第92回箱根駅伝―復路
~6区山下りの出遅れが響き、徐々に順位を落とす~
~9・10区河村、上村が好走。シード権を確保~
よく晴れ渡った箱根芦ノ湖畔はこの時期では暖かい朝を迎えた。「第92回東京箱根間往復大学駅伝競走」の復路が1月3日、東京大手町の読売新聞本社前までの5区間109.6kmで行われた。前日の往路で優勝した青山学院大学が復路でも優勝、2年連続の完全優勝を飾った。今年も青山学院大の強さが際立った。2位・3位には3強を予想された東洋大、駒澤大が続いた。山梨学院大は2日の往路で4位に入り総合成績で3位以内を目標に復路を走り抜けたが、力及ばず8位に終わった。シード権は前回に続き獲得した。レースは、6区山下りを箱根初出場の秦将吾(3年)に託したが、力が空回り順位を6位に落とした。2年連続出場の7区市谷龍太郎(2年)、8区谷原先嘉(4年)も順位を上げることができず、9位まで下げシード権争いが混沌とした。9区河村知樹(2年)は今年が駅伝デビュー。出雲駅伝、全日本大学駅伝と安定した走力を示し、その実績を買われ箱根駅伝にエントリーされた。ここでも予想にたがわぬ走りで区間8位と総合8位とシード権を確実なものにした。10区は当日のエントリー変更で出走した上村純也(3年)も区間5位の好走、最終総合順位8位でゴール。皆の思いが染み込んだ「甲斐絹織りの襷」を繋いだ。
◆6区[20.8km 箱根芦ノ湖 ⇒ 小田原中継所]
復路の流れを作るのも出足が鉄則。軽快な走りでスピードが武器の秦将吾(3年 愛媛・今治)が箱根初出場で6区を任された。秦は中距離が得意な選手だが、箱根に向けて体調管理も万全に、長距離に対応できる走法に仕上げてきた。箱根芦ノ湖畔をトップの青山学院大の7分29秒後に小田原中継所を目指してスタートした。秦将吾選手は「中距離から切り替えてロングもかなり練習をしていたので全く不安はなかった。最初の登りのところまで順調に行けて、いつも以上に動いていたのですが、下り始めてすぐに腹痛が起きてしまい、ずるずるとタイムを落とした」と話し、「往路は4位で来てくれて、自分が3位以内に、持っていく気持ちでいたのに、いざ走ってみると結果的に自分がブレーキになってしまい、本当に悔しい気持ちでいっぱいで不甲斐ない」と肩を落とした。
◆7区[21.3km 小田原中継所 ⇒ 平塚中継所]
7区の市谷龍太郎(2年 山梨学院大附)は、全国高校駅伝競走(都大路)の優勝メンバーで唯一、昨年度の全日本大学駅伝でデビューすると箱根駅伝にも起用され、上田監督の信頼も厚い。今年の出雲駅伝、全日本大学駅伝は1区を任されたが、結果を残すことが出来なかった。昨年の箱根で7区を走った経験から今回も7区を託された。全10区間で気象の変化が激しい区間で、シード権争いも混沌としていた。6位で襷を受けた市谷は、スピードが上がらず、11.6kmの二宮の坂で9位に落ち、順位を3つ下げた。中継所では1つ盛り返し8位で8区に繋いだ。市谷龍太郎選手は「1区、1区、7区と三大駅伝を走らしてもらったが、全くチームを勢いづける走りが出来ませんでした。下級生としてチームに貢献できなかったことは悔しいです。来年は後輩が付いてきてくれるような走りをして笑顔で終わりたい」とリベンジを誓った。
◆8区[21.4km 平塚中継所 ⇒ 戸塚中継所]
8区の谷原先嘉主将(4年 兵庫・市立尼崎)は、昨年の大会でもこの区間を走り、4位と好成績を残し、今回もいい感触を持って臨んだ。谷原は主将になった春先から調子を落とし、出雲、全日本も出場を見合わせ、地道に調整を続けた結果、ようやく最後の箱根に間に合った。谷原先嘉主将は「2回目の8区で前半から落ち着いて行こうと思ったのですが、気温の高い中で後半の遊行寺(16キロ)の坂を登ったあたりで、リズム的に少し悪くなってしまい、落ちてしまった。自分としては課題の残るレースになってしまった。いい具合に行っていれば65分台(昨年の記録)以上のタイムは出せたと思う」と悔やんだ。8位で受け取った襷は区間記録11位、総合9位に落とした。
◆9区[23.1km 戸塚中継所 ⇒ 鶴見中継所]
