高校生模擬裁判選手権関東大会
~山学高2年生が2度目の準優勝~
~金丸佳音、大森美紗生さんが審査員特別賞~
模擬裁判を通じて事実を的確に把握し、論理的に意見を構成し、他者にわかりやすく伝える技術を競う「第10回高校生模擬裁判選手権関東大会」が7月30日に東京・弁護士会館内東京地方裁判所で行われ、山梨学院高が準優勝した。競技に果敢に取り組んだ生徒4人に贈られる審査員特別賞に山梨学院チームから金丸佳音さん(2年)と大森美紗生さん(2年)の2人が選出された。この大会は、1つの事件を素材に参加各校が検察チーム、弁護チームを構成し、高校生自身の発想で争点を見つけ出し、整理し、模擬法廷で証人尋問・被告人質問を行い、弁護士などの審査員が立論、立証などを評価、採点し総合得点で勝敗を決める。今回の関東大会には山梨・東京・埼玉・神奈川・静岡から8校が出場、東京地方裁判所の法廷を会場に熱い戦いが繰り広げられた。今年は架空の『結婚詐欺』を題材に検察側、弁論側の立場で主張を競った。
この大会は、1つの事件を素材に法律実務家の支援を受けながら、参加各校が検察チーム・弁護チームを組織し、高校生自身の発想で争点を見つけ出し、整理し、模擬法廷で証人尋問・被告人質問をする。刑事法廷で要求される最低限のルールで参加各校の生徒は検察側と弁護側に分かれ模擬裁判を行う。競技方法と審査対象は、日本弁護士連合会が作成した「教材集」(実際の裁判手続きに則った形の教材)に示された証拠(証拠物や調書)に基づき、出場校が検察側・弁護側の各立場に立って主張・立証活動を行う。シナリオ通りに読んで演じる模擬裁判ではない。参加校は、あらかじめ決められた時間に従って主張・立証活動を行い、審査員が各参加校の立論及び立証の内容を評価して採点し、その総合得点で勝敗を決める。(※開催概要から)
「高校生模擬裁判選手権」は高校生が模擬裁判を通じて事実を的確に把握し、多面的な視点で考える力、事実に基づいて論理的に意見を構成する力、意見をわかりやすく他者に伝える力を育成するなどを目的に日本弁護士連合会が主催して今回で10回を数える。山梨学院高は第2回から山梨県を代表して大会に出場、過去に1度準優勝を果たしている。今回の出場に関しては、6月初旬に学内公募を行い7人が手を挙げた。出場者の7人(右から)は、海老根ミーシャさん(特進コースG系列)、金丸鉄馬さん(G系列)、金丸佳音さん(特進コースP系列)、芹沢聡士さん(G系列)、大森美紗生さん(G系列)、中村友哉さん(G系列)、林佑樹さん(G系列)。参加の動機はそれぞれだが、メンバーに集まってもらい当時の話を聞いた。
大会当日法事で出場できなくなったが、前日の夜遅くまでメンバーとともに活動した検察側の海老根ミーシャさんは「演劇関係の仕事に就きたいのですが、模擬裁判で演じることに繋がるかなと思い参加しました」。弁護側の大森美紗生さんは「元々、話すのが上手ではなく、模擬裁判で弁論や尋問を書くときに物事の裏づけを考えながらまとめることにより、普段の発言に繋がるかなと思い、良い機会だと思い参加しました」。弁護側の林佑樹さんは「将来の夢が小学校の先生なので、教育の場面でより多くの経験を積んでいたほうが子どもたちにいろいろ教えてあげることができると思い参加しました」と話した。
6月下旬に出場が決まり7月上旬から本格的に準備作業に入り、1ヶ月後の本番に臨んだ。大会には5都県から8校が出場。日本弁護士会から提示された教材は『結婚詐欺』。
