山梨学院パブリシティセンター
第十六回酒折連歌賞 表彰式
〜大賞の渋谷史恵さんら5人に表彰状授与〜
〜連続10年以上応募の学校団体も表彰〜

第十六回酒折連歌賞の表彰式が2月20日、山梨学院広報スタジオで行われた。一般部門大賞・文部科学大臣賞の渋谷史恵さん(宮城県多賀城市)、山梨県知事賞の三枝新さん(山梨県立中央高)、山梨県教育委員会教育長賞の山本高聖さん(山梨県立甲府東高)、甲府市長賞の永澤優岸さん(神奈川県川崎市)、アルテア賞部門大賞・文部科学大臣賞の安藤智貴さん(山梨県立吉田高)の上位5人に表彰状が贈られた。また、今年度は連続応募年数10年以上の学校団体の表彰も合せて行われ、各学校の代表者に表彰楯が贈られた。一般部門大賞・文部科学大臣賞を受賞した渋谷史恵さんは「毎年応募していますが今年もだめだろうと思いながらホームページをチェックしていた時に受賞の連絡を受け、とても驚きました」と受賞の喜びを表現した。


酒折連歌賞は、5・7・7の問いの片歌に対して、答えの片歌を5・7・7で返す歌遊び。倭建命(日本書紀では日本武尊)ゆかりの連歌発祥地甲府市酒折宮にちなみ1998年に創設され、今年度で第十六回を数える。一般部門の大賞(文部科学大臣賞)・山梨県知事賞・山梨県教育委員会教育長賞・甲府市長賞に加えて、高校生以下を対象に将来楽しみな才能を見出すことを目的に特別賞としてアルテア賞部門が設けられている。今年度からアルテア賞の大賞にも、文部科学大臣賞が贈られることになった。表彰式に招かれた上位5人の句に加え、入選(10句)、優秀賞(12句)、優良賞(54句)、アルテア賞佳作(19句)の合計100選が選出された。また、今年度は、連続応募年数10年以上の学校団体の表彰も行われ、16年連続の甲府東高・甲府城西高・富士河口湖高・甲府商業高・山梨学院高・山梨学院中、13年連続の都留高、10年連続の韮崎高・甲府西高・富士北稜高・東京都文京区立第六中の11校の代表者に表彰楯が贈られた。

主催者を代表して挨拶した古屋忠彦山梨学院大学長は「連歌という文学はファーストではありません。のんびりというのかゆとりをもってというのか、ゆっくりとしたものです。そういうものを大学の歴史の中で取り込み、日本を代表する先生方に選考委員になって頂き、本校OGの直木賞作家辻村深月さんにも加わってもらいました。誇り高い文学賞として定着してきたことをうれしく思います」と語った。川手千興酒折連歌賞実行委員長は「入賞者から届いた文書の中に『私は問いの片歌を壁に貼り、常に考えるようとしていました』という文言を見つけ、入賞する人の作品は相当の努力とセンスがあって実るのだなと感じました。この文学賞は応募者の73%が10代であることが大きな特徴です。全国の中学・高校で授業の一環に組み入れて頂いており、今年度は10年以上連続して団体応募して頂いている学校に表彰状を贈ることにしました」と学校関係者への感謝を表した。選考委員を代表し三枝エ之選考委員長が「自宅に段ボール箱が5つも届く酒折連歌の選考が一番大変だが一番楽しい。問いかけた言葉にいったいどんな言葉が返ってくるのか毎回ワクワクします。今年の大賞受賞句には脱帽しました。明日松山の正岡子規記念館で講演しますので、その講演で子規に正面を向かせた人がいると報告します」とユーモアを交えて講評した。一般部門大賞・文部科学大臣賞の渋谷史恵さんは「10年前から毎年投稿していますが、今年もだめだろうと思いながらホームページをチェックしていた時に受賞の連絡を受けてとても驚きました。来年はないと思いますが、これを励みにこれから続けて行きたいと思います」と受賞の喜びを表現した。

◎上位受賞者5人の感想◎

☆【一般部門】大賞・文部科学大臣賞 渋谷史恵さん☆
(問いの片歌3、しおりする文庫本には永遠がある)
横顔の子規がくるりと正面を向く

渋谷史恵(しぶや ふみえ)さん、昭和42年6月7日生まれ、47歳、宮城県多賀城市在住、「壁に問いの片歌を貼り、常に考えるようにしていました。“文庫本”や“しおり”から現代ではないずっと古い時代が浮かび、古書店が浮かび、そこに静かに雨が降っている様なモノクロの世界になり、そこに何故か、モノクロの子規の横顔が浮かびました。100選に入れたらいいなと思っていたので、お電話を頂いて上位の賞の候補になっているというだけでも驚きでしたのに、まさか大賞とは・・・。短歌や俳句を詠んでいると、時々、思いがけない作品が生まれることがあります。でも、それこそが自分本来の感性や感覚だと気付かされます。短歌や俳句は風船のようなもので、いつの間にか見失っていた 自分の感性を、もう一度この手に握り直すことができる様に思うのです」。

