、インターハイ100超級優勝の実績を持つ。4年前に卒業した飯田有香の弟、姉の勧めもあり山学大に進学した。1,2年は100超級で出場したが、体重108kgに対し対戦相手は130kg以上もある巨漢選手ばかりでなかなか勝てなかった。周りの勧めもあり、100kg級に減量した。準決勝で石内裕貴(天理大)と対戦し、5分では決着がつかずGSに突入、主審が一旦有効とした技を取り消され、最後に指導を受けて指導1の僅差で敗れた。飯田健伍選手は「準決勝の相手は何度も対戦したことがある相手で、組み手がうまいので競る試合になることは分かっていました。最終的に競り負けたので改善の余地があります。超級では身長が小さいので100kg級に転向したが、まだ100kg級の柔道が出来あがっていない、これから自分の100kg級の柔道を作り上げて行きたい」。飯田は100kg級の日本一を目指す。
その他の山学勢は、優勝が期待された女子48kg級山崎珠美(3年 三浦学苑)は、奥襟をつかみにいったところを抱きかかえられて返され初戦敗退という悔しい結果になった。出口クリスタとともに女子57kg級に出場した鶴岡来雪(2年 愛媛・新田)と月野珠里(1年 愛知・大成)の2人が準々決勝まで進み5位、男子100超級の鈴木誉広(4年 青森・弘前実)は優勝候補を倒しながら次の準々決勝で敗れ悔しい5位、100kg級の春日良太(1年 神奈川・東海大相模)と前野玲音(1年 石川・修徳)の2人の1年生は嬉しい5位などとなった。この大会で5位以上になった選手には、柔道日本一を決める11月の「講道館杯全日本柔道体重別選手権」の出場権が与えられる、初日の8人に続き、2日目は9人が講道館杯出場権を獲得した。
山部伸敏女子監督は「予想していた優勝者数、入賞者数に届きませんでした。52の塚田は4年最後なので優勝させたかった、48の山崎は残念、この結果を厳しく受け止めて何としても体重別団体につなげて行きたい」と語った。西田孝宏総監督は「優勝はたった一人なので良くはなかったが、男子は1年生の藤井・春日・前野が優勝候補と競って頑張り1年生に関しては来年につながる試合が出来た。女子の57s級は3人とも優勝する力があった。超級が2年連続山学同士決勝だったのは大きなインパクトがあった」と大会を総括した。
柔道の勝負は一瞬で天と地が変わる非情な世界だ。優勝が期待された山崎も鈴木も飯田も一瞬の違いで優勝に手が届かなかった。1年の出口・藤井・春日・前野・月野は最初のステージで輝きを放った。2年の宮山と長内は表彰台を得た。1,2年の頃は全く弱かった3年の矢澤と上村は努力を重ねて関東を突破し全国の舞台に立った。井坂は3年目に生涯初の優勝を勝ち取った。4年最後の塚田は挫折を乗り越え、井上は怪我を乗り越えて表彰台に上がった。力を出し切れたものもいれば、出し切れなかったものもいた。聖地の畳には上がれず応援席で声を枯らしたものもいた。山学大柔道部員は、誰もが大会の体験を心の糧にして、樹徳館で稽古に励み、一瞬を乗り越える力をつける。
文(M.T) カメラ(平川大雪)2014.9.28
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