全日本学生柔道体重別選手権大会 最終日
~女子57㎏級月野が決勝に進出、優勝ならず~
~今大会、17年ぶりに優勝者ゼロに終わる~
「平成27年度全日本学生柔道体重別選手権大会(男子34回・女子31回)」最終日が10月4日、東京・日本武道館で行われた。個人戦の学生日本一を決める大会2日目に山梨学院大学からは男子5人、女子8人が出場した。最終日は男子が90・100・100㎏超級の重量級、女子は48・52・57㎏級の軽量級の男女各3階級の戦いが行われた。この内、山梨学院勢は女子57㎏級の月野珠里(2年)がただ一人決勝進出を果たした。決勝は残り時間20秒までリードし、優勝目前に逆転され惜しくも準優勝。同じ57㎏級の出口クリスタ(2年)と益子楓彩奈(2年)と48㎏級の山崎珠美(4年)が準決勝に進出し3位を獲得した。男子はただ一人100㎏級の飯田健伍主将(4年)が準決勝でまさかの反則を取られ、3位で終わった。絶好調で優勝候補筆頭に挙げられていただけに悔やまれる。山梨学院大は今大会、決勝まで駒を進めた選手が僅か3人。しかも優勝者がゼロという厳しい大会になった。
女子57㎏級の山梨学院勢は優勝者が出る勢いだった。Aパートに益子楓彩奈と月野珠里、Bパートに出口クリスタと鶴岡来雪(3年)2人ずつが出場。初戦3回戦で鶴岡来雪が敗れたが、他の3人は順当に勝ち上がり、Aパートの2人が準決勝で同大同士で対戦した。Bパートの出口も危なげなく準決勝に上がった。結果的には出口の準決勝敗退で叶わなかったが、準決勝、決勝で山梨学院同士の夢の対戦が実現するはずだった。
◆《女子57㎏級 準優勝 月野珠里(2年 愛知・大成)》
月野珠里選手は全国中学校柔道大会3位、2013年、高校3年のインターハイと全日本ジュニア柔道選手権大会で3位に入賞。今年7月ポーランドジュニア柔道国際大会で5試合中4試合で一本勝ちを収め、国内、海外通じて初の優勝を飾った。試合は、初戦2戦目を締め技で一本勝ちを収め、2回戦を有効で無難に切り抜け、準々決勝では寝技で1本勝ち準決勝に進出。ここで同友の益子楓彩奈と対戦した。月野珠里選手は「いつも一緒に練習しているので手の内は分っていて、とりあえず指導1でもいいから勝ちたいと思い、自分から前にでたのが良かった」と話した。どちらも一歩も譲らず指導3の僅差で決勝に進出した。決勝は、臼井杏(淑徳大)と対戦。終始月野ペースで攻撃、相手に指導を与え逃げ切るかと思われた終了20秒前、仕掛けを返され有効を取られ優勝を逃してしまった。「悔しいです。優勝できると思ったから負けたんです。甘さが出ました。いつも全国大会で2番や3番で日本一になったことがなくて勝ち切れないところが自分の弱さだと思う」と課題を挙げた。
◆《女子57㎏級 3位 出口クリスタ(2年 長野・松商学園)》
出口クリスタ選手は幼少の頃から柔道を始め、高校の1年時に52㎏級でインターハイ優勝、2年からは階級を57㎏級に上げ、3年の時に全日本ジュニアで優勝。山梨学院大に進学してからも全日本学生柔道優勝大会で2度優勝するなど華々しい実績を残してきた。試合は昨年3位の雪辱を果たすべく強い気持ちで臨んだ。準決勝までの3試合を相手に隙を見せない速い動きですべて1本勝ち勝利したが準決勝の臼井杏(淑徳大)との対戦は、激しいせめぎ合いになった。僅かに出口が優勢に思われるが決定的な差が生まれないまま4分が経過GS(ゴールデンスコア=延長戦)に。ここでも一進一退の攻防が続き延長4分35秒、一瞬の出来事だった。出口の身体が畳に転がされた。1本負けを喫した瞬間だった。出口クリスタ選手は「優勝を狙ってました。準決勝のGSで負けるということは自分の気持ちの負けかなと。根性で負けたと思ってます」と淡々と話した。「次は今月末に団体戦があるんですが、全部勝ってチームに貢献した後に、講道館杯で優勝できるように頑張ります」とリベンジを胸に、気持ちを切り替えていた。
◆《女子57㎏級 3位 益子楓彩奈(2年 静岡・藤枝順心)》
益子楓彩奈選手は、大学1年時の昨年、関東ジュニアで準優勝、全日本ジュニアで出口クリスタの準優勝に続き3位になり注目を浴びた選手。それまでは、無名に近い選手で大学に進学後めきめきと頭角を現してきた。初戦を難なく1本勝ちで退けると、2戦目はGSにもつれ込む展開に、我慢比べの時間が刻々と過ぎ、4分41秒の大接戦の末、指導1を与え僅差で勝利を掴んだ。3戦目、準々決勝は前大会の優勝者、趙睦熙(埼玉大)との対戦。益子は落ち着いていた。相手の強引な攻撃を冷静に凌ぎ、僅かなチャンスを見逃さず相手の攻めに合わせ有効を呼び込んだ。準決勝は同大同学年の月野。どうしても負けられない一戦。益子楓彩奈選手は「勝ちたかったです。押されていたのでとてもやりずらかった。次はもう一つ上に行けるように頑張ります」言葉少なに語った。
