競泳日本選手権 大会4日目
~女子背泳ぎ決勝、酒井・竹迫五輪代表ならず~
~江原騎士、100mでは伸びず10位に終わる~
今夏のリオ五輪日本代表選考会を兼ねた「第92回日本選手権水泳競技大会・競泳競技」大会4日目が4月7日、東京辰巳国際水泳場で行われた。全国各地から水の精鋭約600人が一堂に介し、10日までの7日間激しい日本代表争いが繰り広げられている。大会も4日目に入り、各種目で五輪日本代表者が決まり始めている。山梨学院勢では昨日、今春卒業した江原騎士(OB)が男子800m自由形のメンバーに内定。鈴木聡美(カレッジスポーツセンター研究員)が女子100m平泳ぎで復活の泳ぎを見せ、2位で派遣標準記録を突破、2度目の五輪切符を手にした。4日目のレースは、第一種目の男子100m自由形予選に出場した江原騎士が自己新を更新、全体の6位で夜の準決勝に進出した。同種目で同じく今春卒業の甲斐耕介(OB)は予選敗退した。他に男子200mバタフライに出場した近藤克哉(3年)、男子200m平泳ぎでは大谷走(2年)も準決勝には進めなかった。前日準決勝が行われた女子100m背泳ぎの竹迫麻澄(OG)と酒井志穂(カレッジスポーツセンター研究員)は決勝で力泳を見せたが二人とも表彰台に立てず五輪の夢もついえた。
今年の競泳日本選手権は、8月のリオ五輪日本代表選考会を兼ねているため、多数のメディア関係者が詰め掛け、連日選手の熱い戦いに視線が降り注がれている。本大会は、世界と戦える選手を日本代表に選出するため、個人種目で優勝または2位以内に入り、派遣標準記録を突破しなければ代表にはなれない厳しい基準が設けられている。また、今回の競泳日本選手権は、今夏のリオ五輪を想定して7日間の日程に、100mと200mの種目においては、予選、決勝の間に準決勝が盛り込まれる3レース方式を取り入れている。
大会4日目のレースは、午前中の予選、男子100m自由形から始まり、江原騎士が出場。昨日の男子200m自由形で3位と、個人では400mに続き派遣標準記録に届かず、五輪日本代表を逃したが、この種目の結果、男子800m自由形リレーのメンバーに選ばれ五輪代表切符を手に入れた。1夜明け、臨んだレース前半、抑え気味に50mを2位でターンすると、後半で追い上げこの組1位でゴール。自己新を記録し、全体6位で夜の準決勝に繋いだ。同種目で出場した甲斐耕輔(OB・ルスツリゾート北海道)は全体の29位で準決勝に進出はならなかった。他の予選種目は、男子200mバタフライの近藤克哉(3年 愛知・豊川高)、男子200m平泳ぎに出場した大谷走(2年 千葉・昭和学院高)は力及ばず、予選敗退した。
午前中の予選レース後、神田忠彦監督に昨日、二人のリオ五輪代表内定について話を聞いた。神田忠彦監督は「正直なところ五輪に行くことは難しいことで、それ自体はうれしいですが、もう少しレース展開が後半我慢できるように訓練させていなかったというのは、後にビデオで確認すると悔しいですね。通常だとあんなにバテないのですけど、このような大舞台だと過度に緊張しているので、思った以上に後半走らないのですね」と内定者の予想以上のプレッシャーのレースを思いやった。所属選手がシドニーからロンドン五輪まで4大会連続で五輪出場という実績に新たに5大会連続という勲章を得たことに、「毎回違う選手が入ってきて、鈴木は2回目ですけど、江原が男子で初めて入ってくれたので、そういった意味で自分的には記念的で、なかなか無いようなので、それも叩き上げの選手というのはなかなかいないですので、そういう面ではうれしいです。ただオリンピックに行っても戦わないといけないので、糠喜びしてはいられない。本番まで鍛え上げなければいけないと思っています」と気を引き締めていた。
◆江原騎士、連日のレースの疲れ、自分の泳ぎができず完敗
