天皇杯全日本サッカー選手権 2回戦
~山学大オリオンズがJ1湘南に挑む~
~前半立ち上がり失点し0対6と完敗~
第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦が各地で行われ、山学勢初の初戦突破を果たした山梨学院大オリオンズは、9月3日にShonan BMWスタジアム平塚で、湘南ベルマーレ(J1)と対戦した。試合は、前半立ち上がりから湘南が試合の主導権を握り、前半1分、右サイドからクロス気味のシュートで先制を許すと、8分には左CKでのクロスプレーで失点。12分には左サイドから中央付近へパスをつながれ、最後はファーストタッチでシュートを放たれ3点目の失点。一矢報いたい山学は、インターセプトやカウンターから攻撃の起点を作り、湘南陣内に攻め込むが、厳しいプレスや組織的な守備で得点に結びつかない。山学は、15分以降はGK一瀬幹の果敢な飛び出しやDF永野博之を中心に体を張った守備で追加点を許さず、0対3で前半を折り返す。エンドが変わった後半も湘南の猛攻は続き、後半27分、37分、41分に失点。山学イレブンは最後まで得点を目指すが、ゴール前での決定機に欠き得点を奪えず、0対6で試合終了。完敗したものの、試合後、湘南サポーターからは、最後まで戦い抜いた山学イレブンの懸命なプレーに盛大な拍手と温かいエールが送られた。
今年の天皇杯サッカーには大学チームが16チーム出場し、このうち3チームが2回戦に駒を進めた。この3チームのうちのひとつ、山梨学院大オリオンズは、1回戦で栃木ウーヴァFC(JFL)と対戦し、延長1対1・PK戦4対3で勝利し、山梨県勢としては10年ぶり、山学勢としては初めて初戦突破し、2回戦に進出した。対する湘南はJ1に所属し現在年間総合では17位。過去にはフジタ工業サッカー部時代に2回、ベルマーレ平塚時代に1回、天皇杯優勝に輝いている。1回戦以上に厳しい戦いが予想されたが、山学イレブンは一丸となり戦いに臨んだ。
第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦 ≪山梨学院大オリオンズvs湘南ベルマーレ≫ 2016.9.3 19:00kick off 会場:Shonan BMWスタジアム平塚 | ||
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● 山学大オリオンズ 0 | 前半 0-3 後半 0-3 |
6 湘南ベルマーレ ○ |
試合は、前半立ち上がりから湘南が試合の主導権を握る。前半1分、甘く入ってプレスをかわされ、右サイドからのクロス気味のシュートで先制を許すと、8分には左CKから1度はクリアしたものの押し込まれ失点。11分には左サイドからファーサイドに入ったクロスを頭で合わされたものの、山学GKの一瀬幹(2年 山梨学院高)が好セーブ。この猛攻を凌いだ1分後、左サイドからの中央付近へパスをつながれ、最後はファーストタッチでシュートを放たれ3点目の失点。一矢報いたい山学は、インターセプトやカウンターから攻撃の起点を作り、湘南陣内に攻め込むが、厳しいプレスや組織的な守備で得点に結びつかない。山学は、15分以降はGK一瀬の果敢な飛び出しやゲームキャプテン永野博之(3年 築陽学園高)を 中心とするDF陣の体を張った守備で追加点を許さず、0対3で前半を折り返す。エンドが変わった後半、湘南は裏への飛び出しを狙うが、山学DF陣は初戦同様にオフサイドの見極めを図り攻撃の芽を摘んでいく。後半6分、ペナルティアーク付近からのFKには7枚の壁を築きゴールを守りきる。その後も湘南の猛攻が続くが、DF陣以外も守備に加わり耐えていく。後半は防戦一方となったが、少ないチャンスをものにしようと山学イレブンはショートカウンターからボールを繋ぎ、必死に相手ゴールを目指す。27分、右サイドからのクロスが山学DF陣の裏のスペースに入り、そのままボールはゴールに吸い込まれ4点目を失点。37分には右からのCKを頭で合わされ失点。41分には同じく右CKから 今度は足で合わされ失点。山学イレブンは得点を目指し、少ないチャンスからゴール前まで攻め込むがバイタルエリアやペナルティエリアでの決定機に欠き得点を奪えず、0対6で試合終了。山学の選手たちは最後の笛が鳴るまで諦めずにゴールを目指しボールを追ったが、J1の格上相手に得点を奪うことができず完敗した。スタンドに挨拶に向かった選手たちは悔しさを滲ませながらも全てを出しきりやりきった清々しい表情をしていた。湘南サポーターからは、最後まで戦い抜いた山学イレブンに盛大な拍手と温かいエールが送られた。
試合後の記者会見で、武井雅之監督は「立ち上がり10分の怖さを知るゲームでした。入りは勝ちを目指してやっていたのですが、やはり個人の技術では適わず、少しでも隙を作るとやられてしまい、特に一瞬一瞬の集中力やプレッシャーの甘さ、プレスのスピードなどが足りない部分だと思うので、チームに持ち帰ってトレーニングしたいと思います。一方で、チームとして相手を見て個の部分で判断していくことは意識してトレーニングしてきて、その中で相手のボールを奪って前を向いて行くとか、カウンターでシュートまで行くとか彼らが努力してきた部分は出せたかなと感じます」と試合を振り返り、今後について「この大会を通じてJFLのウーヴァさん、J1の湘南さんと対戦する中で、みんなが掴み取った挑戦権を格上相手に最後までチャレンジしてくれて、その勇敢さは称えたいと思います。彼らは、これで終わりではなくて、まだ明るい未来が待っていますので、もっともっと大きなチャレンジをして貰いたいですし、きょうの試合で出せた良い部分はもっと成功率があがるようにやってもらいたいと思います。また、きょうの試合で足りなかった所は、オリオンズだけでなく、山梨学院大学サッカー部として還元して大学サッカー部として発展、成長をしていきたいと思います」と述べた。
ミックスゾーンで取材に応じた山梨学院大サッカー部の塚田雄二監督は「試合に入る前に、最初の10分について話をしたが、その10分で今までの相手と違い、少しの間合いで得点につながってしまった。自分たちは詰めているつもりでも、J1の選手では、まだスペースがあり、余裕があった。選手たちには良い経験になったと思いますので、またトレーニングで一から積み上げていきたいと思います」と語った。ゲームキャプテンを務めた永野博之選手は開口一番「めちゃくちゃ悔しいです。もう少しやれた部分はあったと思うし、自分としては不完全燃焼ですが、普段できない経験ができて楽しかったです」と話し「相手は格上なので、一つ一つのチャンスをものにしないと勝てないだろうし、特に後ろは集中しないとやられてしまうと思っていましたが、自分たちはプロと対戦したことがなくて、立ち上がりは気持ちの面で負けていたかもしれません。その中で、守備は自信をもってやっていて、ショートカウンターも何度か成功したけど決め切れなかった部分もあり、一方で相手はしっかりと決めてきて実力の差を感じました」と試合を振り返り、今後について「自分も含めてみんな小さい頃からプロは憧れの存在で、そのプロと対戦できて自分のプレーの 通用する所、通用しない所が分かったので、“良い経験だった”ではなくて、練習して自分の力に変えていきたいです」と語った。
文(Y.Y)、カメラ(藤原 稔)2016.9.3