◆《女子48㎏級 3位 山崎珠美(4年 神奈川・三浦学苑)》
山崎珠美選手は高校時代に柔道の恩師に組手は徹底して奥襟を掴み前に進んで行くスタイルを仕込まれた。そのために一か八かのスリリングな柔道で頭角を現して来た。全日本ジュニア優勝や世界ジュニアでも3位に入る実力者である。この大会でも1年時にいきなり優勝、2年の時は3位。昨年は、得意の奥襟を掴みにいった時に返され、初戦敗退した苦い思いがある。山崎珠美選手は「この大会に向けて頑張ってきた。調子も良かった。優勝するために追い込んで練習してきた」と雪辱を果たすことを思い描いてきた。初戦の2戦目から準決勝まで言葉を証明するようにオール1本勝ちで躍動した。準決勝は今大会優勝した小山亜利沙(帝京大)との対戦。先に有効を取られ攻勢に出ようとする時に投げを返され押さえ込まれ“けさ固め”で1本負け。決勝進出はならず3位になった。「有効を取られたのは、研究されていると、試合にでると感じるんですけれど、研究された中で勝たないと駄目なので自分のポイントを取られても一本取ればいいので、最後まで自分の柔道することだけ集中しました」と自分の柔道スタイルを信じていた。
◆《男子100㎏級 3位 飯田健伍主将(4年 広島・崇徳》
飯田健伍選手にまさかが起こった。準決勝で反則を犯してしまった。柔道では、帯より下を攻めてはいけないルールになっているが、それに当たるという。見ていた限りで技を掛ける流れで手が触れた程度。反則という大袈裟なことではないと思われたが、審判の判断では致し方ない。飯田健伍選手は「自分のコンディション的には、優勝できると思っていたので、少し運が悪かったかなと思います」と苦笑いした。5歳から始めた柔道は高校3年のインターハイ優勝で花開いた。大学1年の時に全日本ジュニア優勝を果たし、国際大会での結果も残している。この大会は昨年初めて3位に入賞、優勝できる条件が揃っていただけに残念である。初戦の2戦目、3戦目は1本勝ちで問題なく準決勝に進んだ。相手の後藤隆太郎(慶応大)に対して、落ち着いて組むと徐々に自分のペースで攻め、優勢に試合が進んだ時だった。主審が試合を止め映像判定の末、反則負けが言い渡された。あっけない幕切れに観客も呆然とした。「11月に講道館杯の個人戦があるので、今日当たった選手も出るので、もう1回優勝目指して、今回の失敗をバネに出来ればいい結果がでると思います」とスポーツマンらしくさばさばと話した。
他の山梨学院勢では男子90㎏級・西山光平(京都・京都共栄)、男子100㎏級・春日良太(2年 神奈川・東海大相模)が5位入賞。他の選手は1、2回戦で敗退した。この大会で5位以上(ベスト8)になった選手には、柔道日本一を決める11月の「講道館杯全日本柔道体重別選手権」の出場権が与えられる。最終日は山梨学院大から7人が出場権を獲得し、初日と合わせ、14人が出場する。
試合後、山部伸敏女子監督は「なかなか勝たせてもらえない。最後に勝ち切れないということは、それだけの実力がないということ。西田、山崎、出口、優勝してもおかしくないものを持っているの、誤算でした。一つだけでも取りたかった」と悔しがった。西田孝宏総監督は「試合というのは守りに入ったら駄目ですね。ラスト何秒かで逆転され負けた試合がたくさんあった。精神的な弱さが出ました。勝っていてもそこで守らず、もう一つ『指導』を取るぐらいの気持ちで行かないと。『攻撃は最大の防御』と言いますから」と大会を振り返った。
山梨学院大柔道部は、この大会で2004年以来17年振りの優勝者ゼロとなった。実力がありながら力を発揮できない。精神的なものだけではなく自分に足りないものは何か。問いかける時期に来ている。西田監督は言っていた。「飯田健伍選手は、人の3倍の練習を積んで強くなった。優勝を狙えるようになった。弱い選手は弱いから守るんだ。そこが精神的に弱いのだ」とも。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2015.10.4