平成28年度関東学生柔道優勝大会
~女子は3年ぶりの優勝、宿敵筑波大に勝利
~男子は主力欠けるも5年連続準優勝を確保~
平成28年度関東学生柔道優勝大会(男子63回・女子22回)が5月22日、埼玉県上尾市の埼玉県立武道館で開催された。男子は各チーム7人の点取り式によるトーナメント戦で争い、女子はAリーグとBリーグに分かれ5人の点取り式により、各1位校が決勝戦で争うリーグ戦と、トーナメント戦で優勝を競う3人制で行われ、関東NO.1を競った。山梨学院大女子は前々回、ライバル筑波大に5連覇を阻まれ準優勝に終わり昨年も同大学に敗れ2年連続の準優勝に甘んじた。男子もやはり昨年も筑波大の前に敗れ4年連続の準優勝に涙を飲んだ。今大会も決勝に進出したのは男女共に山梨学院大と筑波大。女子の決勝戦は、先鋒の月野珠里(3年)、次鋒の出口クリスタ(3年)がしぶとく有効で勝利し、流れを作った。続く佐藤史織(2年)が開始早々、豪快な背負い投げで一本勝ちを収め、3勝連勝で勝利を呼び込み、3勝1敗1分けで3年ぶりの優勝を飾った。男子は、五将の5人までが優勝の行方が分からない展開を見せたが、結局0勝3敗4分けで敗れ、今大会も準優勝に終わった。
関東学生柔道優勝大会の試合方法は、男子は1チーム7人の点取り式によるトーナメント戦で行い、体重制限無しで選手配列は自由。女子5人制は5人によるリーグ戦。各試合の選手配列は、先鋒・次鋒は体重57㎏以下、中堅・副将は70㎏以下、大将は無差別。女子3人制は点取り式によるトーナメント戦。体重無差別、選手配列は自由でそれぞれ争われる。
この大会では、特に男子の選手配列自由の組み合わせは、軽量級と重量級の対戦もあり、「柔よく剛を制す」と言われるように、小さいものが大きい者を投げ飛ばす柔道本来の面白さがある。各地区大会から全国大会へ続く団体戦は、各大学が名誉と誇りを懸ける前哨戦となる。
山梨学院大が出場した女子5人制の部は、Aグループ(3校)Bグループ(3校)に分かれ
各グループ1位によって優勝が争われる。Bグループの山梨学院大の初戦相手は平成国際大学。5勝0敗で勝利。2回戦は埼玉大に4勝1分け勝利。順当にBグループ1位で決勝に進出した。Aグループは筑波大が1位通過で前回同様、決勝は筑波大との対戦となった。
決勝戦はまず、女子から始まった。
先鋒の月野珠理(3年 愛知・大成高)が序盤から激しい組み手争いの中、僅かなチャンスを引き込み有効を奪い優勢勝ち。幸先の良いスタートを切ると次鋒の出口クリスタ(3年 長野・松商学園)も互いに技を仕掛ける一進一退の攻防で少ない隙を出口が有効を奪い優勢勝ちを収め、流れを呼び込んだ。続いた今大会決勝に抜擢された佐藤史織(2年 愛媛・新田高)は、開始早々豪快に背負い投げで一本勝ち。ここで3勝し、この時点で3年ぶりの優勝を手にした。全試合副将を努めた畠石香花(1年 茨城・土浦日大高)は1本負けを喫したが1年生で大会に出場を果たし貴重な経験を積んだ。予定の選手の代役で出場した大将の新添左季(2年 奈良・天理高)は、体重差のある相手選手に互角に戦い引き分けに持ち込む、重責を担った。決勝戦の結果は、3勝1敗1分けで3年ぶりの優勝を果たした。この大会3試合で通算12勝1敗2分け、完璧な内容で優勝を飾った。女子の5人制の部の順位は優勝・山梨学院大、準優勝・筑波大、3位は淑徳大と平成国際大となった。
試合後、部員全員を集めて山部伸敏女子監督は「自分たちが立てた目標を新メンバーで達成するという結果を出したことは非常に大きく意義がある。去年、一昨年はそう言いながら筑波大に負けてきた。関東で2年連続負けてきて全国では結果的に優勝したけれど、それは負けて『これじゃいかん』と目が覚めて、いい準備をしたから優勝できた。今回優勝したことは大きいし自信にしなくてはいけないのだけど、慢心してはいけない。心を入れ替えて3連覇を取るんだ。過去にない歴史を作るという気持ちで臨んで欲しい」と、どの大学も成し得てない初の3連覇に挑戦する。怪我で出場できなかったチームの大黒柱長内香月主将(4年 富山・高岡龍谷高)は「今の自分が言えることではないのですけど、とても良い試合でした。同期や後輩たちが前期の目標の一つであるこの大会で優勝できたことは上に繋がる第一歩であると思います」と控えめに語った。先鋒で3試合全てに勝ち、チームに流れを作り優勝に貢献した月野珠里選手は「最初に取らないと後ろに後輩が多かったのでとにかく有効でも良いから必死に取りに行きました。全部一本勝ちしたわけではないので、まだまだ全日本学生は厳しい試合になると思うので、さらに練習して前2つで全部取りたいと思います」と意気込みを語った。