夜に男子100m自由形の準決勝が行われた。江原騎士は、この種目で個人の五輪代表内定と4枠の400m自由形リレーメンバーを狙ったが、さすがに緊張の連続と連戦の疲れで後半伸びがなく、トップ争いに加われず、組6位・全体10位となり決勝に進めなかった。江原騎士選手は「だめでしたね。集中力が切れたかなというくらい遅くて、今朝起きてまだ余力がある感じで前半は行けるなと思ったんですが、力んでしまって伸びのある泳ぎができなくて水泳は難しいなと思いました」と完敗を認めた。悲願の五輪代表に内定したことについては、「今はまだ通過点で本番はリオ五輪なのでここで満足したら停滞してしまうので、決められたのはうれしいですけど、もっともっと上を目指して頑張りたい」と決意を新たにした。
◆女子100m背泳ぎ決勝、竹迫・酒井五輪代表ならず。レース後お互いの健闘称える
準決勝種目に続き、決勝種目が行われた。女子100m背泳ぎに出場した山梨学院勢の竹迫麻澄(OG・山本光学)は準決勝を3位で通過、酒井志穂(カレッジスポーツセンター研究員)は6位で通過し、2人は決勝戦に臨んだ。前半50mを竹迫は3位で折り返し、表彰台を期待されたが、後半隣レーンの酒井を意識して逃げ切りを図るも交わされ、6位に終わった。一方酒井は前半落ち着いて入り、後半スピードアップする展開に持ち込んだが、落ち着いた入りが裏目に、スピードが思うように上がらず、5位となり、ともに目指した五輪代表の夢は叶わなかった。レースを終えてライバルであり、仲間である二人は肩を抱き寄せお互いの健闘を称えた。
竹迫麻澄選手は「オリンピックを目指して今まで一生懸命頑張ってきたし、いろいろな人に支えてもらって、感謝したい気持ちと恩返ししたい気持ちを胸に頑張りました。神田監督が自分を信じて、絶対連れて行ってやると言ってくれていて、その恩返しができなかったのが一番悔しいです」と涙ながら話した。ベストタイムは派遣標準記録を超える記録を持つ、この種目の第一人者酒井志穂選手は「派遣記録を突破して初めてのオリンピックの舞台に立ちたかったです。ここが水泳人生の集大成だからいままでやってきたことを見せ付けようと、決勝前にコーチと話したばかりだったんですけど、結局こんな結果で終わってしまって自分自身がすごく情けないですし、内容はどうであれ結果は結果で受け止めるしかないかと思います」と悔しさと悲しみで声を詰まらせた。
それぞれが厳しい練習に耐え、研鑽を積んだからこその悔しさの涙。その清い涙は自分だけが流せる真の褒美なのかも知れない。
◆4日目個人種目記録 4/7 東京辰巳国際水泳場
種目 | 氏名 | 記録 | 派遣標準 | 順位 | 備考 |
男子100m 自由形 |
江原騎士 | 49.80 (自己新) |
48.16 | 3位 | 決勝へ |
甲斐耕輔 | 51.02 | 29位 | 予選 | ||
男子200m バタフライ |
近藤克哉 | 2:03.91 | 1:55.39 | 37位 | 予選 |
男子200m 平泳ぎ |
大谷 走 | 2:15.61 | 2:09.54 | 36位 | 予選 |
■準決勝種目 | |||||
男子100m 自由形 |
江原騎士 | 49.86 | 48.16 | 10位 | 準決 |
■決勝種目 | |||||
女子100m 背泳ぎ |
酒井志穂 | 1:00.70 | 59.85 | 5位 | 決勝 |
竹迫麻澄 | 1:00.72 | 6位 | 決勝 |
明日の大会5日目は、男子200m背泳ぎ、女子200m平泳ぎ、男子200m個人メドレー、女子800m自由形の予選が行われ、このうち山梨学院勢は女子200m平泳ぎに奥田百香(2年 愛知・豊川高)と鈴木聡美(カレッジスポーツセンター研究員)の2人が出場。男子200m個人メドレーに大野純弥(4年 富山・水橋高)、林祐矢(3年 千葉・市立船橋高)の2人が出場、女子800m自由形に松浦由佳(4年 福井・北陸高)が出場する。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2016.4.7