第98回全国高等学校野球選手権大会開会式
〜山梨代表5年ぶり6度目の山梨学院が行進〜
〜18名の雄壮な姿に惜しみない歓声と拍手〜
第98回全国高等学校野球選手権大会の開会式が8月7日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われた。ライトポール側の入場ゲートから前年優勝の神奈川代表・東海大相模の戸崎慶主将を先頭に南から北の順に代表49校が入場行進を行った。32番目に5年ぶり6度目出場の山梨県代表・山梨学院が入場。県大会の優勝旗を持った瀧澤虎太朗主将(3年)を先頭に、五十嵐寛人選手(2年)の「イチ、イチ、イチ、二」の掛け声で、代表選手は大きく手を振り足を上げて堂々と行進。三塁側応援スタンドで見守る部員や野球部保護者会らの前を代表選手18人が通過すると、雄壮な姿に惜しみない拍手が送られた。兵庫県代表・市尼崎の前田大輝主将が「甲子園の土を踏みしめた瞬間、これまで支え導いてくださった全ての方々に、改めて感謝の気持ちが溢れてきました。今年は熊本で大きな地震が起こり、様々な苦しみや悲しみの中におられる方も大勢見てくださっていると思います。私たちのプレーに、共感と新たな希望、そして生きる力を感じてくだされば本当に幸せです。未来への架け橋として、一生懸命、最後までプレーすることを誓います」と選手宣誓を行った。大会は、熊本地震で被災した東稜の山門憲司主将(3年)による始球式の後、長野県代表・佐久長聖と徳島県代表・鳴門戦を皮切りに、15日間の熱戦が展開される。山梨学院は第3日目(8月9日)第2試合に長崎県代表の長崎商と対戦する。
【開会式あいさつ】
◆夏の阪神甲子園球場は高校野球ファンで超満員に膨れ上がった。その観衆が見守る中、熊本県の東稜高校・山門憲司主将の先導で、地区予選参加3,874校の代表49校が、郷土の期待を担い堂々と行進し所定の位置に整列した。
◆大会会長挨拶で渡辺雅隆朝日新聞社代表取締役社長は「高校野球は復興のシンボル。下向きに白球を追う球児たちの姿は、見るものを奮いたたせ希望を届けてくれました。今回のキャッチフレーズは『ワクワク、ドキドキ甲子園』。憧れの甲子園で持てる力を存分に発揮してください」と述べた。
◆お祝いのことばで義家弘介文部科学副大臣は「全国各地の激戦を勝ち抜き、夢の甲子園でプレーできることの幸せと、皆さんを支えてくれた視聴者の方々、ご家族の方々、母校や郷土の方々への感謝の気持ちを忘れないでください。皆さんは全国の球児たちの夢です。そして私たちの夢です。今まで練習で培ってきたチームワーク、最後まで諦めない全力プレーで、全国多くの方々に熱を届けてください」と述べた。
◆大会審判委員長の八田英二日本高等学校野球連盟会長は「高校野球というスポーツには大事な三つのSがあります。備える、支える、信じるです。どんな困難にも立ち向かう皆さんの戦いぶりは、被災者にも、そして苦難にめげず希望への道を進む、全ての皆様に力強いメッセージを届けるものと信じています。日本を元気にするような力の限りの試合展開を期待しています。You can make it !(君ならやりぬく)」と励ましのことばを述べた。
◆開会式が終わった後、サポート・チーフの石橋優稀選手(3年)は部員と「朝7時に三塁側ベンチの斜め上の席」に陣取った。控え選手の「3年生全員で、気持ちを一つにして」固唾を飲んで見守っていた。「自分もその一員として行進したかった」が、果たせなかった選手の思いとともに「代表選手が堂々と行進してくれていた」と頷く。代表選手の勇姿は「心強く誇らしく思った」と感想を述べる。特に現地入りしてからは「決められた時間を有効に使うために、マネージャーとともに3年生15人で裏方を務め一丸となって共に戦っている」と語尾に力が入る。初戦は「アルプス席で、応援団と一丸となって応援し戦いたい」と目を輝かせた。
◆行進で「イチ、イチ、イチ、二」の掛け声をかけた五十嵐寛人選手(2年)は「県大会でも入場行進で掛け声をかけていました。掛け声もその時と全く同じ」と微笑む。昨日の「リハーサルでは声がうまく出なかったが、今日は大きな声が出て、掛け声のリズムも良かった」と自己採点。それでも「捕手のリードより掛け声の方が難しい」と首をかしげる。ゲートをくぐった時「こんなに沢山の人の前で試合ができるのかと、楽しみで心が躍った」と笑顔を漏らす。「3年生の先輩とプレーするのは甲子園が最後となるので、1日でも長くプレーができるように貢献したい」と口元を引き締めた。
◆山梨県の優勝旗を持って行進した瀧澤虎太朗主将(3年)はゲートをくぐる前は「お客さんがどれだけ入っているのか楽しみで、早く行進したい」とワクワクしていた。球場に入ると、「その数に迫力を感じた」と小さく頷く。「こんなに大勢の人の前で早くプレーしたい。早く試合をしたいと強く思った」と微かに口元が緩んだ。「チームの思いは当然ですが、他の山梨県35校の思い、山梨県人の思いも背負っているんだと感じながら行進した」と神妙な面持ちを覗かせた。一転して「他のチームや県民の皆さんの思いを、思う存分、試合にぶつけたい」と目が爛々と輝いた。
◆6回目の夏の甲子園となる責任教員の田中信幸野球部長は「三塁スタンドで控えの選手15人とマネージャー1名の16人と一緒に見ていた」。今回の行進は「ためらいがなく思い切りよく、清々しい姿で行進していた」と賛辞を呈する。明後日の「初戦も、山梨県代表という自覚を持ち清々しく、戦ってくれると思います」と冷静沈着に語った。
文(H.K)、カメラ(平川大雪)2016.8.7