テニスインカレ 決勝
~久次米夏海は決勝で西本恵(慶大)に敗れる~
~インドアとインカレの二冠はならず準優勝~
テニス学生日本一決定戦「平成27度全日本学生テニス選手権(インカレ)」は最終日の8月22日、岐阜市・岐阜メモリアルセンターで男女シングルス・男女ダブルスの決勝が行われた。準決勝でこれまで一度も勝てなかった早大のエース吉冨愛子に打ち勝ち、創部10年目の節目の年に山学大テニス部女子史上初のインカレ決勝に進出した久次米夏海(4年)は、慶大のエース西本恵と対決した。対戦結果は、3-6、3-6、ほぼ互角に戦いながら勝負所で西本にポイントを許し優勝はならず準優勝となった。久次米は昨年10月の国体で同級生の本郷未生と組んだダブルスで山梨に初優勝をもたらし、12月の「全日本学生室内選手権(インドア)」で創部初の学生チャンピオンの称号を獲得した。インドアとインカレの二冠はならなかったが、大学4年間で学生テニス界を代表する選手に急成長した。
テニスという競技は、選手の心と観客の心が最も近いスポーツだ。選手の心は一打ごとに変わり、その心の動きは、見ている観客の心にひしひしと伝わってくる。ときには2時間・3時間・4時間にも及ぶ競技なのに、観客が戦いに引き込まれるのは、選手の心の中の葛藤を、自分の心の中で同時体験できるからなのかも知れない。久次米夏海選手(くじめ なつみ 4年 大阪・城南学園)にとってはインカレ覇者となる最初で最後のチャンス、決勝の舞台に立った久次米の心は、最強の敵に全力で挑んだ準決勝の時の心とは明らかに違っていた。優勝できるかも知れないという気負いからか、動作の全てが西本より早かった。5分も早くセンターコートに入り西本を待った、観客席からは宮本武蔵を待つ佐々木小次郎のようにも見えた。ベンチから立ち上がってコートに向かう時も常に早かった、プレーを始める時も常に一瞬待たされた、久次米の焦りを誘った西本の方が試合巧者だった。第1セットの序盤は互いに競りながらも久次米の方が圧していた。しかし、第6ゲームで30-40からダブルフォルトするミスを犯してブ レイクされ、流れを西本に渡してしまい、第1セットを3-6で落とした。第2セットは3-4で迎えた第8ゲームでブレイクチャンスを向かえたのだが、デュースの末にキープを許し、逆に一気に瀬戸際に追い詰められ、第2セットも3-6とされ西本の圧力に屈した。
全日本学生テニス選手権 準決勝(8/22)岐阜市・岐阜メモリアルセンター | ||||
---|---|---|---|---|
S | 久次米夏海 (山学大) |
3-6 3-6 |
西本 恵 (慶大) |
山学大史上初の インカレ準優勝 |
試合後の久次米夏海選手は、応援に駆け付けた先輩たちに慰められて涙をぬぐいインタビューに応えた、「西本さんのボールは質が良くて、少しずつ圧されてミスが多くなり、屈しました。来週のリーグ戦ではボールに屈しないで打ち返します」と泣いたあと無理やり作った笑顔で雪辱を誓った。久次米は卒業後はラケットを置くつもりでいる。最後のリーグ戦でチームに貢献するショットを放つ決意だ。三好勲コーチは「昨日と違い100%チャレンジャーではなかったですね、久次米は西本のやることは分かっていて、西本も久次米のやることは分かっている同士の戦い、先にポイントとなって形になったのは西本の方で、そこで一歩引いて迷いながらのプレーになってしまいました」と敗因を分析した。本郷未生主将は4年間ずっと一緒に励んできた久次米の健闘を称え、「自分としては、天国と地獄の両方を見たインカレになりました。来週のリーグ戦は自分にとっても、久次米にとっても、自分だけのものではないので、キャプテンとしてみんなを引っ張り、全員の力で勝利をつかみます」と話した。久次米も本郷も最後のリーグ戦で完全燃焼する決意だ。
山学大テニス部女子は高校時代の実績が少ない、いわば無名選手集団。横根テニス場で三好勲コーチの指導の下で厳しい練習を重ね、一人一人が力を伸ばし、創部まだ10年目ながら、100年以上の歴史と伝統を持つ早大・慶大などの名門大学と肩を並べるチームに急成長した。後輩を応援するために相模原から岐阜に駆け付けた2年前の主将田村実里さん(エイムサービス所属)は、「昨日の夜、決勝に出るって聞いて、驚いて飛んできました。1・2年の頃の久次米が悩んでいたのを見ていたので、よくここまで来たなと思います。後輩たちが強くなったのは、山学の環境のおかげだと思います。リーグ戦ではチーム全員で力を合わせて、早稲田を倒して、慶応を倒して、王座に出て日本一になってほしい」と後輩たちにエールを贈った。
学生テニス界最高峰の関東学生リーグは、休む間もなく、8月27日(木)から9月8日(火)まで、1部校は有明テニスの森を舞台に開催される。インカレを終えた山学大チームは、出場選手は全力プレー、応援に回る部員は全力応援を合言葉に、短期決戦の団体戦をチーム全員で戦う。
文・カメラ(M.Ⅰ)2015.8.22