全国高校サッカー選手権山梨県大会 決勝
~山学は宿敵・帝三と対戦し3対4と勝ち切れず~
~山学は2点を先制するも選手権予選連覇ならず~

山梨学院高は準々決勝を韮崎高に2対1、準決勝を日本航空高に1対0で勝利し、2年連続6回目の決勝の舞台。対戦相手の帝京第三高とは、今シーズン、県総体決勝、インターハイ予選決勝で対戦し、いずれも敗れており、今季3度目の決勝での対戦。試合会場となった山梨中銀スタジアムのバックスタンドにはユニフォーム型のビッグフラッグ広げられ、1000人を超す山学の大応援団が試合前から選手たちに大声援を送り、選手のモチベーションを鼓舞。12時5分、キックオフの笛が高らかにスタジアムに鳴り響いた。
≪決勝 山梨学院高vs帝京三高≫(11/7) 於:山梨中銀スタジアム | ||
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● 山梨学院高 3 | 前半 2-1 後半 1-3 |
4 帝京第三高 ○ |
得点 前田大然(2点)、大西ジョニー〔山学〕 吉野、梅田、小山、村上〔帝三〕 |
試合は序盤から両校譲らず一進一退の攻防。先制は山梨学院。前半17分、最終ラインのDF吉浜颯(3年)が右サイドからゴール前に長いクロスを入れ、これをFW前田大然(3年)が頭で合わせ、5試合連続のゴールで先制。その後もテンポの良いパス回しで攻勢を強め、22分には、MF阿部優澄(3年)が中盤でボールを受け、左サイドのMF渡邊太一(3年)に送り、MF渡邊はダイレクトでゴール前に入れ、これを走りこんだFW前田が押し込み、2対0と帝三を突き放す。その後、山学はボールをつなぎ、ゲームの主導権を奪い、両サイドから積極的に攻撃を仕掛けるも、帝三DFに阻止され、追加点を奪えない時間が続く。
■攻守の切り替え激しく点の取り合いに
一方で帝三も徐々に攻撃のリズムを作り、前半終了間際のラストプレーのCKでDF大沼士恭(3年)がマークをはずされ、帝三にヘディングシュートを決められ2対1で前半を折り返す。後半に入ると、帝三ペースに流れが傾き始める。15分、最終ラインから縦にテンポ良くパスをつながれ、ゴール前にクロスを入れられ、ヘディングシュートで2対2の同点にされ試合は振り出しに。しかしその4分後、帝三のクリアボールを左サイドにいたMF保井紘和(3年)がダイレクトでゴール前に戻し、長身FW大西ジョニー(3年)が頭で合わせ3対2と再びリード。
■帝三の猛攻で山学は防戦一方に
負けられない帝三は交代カードを切るなど、さらに猛攻を仕掛ける。32分、山学は左サイドからのセットプレーで3点目を献上し、試合は再び振り出しに。追加点を奪いたい山学だったが帝三の攻撃に防戦一方となり、DF陣は体を張って阻止。後半終了間際にはハーフウェーラインから縦に長いボールをペナルティエリア内に入れられ、DF陣やGK三枝慎弥(3年)の反応が遅れ、3対4と逆転を許す。アディショナルタイムは3分、山学イレブンは最後の力を振り絞り、前へ前へとボールを送る。徐々に残り時間は少なくなり、応援団は祈るような気持ちで大声援を送る。だが祈りは届かず、主審の長い笛が小瀬のピッチに響き渡り、山学は3対4で敗れ、2年連続の優勝、“選手権”出場はならなかった。
試合後、吉永一明監督は「全体を通してゲームをコントロールできなかったというのが一番問題だった。ゲームの入りや狙い通りの形で点は取れたのは良かったが、その後自分たちでリズムを悪くした部分が攻撃ではあった。ずっと押されている状況で失点したわけではないので、そこはゲームコントロールの部分だと思います。シンプルにゴールに向かうというプレーは相手の方が上で怖さもあり、我々もその回数を増やすために色々やってきたが出せる場面が少なかった気はします」と試合を振り返り、今後のプリンスリーグ再開に向け「選手たちは本当に悔しい思いをしていると思うので、3年生は最後になるので、後輩たちに残せるものとして、プレミアへの可能性も残っているのでしっかりと顔を上げて、頑張って欲しい と思います」と語った。大沼士恭主将は「前半良い形で2点が取れて、正直みんなに余裕が出てしまった部分があった。また、前半終了間際に自分がマークを外されて失点して、そのワンプレーで後半開始から相手に勢いを与えてしまい、悔しい気持ちしかないです。自分たちが悪くなるときは、最終ラインと中盤にスペースができて、そこを相手に突かれるので、そこを修正しようとみんなで声を出し合ったけど、修正できず、相手のサッカーをやらせてしまった」と試合を振り返り、後輩に対し「自分たちのこれまでの試合を教訓にして、来年はしっかり全国に行ったもらいたいと思います」と語った。
今年の山梨学院のチームスローガンは“Link”。これまでの歴史やピッチの選手、応援に回った選手、学校の仲間、家族・・・さまざまなモノや想いを“つなぐ”大会にしたいという思いが込まれていた。この夏は全部員が長野・栂池高原で合宿を行い、厳しいトレーニングに取り組み、気持ちを統一。この日も気持ちの入った熱いプレーを随所で見せた。残念ながら、勝ち切ることはできなかったが、この仲間でプレーする機会はまだ残されている。現在中断中のプリンスリーグ関東は11月21日に再開。残り3節を残し、山梨学院は暫定同率3位。上位3チームには、プレミアリーグへの参入戦出場資格が付与される。大沼主将は「自分たちは、日本一になることとプリンス参入戦出場という目標を 掲げてやってきて、日本一になるのはここで途絶えてしまったが、まだ参入戦出場と(プレミアリーグ)昇格の可能性は残っている。そこに向けてすぐに切り替えるのは難しいかもしれないですが、可能性がある限りは出場する選手たちがしっかりやらないとスタンドで応援してくれた選手たちに申し訳がないので後輩のためにも昇格させたいと思います」と涙ながらに語っていた。青きイレブンたちは、これまでの歴史やこれからの未来、ピッチで戦った選手、スタンドで戦った選手、応援してくれた学校の仲間、全てのモノや想いををつなぎ、これからもボールを追い、走り続ける。
文(Y.Y)、カメラ(平川大雪、藤原 稔、Y.Y)2015.11.7