山学短大、平成28年度「総合表現作品発表会」
~保育科2年生が「泣いた赤おに」などを発表~
~174人全員が3作品に分かれ手づくりで創作~
山梨学院短期大学で平成28年度「総合表現作品発表会」が7月1日・8日の両日、山梨学院メモリアルホールと古屋記念堂で開催された。山梨学院短大では昨年まで伝統の「オペレッタ発表会」をこの時期に行ってきたが、今年度から、学生全員がより作品に取り組めるよう3グループに分かれ、それぞれ作品づくりを進めてきた。発表会は保育科2年生174人全員が必修科目「保育内容・総合表現授業」の一環として取り組んだ。「脚本・演出」、「キャスト」、「造形表現」、「音楽表現」、「身体表現」、「運営」部門から一人2部門受け持ち、より深く作品に関わり制作プロセスを経験することを目的に行われた。基本的に学生自ら作品の選定から大道具・小道具、衣装、音楽まで手づくり作品として創作される。今回は、7月1日に山梨学院メモリアルホールで「泣いた赤おに」、グリム童話の代表作「ヘンデルとグレーテル」の2作品、8日は絵本が原作の「クレヨンのくろくん」が古屋記念堂で発表された。両日とも会場には山梨学院幼稚園の園児や保育科の1年生、幼児教育関係者、保護者などが訪れ、熱心に学生たちが演じる姿を鑑賞した。
山梨学院短期大学では伝統的にすべてを学生たちが準備から公演まで手作りで一つの舞台を全員で制作する「オペレッタ発表会」が行われてきた。ゼロからの経験は、これまで身につけた知識や技能を活用し、チームワーク力、問題解決能力、コミュニケーション能力などを養い、総合的な表現力を身に付けることを目的にした山梨学院短大独自のカリキュラム。しかし、全員で一つの作品をつくりあげる作業には学生たちの取り組みに温度差が出てしまうという課題があった。そのため今回から、学生たちがより作品に関わる度合いを深めるため、学生全員を3グループに分け、一人が2部門を必ず担当することを決めた。例えば大道具を製作し、キャストとして演じるなど。指導する伊藤美輝教授は「あくまでも制作の過程で脚本に基づいて自分は何を考えて作っていくか。これはいずれ子どもたちと一緒に保育の現場でやっていくための力をつけるためで、今まではどう見せるかに重きを置いてしまったけど、それより制作のプロセスを充実してその中での体験を学んでもらいたいとやっています。学生は親や大人に上手に見せるために子どもを指導するのではなく、子どもがこの活動で何を学んでいくのか、という本質的なところを考えていかないといけないので今までと少しやり方を変えようと考えました」と教育の目的を話した。
今回上演された3作品は、7月1日に1933年に発表された児童文学で学校教科書にも採用された「泣いた赤おに」、グリム童話の代表作「ヘンデルとグレーテル」の2作品。7月8日は絵本が原作の「クレヨンのくろくん」。どれも30分ほどにまとめ発表した。
この原作を元に脚本・演出、キャスト、大道具・小道具、衣装、音楽制作、照明・音響、運営などの部門を保育科2年生174人が3作品に分かれ、一人が基本的に2部門に携わった。脚本は昨年、保育内容・総合表現の授業で174人の学生が6人ずつのグループで作品にしたい物語の脚本を執筆。それらを持ち寄り4月に3つの発表作品を決定すると、各作品グループが脚本を練り直す作業から活動が始まった。5月からは本格的な作業に移り各部門で発表作品に合わせ、舞台に奥行きを与える大道具・小道具の製作、キャストに相応しい衣装、総合表現のための作詞・作曲、それに華を添える楽器の演奏と合唱、効果音、作品に動きを与える身体表現などに取り組み、一体感を持ってすべてが結合した総合舞台を創り上げた。
7月1日、初めの作品は「泣いた赤おに」。赤鬼と青鬼の軽妙なやり取りや学生が作詞作曲した二人のそれぞれのソロ。人形を上手く取り入れた演出や『風』の身体表現、客席を効果的に使うなど、学生たちのアイディアが随所に見られた。「ヘンデルとグレーテル」では、シンプルな舞台構成と、お菓子の家の可愛らしいセット、そして魔女の衣装やメイクの素晴らしさ、楽器と合唱、音響効果のタイミングなど見るものをグリム童話の世界に引き込んだ。7月8日の「クレンヨのくろくん」は古屋記念堂の半分を使用しクレヨンに扮したキャストの自由で伸び伸びした身体表現でクレヨンの物語を創作。スクリーンに映る花火や手作りの花火の造形、エンディングの大合唱など演出に工夫を施した。
今回の発表会は、山梨学院幼稚園の園児、短大1年生、幼児教育関係者、保護者の鑑賞に限られていたが、どの作品も所々で園児の歓声や笑い声が聞かれ、最後には大きな拍手が会場に溢れていた。
すべてを出し切った作品発表後、学生たちは全力を出し切った充実感から抱き合い涙を流し、喜びを分かち合う姿がそこかしこで見られた。『泣いた赤おに』のリーダーの内田泰我さんは「最初は何故ひとつの作品にしないのかという思いがすごくあって、先生と何度も話し合いの結果、自分たちのグループで満足のいく作品が創れたので3つに分けて正解だったという気持ちがあります。全員が集まりにくかったり、練習中にはいろいろな失敗があったりしましたけど、本番はうまくいって良かった」と達成感を覗かせた。『ヘンデルとグレーテル』のリーダー保坂朱梨さんは「たくさん練習した分しっかり上手くできたと思います。それぞれ雰囲気が違う物語が3つできて、自分たちがやることで得るものがあり、逆に仲間がやっていることを見ることで学ぶものもあって、すごく良い機会だったと思います」と笑顔で話した。7月8日の作品『クレヨンのくろくん』のリーダー清水宏次郎さんは「47人をまとめていくことは自分の中では初めての体験で、劇発表というのも初めてで最初はとても不安で、うまくまとめられたかは分からないですけど、皆がついてきてくれたことがとてもうれしく、感動しました。これから保育士になっていく自分たちは子どもたちに接するときにいろいろな分野のことを知っておかないと教えることは難しいと思うので、今回2部門に関われたことは良い経験になりました」と、こちらは感無量の表情で話した。最後に伊藤美輝教授は「面白かったですね。今までのものを踏襲したものもあれば、新しい試みをしたり、いろいろチャレンジをしていて。実際にやりながら考えていくことを経験し、頭だけでは考えられないということを学びました。アクティブラーニングですね。これを機会にいろいろなことにぜひチャレンジして欲しいなと思います」と今回の試みを振り返った。
7月1日・8日の両日、3作品を2回に分けて発表した学生たちは、4月から僅か3ヶ月の活動であったがそれぞれに大きな収穫を得て、逞しく成長した自身に手応えを感じていた。発表後、全員が充実した満面の笑顔で記念写真に納まった。
文(K.F) カメラ(平川大雪・藤原稔)2016.7.10