全日本学生レスリング選手権(インカレ)最終日
~フリー70㎏級・木下貴輪初優勝~
~吉川、乙黒は準優勝。山学勢各階級で善戦~
4日間の日程で行われてきた「文部科学大臣杯2015年度全日本学生選手権大会」(インカレ)は、8月21日最終日を迎え、フリースタイル8階級の3戦から決勝戦まで試合総数168試合が行われ、すべての日程を終えた。前半の2日間、グレコローマンではまったく精彩のなかった山梨学院勢は、フリースタイルで雄飛の手応えを掴んだ。昨年1年生で準優勝した70kg級の木下貴輪選手(2年)が初優勝を飾り、125㎏級の吉川裕介選手(3年)と61㎏級の乙黒圭祐選手(1年)が準優勝を獲得した。他に57㎏級の坂本京太選手(1年)が将来が期待されるベスト8に入る活躍を見せた。
今大会は、9月にアメリカで行われる世界選手権に出場するフリースタイル57㎏級・高橋侑希選手(4年 いなべ総合)が大会に向け、調整中のために欠場。また、ブラジルで開催された世界ジュニア選手権のフリースタイル61㎏級で銀メダルを獲得した藤波勇飛選手(1年 いなべ総合)も19日の帰国直後のため欠場した。また、重量級で優勝が期待されていたボルチン・アレッグ選手(3年 カザフスタン)は膝の故障のため、グレコ、フリーとも欠場した。3人とも各階級で優勝候補のため山梨学院にとっては盛り上がりに欠ける大会になりそうだったが、主役不在でも山梨学院大フリースタイル勢は次につながる結果を残した。
大会最終日のフリースタイル。昨年1年生で準優勝した70㎏級の木下貴輪選手(2年 鹿屋中央)は、今大会も昨年と同じ決勝戦の相手、大学二冠王者の多胡島伸佳(早稲田大)と対戦した。木下は今大会体の切れも良く、準々決勝以外は全てテクニカルフォールで勝ち上がってきた。決勝戦は、お互い手の内を知り尽くした相手の出方を窺い静かに展開するも、木下は徐々に足を狙い攻勢を掛けた1P後半、バックを取り2ポイントをリード。2Pに入ると相手も積極的に攻め込み2度場外に押し出され、2-2の同点に追いつかれた。終了間際に相手が最後のプレーで再び場外に押し出そうとしたと同時に試合終了。ビッグポイントを木下が取っていたため、木下の勝利と思われた。相手は判定不服としてチャレンジを申請したが認められず3-2の僅差で勝利、初優勝を呼び込んだ。木下貴輪選手は「疲れました。昨年はまったく歯がたたなくて、テクニカルフォールで負けた相手だったでしたけど、内容はそんなに悪くはなかった。タックルに入って、その後の処理ができなかったが、もう少ししっかりやっていれば楽に勝つことができたかな」と手応えを口にした。
準優勝の125㎏級・吉川裕介選手(3年 霞ヶ浦)の対戦相手は学生二冠王者の実力者・山本康稀選手(日大)。相手に不足は無しと挑んだが相手が強かった。テクニカルフォールで完敗した。吉川裕介選手は「準優勝はうれしいですけど、決勝では相手が強くて不甲斐ない試合をしてしまい、もう一つ自分の実力不足だと思いました。初めにポイントを取らせ過ぎたことが敗因です」と反省した。初めてのインカレで準優勝した61㎏級・乙黒圭祐選手(1年 帝京)は決勝戦で天皇杯3位の有元伸吾選手(近畿大)と対戦。6月の明治杯でも対戦し負けた相手だ。初めリードするも逆転され8-13で敗退した乙黒圭祐選手は「悔しいです。初めに6ポイントとって勝てると思ったことと、点はもう少しいっているんじゃないかと思っているところで気持ちを切り替えられなくて、後半バタバタと行ってしまった」と明治杯と同じ負け方をした後悔を口にした。「もう少し体力をつけてリベンジします」と明日に誓った。57㎏級では新鮮な逸材も登場した。坂本京太選手(1年 高岡向陵)は初めてのインカレ出場でベスト8に入り、高橋侑希選手の欠場と今大会優勝候補の一人と目されていた小柳和也選手(2年 韮崎工)の不調を埋める活躍をした。坂本京太選手は「1年生でこの結果を出せたのは、素直にうれしいです。まだまだ動きが硬いと思うので、今後の練習で強化していきたい」と初々しく話した。
他の山梨学院勢は、74㎏級・本村匠選手(3年 浦添工)が準々決勝に進んだが敗退し、昨年の3位から後退ベスト8で終わった。61㎏級の武田壮史選手(4年 霞ヶ浦)、65㎏級の初見智徳選手(3年 関宿)、86㎏級の石澤誠悠選手(1年 霞ヶ浦)、牛水瑞貴選手(1年 鹿屋中央)は4回戦に進み、ベスト16になった。
試合後、小幡邦彦コーチは「今回は確実に勝てる3人が欠場して、他のメンバーで臨み、正直上位は目指せても優勝はきついと思ったんですけど、3人の若い選手が決勝行ってくれて、木下が優勝したのは昨年負けてから作戦を練って、それが上手くいって勝てたんだろうと思います」と大会を振り返った。「目標は、2年続けて苦い思いをしている内閣総理大臣杯をぜひ獲得したい。今回良かった選手は研究もされるので作戦も立て直して次の大会に臨みたい」と明日を見据えた。
山梨学院大学レスリング部の次の目標は、昨年、一昨年2年連続で準優勝に甘んじた内閣総理大臣杯全日本大学選手権優勝。3か月後の11月に向け、新たなスタートを切る。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2015.8.21