全日本学生レスリング選手権(インカレ)最終日
~山学大2度目の同校対決決勝、70㎏級藤波が制す~
~オレッグ、グレコに次ぐフリーでも優勝~
4日間の日程で大阪・堺市金岡公園体育館で行われてきた「文部科学大臣杯2016年度全日本学生レスリング選手権大会」(インカレ)は、8月28日最終日を迎え、フリースタイル8階級の3回戦から決勝戦まで試合総数120試合が行われ、すべての日程を終えた。一昨日の、グレコローマンでは130㎏級でボルチン・オレッグ(4年)と貝塚賢史(3年)が決勝戦で同校対決を行い、オレッグが優勝、貝塚が準優勝を飾った。59㎏級では丸山智也(2年)がベスト8に入る健闘を見せた。昨年の大会では精彩のなかった山梨学院グレコローマン勢が大奮闘しフリースタイルに繋げた。フリースタイル2日目大会最終日の山梨学院勢は1日目を勝ち残った9人が出場。70㎏級で藤波勇飛(2年)が木下貴輪(3年)との同校対決を制し、初優勝。木下は2連覇が懸かる試合だったが、叶わなかった。125㎏級では、ボルチン・オレッグ(4年)がグレコローマンスタイルに続きフリースタイルでも2年ぶり3度目の優勝を果たし、2種目で学生日本一に輝いた。57kg級では小柳和也(3年)が初の3位になり表彰台に上った。他はベスト8が4人、ベスト16が1人だった。
25日・26日に行われたグレコローマンスタイルに続いて27日・28日にフリースタイルが行われた。27日の初日には、8階級のベスト16までが決定し、フリースタイル山梨学院勢の28人のうち、9人が2日目に進んだ。70㎏級の決勝戦は藤波勇飛(2年)と木下貴輪(3年)との同校対決で藤波が制し初優勝。125㎏級のボルチン・オレッグ(4年 カザフスタン・アスタナ高)はグレコローマンに続き優勝、57㎏級の小柳和也(3年 韮崎工高)が3位に入賞4人が表彰台に上った。そのほかの選手は、優勝を期待された65㎏級の初見智徳主将(4年 千葉・関宿高)はベスト8。上位入賞を狙った86kg級・本村匠(4年 沖縄・浦添高)、97㎏級吉川裕介(4年 茨城・霞ヶ浦高)、125㎏級の宮内(3年 山梨・農林高)もベスト8。同じく86㎏級・石澤誠悠(2年 茨城・霞ヶ浦高)はベスト16だった。他の選手は、3回戦まで進んだ松宮大樹(3年 茨城・霞ヶ浦高)のほかは初戦または2回戦で敗退した。
最終日、57kg級の小柳和也(3年 韮崎工高)は減量も上手く行き、準決勝で敗れるまで軽くシャープな動きでテクニカルフォール2度、フォール3度と抜群の強さで勝ち上がってきた。決勝では小柳和也選手は「前から分が悪い相手で、警戒してしまって攻め込むことができずに守りに入ってしまった。余計な失点が多く、それが無ければ小幡コーチから勝てた試合と言われました」と悔やんだ。インカレでは初の3位、表彰台に上がった。「3位は悔しいですけど、来年は最後のインカレに優勝します」と宣言した。
今大会70㎏級フリースタイルに出場した山梨学院の木下貴輪(3年 鹿児島・鹿屋中央高)と66kg級から階級を上げてこの大会に臨んできた藤波勇飛(2年 三重・いなべ総合高)の強さが際立った。1年の時に準優勝、昨年は優勝し2連覇を狙う木下は決勝戦までの4戦を全て前半だけのテクニカルフォールで勝ち上がり、藤波は、同じ組にこの階級の実力者、高谷大地(4年 拓殖大)と早稲田大学の多胡島伸佳(4年)との激闘を勝ち抜き決勝に進んできた。決勝戦は同校対決となり、手の内を知り尽くしているだけに、ともに主導権を懸けて激しい攻防を繰り返した。緊迫感漂う試合展開に木下は得意の足への早いタックルで攻めるが、藤波は柔らかい身のこなしで凌ぐと、会場からは二人の動きにため息が漏れる。藤波はカウンターなど巧妙な試合運びで徐々に点を積み上げ、結果は8-2のポイントで藤波が昨年の王者木下を下した。藤波勇飛選手は「毎日練習でやっていることもありますし、手の内も分かりきっている中での戦いだったですけど、今回は決勝戦でやるのは雰囲気も違いますし、気の引き締まりもいつもの練習とは違うので、どういう展開になるかと思っていました。試合が始まってみますといつも通りの動きができたので、こういう結果につながり良かったと思います。学生のレベルでは勝たないといけない、勝って当たり前と思っているので、ほっとしている気持ちが大きいです」と話した。一方の木下貴輪選手は「2連覇したかったですけど、いつも練習している相手ですので練習している分、試合ではタイミングが合わなくて攻め込めなかった。何か自分のいいところを見せられればいいと思ったのですけど、勇飛みたいな選手ですといつも処理できなくて点につながらないことが多く、タックルだけではなく、指し崩しをいろいろ組み合わせないと学生レベルで終わってしまうのでそれ以上に行かなければと思っています」と課題を挙げた。藤波は来月フランスで行われる世界ジュニア選手権に2度目の出場のため30日に日本を出発する。藤波選手は「昨年は世界ジュニア選手権のためにインカレに出られなかったので、その前に優勝できたことは励みになります」と昨年準優勝に終わった大会への雪辱を胸に期した。
絶対王者のボルチン・オレッグは26日に優勝した130㎏級グレコローマンスタイルに続き専門の125㎏級に2日目から出場した。初戦の準々決勝、2戦目の準決勝に重量級と思えない身のこなしで簡単に相手を退け決勝戦に進出した。決勝戦の対戦相手は拓殖大の実力者山本泰輝。オレッグは開始30秒、外に出され1ポイントを先取される。2ポイントを返すがすぐに1ポイントを返され2-2で前半を終えた。普段のオレッグらしさが見られず固さが感じられる。後半に入りようやく素早いタックルでバッグを取る持ち味を出すも、相手の守りも固く6-2の判定で逃げ切り優勝した。オレッグは2年ぶり3度目の優勝を果たした。ボルチン・オレッグ選手は「自分の技を出せずにポイントも失った。今回の優勝はそんなにうれしくない。次の試合ではもっと頑張ります」と話した。
フリーの試合を総括して、小幡邦彦コーチは「大会前に想定していた結果より少し悪く、総合的には50点位」と手厳しい。「負けた選手も3位以内に入った選手に少しの差で負けた者が4,5人いるので勝負どころをしっかり押さえれば結果も変わってきたと思います。実際勝負の世界はそんなに甘くないと改めて分かりました」と述べた。「今後のチームの目標は団体の内閣総理大臣杯ですが、今回だめだったところを改善し底上げを図りたいと思います」と2連覇、5度目の優勝を目指す。小幡コーチは世界ジュニア選手権の男子フリースタイルコーチとして藤波選手ら男子日本代表選手とともに30日にフランスに派遣される。
文(K.F)カメラ(平川大雪) 2016.8.28