◆女子決勝戦 《山梨学院大VS筑波大 3勝1敗1分け》 5/22 埼玉県立武道館
先鋒 | 次鋒 | 中堅 | 副将 | 大将 | |
山学大 | 月野 (57㎏) |
出口 (57㎏) |
佐藤 (63㎏) |
畠石 (70㎏) |
新添 (70㎏) |
○ 優勢 |
○ 優勢 |
○ 一本 |
● 一本 |
引き分け | |
筑波大 | 内尾 (52㎏) |
柴田 (57㎏) |
村山 (70㎏) |
能智 (62㎏) |
藤原 (113㎏) |
男子1部は8校によるトーナメント戦。山梨学院は今大会けが人が多く、ベストメンバーを組めないまま試合に臨んだ。山梨学院大男子は、重量級を揃え、力でねじ伏せる戦法に出た。蓋を開けてみると出場選手が持ち前の実力を発揮し、1回戦の流通経済大に5勝1敗1分け、2回戦は関東学園大に6勝0敗1分けで勝利し、2試合で11勝1敗2分けで決勝戦に進出。相手は4年連続、筑波大との対戦になった。
試合は、先鋒の浜野大生(1年 福岡・大牟田)は背負い投げで1本負けを喫するスタートになったが、次鋒の柳原尚弥(2年 栃木・白鴎大足利高)は序盤、相手長身の選手に手こずるも終盤に再三の惜しいシーンを演出したが攻め切れず引き分けに。三将の藤井靖剛(3年 神奈川・桐蔭学園高)も初戦『支えつり込み足』、2戦『大外刈り』の足技が冴え一本勝ちを収めるも決勝では、筑波大のエースと互いに譲らず引き分け、勝利を呼び込むことはできなかった。中堅・町屋匡樹(2年 青森・弘前実業高)は一本負け、五将・山中勇希(2年 栃木・白鴎大足利高)が踏ん張り引き分けたが、続く副将・中元岳(2年 北海道・北海高)も引き分けたため、ここで優勝への糸は切れた。大将の長谷川優(2年 神奈川・東海大付相模高)に1勝を託したが叶わず、0勝3敗4分けで敗れ今大会も準優勝で終えた。男子1部の順位は優勝・筑波大、準優勝・山梨学院大、3位・清和大、関東学園大、5位・桐蔭横浜大、国際武道大となった。
◆男子決勝戦 《山梨学院大VS筑波大 0勝3敗4分け》 5/22 埼玉県立武道館
先鋒 | 次鋒 | 三将 | 中堅 | 五将 | 副将 | 大将 | |
山学大 | 浜野 81㎏ |
柳原 110㎏ |
藤井 120㎏ |
町屋 100㎏ |
山中 170㎏ |
中元 110㎏ |
長谷川 100㎏ |
● 一本 |
引き分け | 引き分け | ● 一本 |
引き分け | 引き分け | ● 一本 |
|
筑波大 | 田嶋 92㎏ |
新添 99㎏ |
尾原 128㎏ |
山本 85㎏ |
神谷 128㎏ |
佐々木 81㎏ |
根津 135㎏ |
西田孝宏総監督は「女子の優勝は正直良かったです。全日本学生に向けていい試合ができました」と喜びを表した。男子については「ベストメンバーが組めていれば勝てた可能性もあったと思います。主力がいなかった分、全日本で使える目途がついた選手がいたことも収穫です」と手応えを語った。中田大貴主将がいない中、選手を引っ張った藤井靖剛選手は「チームは、ベストではなかったですけど、自分は練習してきたことがしっかりできていたので、決勝戦では相手も一回りも大きな選手でやり難かったが最後まで攻撃できていたと思います」と振り返った。「全日本は、レギュラーも怪我から戻ってくるので、まずは、準決勝の山を越えて日本一を目指したいと思います」と一ヶ月を見据えた。
全試合終了後に表彰式が行われ、優勝した山梨学院大の鶴岡来雪(4年 愛媛・新田高)、出口クリスタ、月野珠里にそれぞれ賞状、優勝旗、優勝楯が手渡された。また、技術優秀選手賞に山梨学院からは男子は藤井靖剛、女子は月野珠里の両選手が選ばれた。
1ヵ月後に控えた全日本学生柔道優勝大会に女子は3連覇、男子はベスト4以上を目指す。大会は6月25日・26日の両日、日本武道館で開催される。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2016.5.22