☆【一般部門】山梨県知事賞 三枝 新さん☆
(問いの片歌4、みそ汁にご飯にそえてこの皿二枚)
私にはビタミンと鉄愛が足りない

三枝 新(さいぐさ あらた)さん、1996年2月11日生まれ、19歳、山梨県立中央高4年 笛吹市石和町在住、「学校の授業の課題で応募することになり、一つ作ると点がもらえるということなので、授業中になんとなくこの句を思いついて、先生に提出しました。この様な賞を取ったことなどなく、今回も何もないだろうと思っていたので、受賞の知らせを受けた時は信じられませんでした。今回のことで自分でもやれば出来るんだと自信になりました。自分はマイペースなタイプですが、高校卒業後は大学に進むことが決まったので、自分の能力を信じて、ひらめきを大切にしながら、これからも色々なことに挑戦したいと思います。大学で様々なことを学び、将来の役に立てたいです」。


☆【一般部門】山梨県教育委員会教育長賞 山本高聖さん☆
(問いの片歌3、しおりする文庫本には永遠がある)
白球が雲に重なる瞬間がある 

山本高聖(やまもと たかまさ)さん、1997年8月22日生まれ、17歳、山梨県立甲府東高2年 甲府市小松町在住、「学校の夏休みの課題で答えの片歌を作りました。問いの片歌の“永遠がある”という言葉を見たときに“瞬間がある”という言葉を入れようと考えました。そのあとに、瞬間を表すモチーフは何がいいかを考えました。自分は小学校、中学校ではサッカー部に所属していましたが、夏の甲子園大会中だったこともあって、野球をモチーフに『白球が雲に重なる瞬間がある』という答えの片歌を思いつきました。この歌の中で自分が気に入っている所は、瞬間が永遠にもなり得るというところで、甲子園に出場した選手にとっては試合のこと、その瞬間のことが想い出になり、永遠に心の 中に残り続けるだろうと思えることです。これからも様々な文学作品に親しみ、様々な歌を作って行きたいと思います」。

☆【一般部門】甲府市長賞 永澤優岸さん☆
(問いの片歌1、栃の実をつぶてのように握りたるまま)
秋空は静かな指を知っているから 

永澤優岸(ながさわ ゆうか)さん 昭和57年3月21日生まれ、32歳、会社員、青森県弘前市生まれ、東北大学文学部卒、川崎市在住。「私は歌を始めて5年になりますが、このような賞を頂くのは初めてで喜びもひとしおです。今回の賞で気付かされたことは、歌を通して人の心とつながる、見たこともない大きな世界に行くことが出来るということでした。ホームページに掲載して頂いた私の歌への講評には私の意識をはるかに超えた、美しく広々とした世界がありました。歌以外に芸はなく、割と多作で、平均して一日に三十首作っています。元々自分一人のために引きこもりのように細々とやってきていましたが、今回の思いがけない受賞は私にとってとても大きな励みになりました。喜びに舞い 上がっていますが、一方では、これからは歌に真摯に向き合わなければならないと引き締まる思いもしています」。

☆【アルテア賞部門】大賞・文部科学大臣賞 安藤智貴さん☆
(問いの片歌3、しおりする文庫本には永遠がある)
終わりゆく本のページとはじまるわたし 

安藤智貴(あんどう ともき)さん、1997年6月10日生まれ、17歳、山梨県立吉田高2年 富士河口湖町勝山在住、「このような大きな賞を頂いたことはなくて、自分に起きていることが最初は信じられませんでした。今日、授賞式に参加させて頂いて賞状と楯を頂き、その実感がこみ上げてきました。私が返した歌には、普段読書する時の思いを記しました。好きな本を読むと引き込まれて行くけどだんだん終わりが近づいてきて必ず終わりが来る。けれど、その本の内容は私自身の糧となり、自分の人生を作って行くのだという実感をこの歌に込めました。酒折連歌のホームページで辻村先生の講評を見て、自分の考えていることに共感して下さっていてとても光栄に思いましたし、自信にもなりま した。今はエンジニアになるという将来の夢に向けて日々努力しています。趣味の時間はあまり取れていませんが、読書して本の世界に没頭するのも好きです。こういう日本固有の文化にも親しんで行きたいと思います」。

上位受賞者5人は、表彰式の後、日本の連歌発祥の地酒折宮を参詣、受賞の報告を行い、それぞれがさらなる精進を誓っていた。

文(M.T)カメラ(藤原稔・平川大雪)2015.2.20

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