『将来を約束したはずの男女。女が結婚する気もない相手を欺き金銭を振り込ませ、当時交際していた男の借金に当てようと企てた結婚詐欺事件』。女性被告人を検察側と弁護側に分れ真相に迫る。メンバーは事前に渡された起訴状や資料などを基に山梨県弁護士会の支援弁護士のアドバイスを受けながら、争点などを考えた。検察側の金丸佳音さんは「支援弁護士さんがアドバイスをしてくれて、それが無ければぐしゃぐしゃでまとまりがつかなかったと思います。大変な助けになりました」と感謝した。弁護側の中村友哉さんは「弁論とか論告の内容にあたり、裁判官に伝わりやすくしなくてはいけないから文の構成とかをよく指摘されました。『弁護側だから先に良い点の情報をなるべく多くして悪い点は添える程度に抑える事』などとアドバイスを受けました」と話した。検察側の芹沢聡士さんは「論告をまとめたのですけど、証言、質問、弁論とメンバーが考えた全ての文に目を通して、いくつかの根拠を挙げて立証の準備をしました」と話した。それでもメンバーは、準備に不備はないか不安が募った。本番前、「焦りだしたのは3日前に山梨学院大の模擬法廷を借りて1回通し練習したのですが、余りの出来の悪さにもう1度やり直さねばいけないと、考え直して家でも練習しました」と海老根ミーシャさんは話した。
そして7月30日大会当日。午前中に検察側として静岡県の沼津中央高校、午後に弁護側として埼玉県・早稲田大本庄高校と対戦した。模擬裁判選手権は、約1時間強で終了させねばならない対抗戦であるため、検察側と弁護側に分かれ互いに、限られた時間で知力を尽くして証人尋問・被告人質問の応酬が繰り広げられる過酷な闘い。
検察側の金丸鉄馬さんは「僕は冒頭陳述を行ったので質問とか論告はしていないのですが、棒読みではなく、裁判官にしっかり伝わるようにしました」。金丸佳音さんは「質問は用意してあり、こういう質問をしたら、このように反対質問をすると作ってあったのですが、解答が全く違ったときに素早く違うことを考えなくてはならないときに頭がいっぱいになってしまい、被告人の言葉を聞き取って返すことが難しかった」と話した。大森美紗生さんは「本番前に甲府地裁で実際の裁判を見に行き傍聴席からの様子とは全然違い、東京地裁という大きな場で自分が法廷に立ってやることにすごく緊張してしまい、弁護士の人や裁判に係わる人たちの前で模擬裁判をすることは初めての経験ですし、金丸さんが言ったように作ってきたとはいえ、ほとんどアドリブで頭をフル回転して臨んだことは16年間でこれだけ頭を使ったのは初めてですごい経験でした。」中村友哉さんは「本番では思い通りに応えてくれるとは限らないので大変でした。失言してしまったらそれを言わせないようにしなければいけない」とそれぞれ大変さを語った。
弁護士、法廷記者、大学教授らの審査員が各参加校の立論や立証の内容を評価、採点の結果、山梨学院高は、神奈川県の湘南白百合学園高に次ぐ準優勝になった。各法廷(4)から1人ずつ選ばれる審査員特別賞に検察側の金丸佳音さん、弁護側の大森美紗生さんが選ばれた。
模擬裁判の様子を見守った担当の小野真和教諭は「本校の生徒は落ち着いた感じで入れて的確に質問もでき、地に足をつけた裁判ができたのではないかと感じました。その場で考えて質問を組み立てたり、順番を変えたり新たに質問を加えたり、相手の質問に対して臨機応変に落ち着いて対応できていました。そこが評価の高いポイントになったと思います」と振り返った。
やり終えてメンバーたちは「一つのことに一生懸命になることができた。何事にもやればできる。自分の限界が突破できたかなと思う」。「1時間以上のやり取りだったというが、一瞬のように感じた。瞬きする間も無いくらい全部を思い出せる」。「法廷の空気が違って感じられた。張り詰めた緊張感の中に清々しさがありました」。「すごく大変で『もうやめたい』と何度も思いましたが、今は勉強にもなり夏休みの楽しい思い出にもなり、一石二鳥の出来事でした」とそれぞれが感想を寄せた。
文・カメラ(K.F) 写真提供(山梨学院高校)
2016.9.1