山梨学院小、文科省研究開発学校発表会(中間発表)
~テーマは「科学科」による科学的リテラシーの育成~
~3・4年生が公開授業で3年次の研究成果を披露~
文部科学省研究開発学校に指定されている山梨学院小学校で11月28日、「3年次研究発表会(中間発表)」が行われた。山梨学院小は2013年に2度目となる研究開発学校(4年間)の指定を受け、3年目となる。この日は午前中に研究テーマの「新設教科『科学科』による科学的リテラシーの養成」の観点から考えられた公開授業が行われた。授業は3年生による「テーマ選択学習」、4年生による「モーターロボットの性能向上」や「デジタルカメラの開発」などを学習テーマに、学びを通じて科学的な思考に基づく探求、生活と写真との関わりなどを考えることによって、未来の社会を見据えた資質・能力を育成していくことを目的にしている。子どもたちが取り組む授業に16都道府県からの教育関係者や山梨学院小の保護者が多く来校し、子どもたちが真剣に取り組む授業を興味深く見守っていた。午後には山梨学院メモリアルホールに場所を移し、小林祐一研究主任の3年次までの研究中間発表と教育有識者による「これからの教育動向」や「今、求められている資質・能力」など専門テーマの解説とパネルディスカッションが行われ、会場の多くの教育関係者が熱心に耳を傾けていた。
山梨学院小学校は2004年の開校以来、今までどこにもなかった、ゼロからの学校づくりを目指してきた。子どもたちの生きる力を育む、真に豊かな学び舎をつくるため、伝統的な形式を取り払って、先進的で独創的な学校づくりを行ってきた。2006年に初めて全国でも数少ない文部科学省研究開発学校の指定を受けた。2013年には2度目となる指定を受け、開校10年で2度目は私立小学校で初めて。文科省による「研究開発学校」の選考は、研究テーマが創意工夫を活かした特色ある内容であるか、他の学校にも適用可能な内容であるかどうかといった点が基準となる。今回は、「新設教科『科学科』による科学的リテラシーの育成」が研究テーマ。理科という既存の教科の成果や財産を継承しつつ、さらにその先を目指す。学習の対象を「自然」から「科学・技術」まで拡大し、実社会や実生活との関わりを重視した内容と方法を取り込むことが特徴という。
研究主任の小林祐一教諭は「科学技術に取り囲まれ、その恩恵を受けて育っていく社会に育っていく子どもたちにとって、全ての知識を読み書きができるように理解していくことは難しいと思いますが、大きな仕組みだとか、開発されていく道筋を知っていることによって、まだ知らない未知のことだとか、新しいものに出会った時にも、その経験を基に判断や意思決定が出来る力を付けたい」と目的を語った。
◆多くの見学者が集まった公開授業
午前中の公開授業では、4年生は制御を左右する要因を、体験を通して理解し、モーターロボの性能向上を考える、「自在に動け!モーターロボ!~制御に挑戦~」と日本の技術力の象徴としてデジタルカメラを例に、その開発物語と生活との関わりを学ぶ、「デジタルカメラ開発」の授業が公開された。3年生は「テーマ選択学習」で多様な学習形態を子どもの自己選択で進め、興味関心を促す取り組みを行った。研究成果を小林教諭は「リテラシーの子が育ちつつある姿が見えてきましたので、それではどんな手法を用いて、どんな内容を学習したかということを整理することによって、最後の目的である教育課程、それを全国の他の小学生に示す形で出せるかなと思ってます」と手応えを語った。公開授業には16都道府県の多くの教育関係者や山梨学院関係者、保護者が集まり、興味深く子どもたちの様子を見守っていた。
◆3年次の研究発表、教育有識者によるパネルディスカッション
午後には、山梨学院メモリアルホールに場所を移して、小林祐一研究主任からこれまで2年半の取り組みや成果などの研究発表(中間発表)があり、それに引き続き教育有識者によるパネルディスカッションが行われた。冒頭で山内紀幸校長は「子どもたちが学んでいる理科が、科学が、自分の生き方や社会と繋がっているかどうかに対して、あまりプラスのイメージを持ってないということが問題となっています。自分の人生を豊かにするために今の知識をいかに繋げていくか、あるいはどうやっていくかに焦点を当てた研究を行っています。これが次の世代で「理科」という教科の名前が「科学科」ということになればと。今そのくらい重要な研究をさせて頂いています」と挨拶した。「科学教育の課題と展望」について行われたパネルディスカッションはコーディネーターに日置久光東京大学大学院特任教授、パネリストに清原洋一文部科学省初等中等教育局主任視学官、猿田祐嗣國學院大學教授・国立教育政策研究所名誉所員と、小林祐一山梨学院小学校研究主任が出席、各専門分野の立場から、「これからの教育の動向」や「子どもたちに求められる資質・能力」をいかに育てるかを解説した。最後にコメンテーターとして田中智志東京大学大学院教授・山梨学院小学校教育顧問が「科学リテラシーもいわゆる単なる科学的な知識や技能を修得するのではなく、それを通じて未来を構成する子どもたちに何を伝えるのか、ということを先生方一人ひとりが考えていくと、“深い学び”が可能になっていくのではないか」と総評した。来場した多くの教育関係者はメモを取ったり、熱心に耳を傾けていた。
文(K.F) カメラ(藤原稔) 2015.11.28