9区にエントリーされたのは、上田健太、市谷龍太郎と共に全日本高校駅伝の優勝経験者、河村知樹(2年 山梨学院大附)。大学入学後は故障で走れない時期が続いた。2年になった今年、出雲駅伝で駅伝デビューをし、区間7位とまずまずの成績を残すと、続く全日本大学駅伝では区間4位の好走をした。河村知樹選手は「往路の人たちはいい走りを皆がしてくれて、復路もと思い走りました。最初、前に順天堂大と大東文化大がいて、貰った位置もあったのですが、練習もこの1年良くできていたのでしっかり前を追うことができました」と序盤のレース運びは納得した。追いついた順天堂大との長い並走が続いたことには「給水で余裕があったらペースを上げようと思ったのですが、権太坂のところで順天堂と一緒に行き、そのままのペースが体に染み付いたというか、ペースが上がらない感じになったのは反省するところです」と話した。8位を争っていた順天堂大との並走は後半、河村が振り切り9位から8位に順位を上げた。
◆10区[23.0km 鶴見中継所 ⇒ 東京大手町]
9区河村知樹の粘りの好走で再び8位に上げた順位を、今朝エントリー変更で10区を託された上村純也(3年 栃木・白鷗大足利)はシード権を確保するため頑張った。上村の10000mの記録は10区エントリー選手中の2位。大崩れのない安定感抜群の上村には、余程のアクシデントがない限りシード権確保には安全圏内といえた。上村純也選手は「もう少し積極的に前を追って生きたいという気持ちはあったのですけど、シード権も懸かっているし、気温も熱く、前半抑えて入って行ったのですけど、後半、伸びればよかったかなと悔いが残る走りでした。自分の今までの走りからしたらいい走りだと思いますけど、これから上位を目指していくことを考えると、3番ぐらいは行きたかった」と話し、シード権争いを制する十分な走りで区間5位、総合順位8位でゴールテープを切った。
■総合成績8位 総合タイム11時間11分51秒
順位 | ランナー | 区間タイム | 区間順位 | 総合順位 |
6区 | 秦 将吾(3年) | 1時間02分40秒 | 18位 | 6位 |
7区 | 市谷龍太郎(2年) | 1時間06分04秒 | 13位 | 8位 |
8区 | 谷原先嘉(3年) | 1時間06分44秒 | 11位 | 9位 |
9区 | 河村知樹(2年) | 1時間11分34秒 | 8位 | 8位 |
10区 | 上村純也(3年) | 1時間11分26秒 | 5位 | 8位 |
◆エントリー変更
8区小山祐平(3年 和歌山・日高)⇒谷原先嘉(4年 兵庫・市立尼崎)、10区永戸聖(1年 岩手・盛岡工)⇒上村純也(3年 栃木・白鷗大足利)
■総合順位(10位までシード権獲得)
順位 | 大学名 | 総合タイム | 1位とのタイム差 |
1位 | 青山学院大学 | 10時間53分25秒 | |
2位 | 東洋大学 | 11時間00分36秒 | 7分11秒 |
3位 | 駒澤大学 | 11時間04分00秒 | 10分35秒 |
4位 | 早稲田大学 | 11時間07分54秒 | 14分29秒 |
5位 | 東海大学 | 11時間09分44秒 | 16分19秒 |
6位 | 順天堂大学 | 11時間11分24秒 | 17分59秒 |
7位 | 日本体育大学 | 11時間11分32秒 | 18分07秒 |
8位 | 山梨学院大学 | 11時間11分51秒 | 18分26秒 |
9位 | 中央学院大学 | 11時間13分31秒 | 20分06秒 |
10位 | 帝京大学 | 11時間15分21秒 | 21分56秒 |
レース終了後の結果報告会で保護者、関係者、選手たちを前に飯島理彰コーチは「目標は達成できなかったが、幸い来年のシード権を獲得しました。まずは個々の走力、精神力のレベルアップを図り、来年笑顔でこの場所に立てるように努力していきたい」と述べた。上田誠仁監督は「30年間繋げてきた襷は31回目と君たちを誘ってくれています。ただ出場するだけでなく戦い抜ける力、戦いぬける精神力、それを365日の限られた時間の中でいかに使うかを考えてやっていってもらいたい。大会を支えてくれている人がどれだけいるか。来年も私たちは出場できます。その人たちの思いも紡いで頑張っていきたい」と皆に呼びかけた。最後にチーム全員で円陣を組み来年の活躍を誓った。
文(K.F) カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・中嶋一・Y.Y)
2016.1.3