第48回全日本大学駅伝対校選手権大会
~秋の伊勢路で日本一を競う~
~山梨学院8年ぶり3位上位入賞~
「秩父宮杯第48回全日本大学駅伝対校選手権大会」が11月6日、愛知県・熱田神宮前をスタート、三重県・伊勢神宮前をゴールに8区間、全長106.8kmで競われた。シード校6校と全国8地区の選考会を勝ち抜いた19校、全日本大学選抜、東海学連選抜を加えた27チームが出場、秋の伊勢路で大学駅伝日本一を競った。山梨学院大は昨年、シード権が懸かる6位の明治大との競い合いに僅か5秒及ばずシード権を逃した。今年6月の全日本大学駅伝競走関東地区大会を1位通過し、5大会連続29回目となる今大会に臨んだ。山梨学院は1区に出雲駅伝と同様、上田健太(3年)を投入。6位とまずまずの順位で2区佐藤孝哉(4年)に繋ぐと佐藤は持ち前の粘りで順位を一つ上げ、戦闘態勢に入った。3区は10月の出雲駅伝で力を発揮できなかった秦将吾副主将(4年)がスピードを活かした快走で順位を3位に押し上げた。途中順位を7位まで下げたが最終8区のドミニク・ニャイロに5位で繋ぎ、ニャイロの走りに優勝を託したが、差を大きく詰めたものの及ばず3位でゴール、シード権を獲得した。大会は青山学院大が初優勝を飾り、出雲駅伝と合わせ二冠を達成した。
大学三大駅伝の2戦目となるレース、「全日本大学駅伝対校選手権」は1970年に始まり、今年で48回目を数える。先日行われた「出雲」、正月の「箱根駅伝」と並び大学三大駅伝と呼ばれている。全日本大学駅伝は全8区間106.8kmと距離も伸び、スタミナと総合力が求められる勝負となる。山梨学院大は昨年、シード権が懸かる6位の明治大に僅か5秒及ばずシード権を逃し、涙を飲んだ。今年6月の予選会、全日本大学駅伝競走関東地区大会を万全の1位通過し、5大会連続29回目となる今大会に臨んだ。出雲では優勝も視野に入れていての2位だっただけに悔しい思いをこの全日本にぶつけ、最低限でもシード権獲得、それ以上を目指し秋の伊勢路を疾走した。
午前8時0分。名古屋市熱田神宮前のスタート地点のコンディションは、気温13度、湿度68%。午前8時05分、号砲とともにシード校6校と全国8地区の選考会を勝ち抜いた19校、全日本大学選抜、東海学連選抜を加えた27チームが一斉にスタート。8区間で大学日本一を競う熱い戦いが始まった。スタート地点には各大学の応援団が陣取り母校の勝利を信じ、選手を送り出した。山梨学院も『応援部』を中心に多くの関係者が集まり熱い声援を送った。
◆第1区《愛知県・熱田神宮西門前~弥富市筏川橋西詰 14.6km》
上田健太(3年 山梨・山梨学院高)44分02秒 [区間6位]
総合:44分02秒 [6位]
1区に抜擢された上田健太は、昨年の出雲で駅伝デビューし、続く全日本、箱根、先日の出雲と結果を残し、今や山梨学院の中心選手に成長した。出雲では1位と3秒差の3位と上々の役目を果たし、この全日本でもレースの流れをつくる大役を担った。各大学も主導権を握りたい重要区間だけにエースクラスを揃えた。レースは序盤スローペースで進む。上田は集団の中で様子を窺う。中間点の給水点で東洋大が仕掛ける。上田は第2集団で一時は集団を引っ張り、先頭の背中を追いかけるも最後は混戦から交わされトップの東洋から遅れること28秒差6位シード権圏内で2区に繋いだ。上田健太選手は「自分の中では青学さんとのタイム差を一番気にして走っていたのですけど、それが裏目に出てトップとの差を30秒近く離されるというのは、少し詰めが甘かったと思います。青学さんよりは絶対前で渡そうと一番に考え走りました」とライバルとの戦いに火花を散らした。
◆第2区《弥富市筏川橋西詰~三重県・川越町高松 13.2km》
佐藤孝哉(4年 島根・出雲工業)38分44秒 [区間5位]
総合:1時間22分46秒 [5位]
2区を託された佐藤孝哉(4年)は、昨年のこの大会でも2区を走り、12位と本来の走りができず、流れを引き寄せることができなかった。先日の出雲駅伝も不本意なレース展開を反省。「積極的な走りはしたつもりだったですけど、今回の結果を見てまだまだ足りないなと感じました。ロードが少し弱いのでこれから強化していこうと思います」と課題を挙げていた。佐藤孝哉は元々粘り強く安定した走りで陸上競技部の日本人エース。チームメイトの信頼も厚く再び2区に挑んだ。出雲の反省を踏まえ佐藤は、序盤から積極的に飛ばす。4km付近、3校による集団で3位の駒澤大に追い付き上位争いに喰らいつく。6km付近では先頭と14秒差まで詰める4位の快走を見せ、その後も粘りの走りで10km過ぎ、再び3位争いを繰り広げる。最後は振り切られたものの5位。トップには若干差を広げられ35秒差で3区に襷を繋いだ。佐藤孝哉選手は「前半は設定どおりのペースで行くことができたが、後半から落ちてしまいニャイロを活かすことができなかった。いい走りはできたと思いますが、優勝争いするためには1位が見えていなければという状況でした」と振り返った。
◆第3区《川越町高松~四日市市六呂見 9.5km》
秦 将吾(4年 愛媛・今治北高)27分30秒 [区間3位]
総合:1時間50分16秒 [3位]
3区は最も短い距離でスピード区間と言われる。2区と4区の主要区間に挟まれ、秦将吾副主将の持ち前のスピードを活かした堅実な走りでさらに順位を上げたいところ。出雲駅伝では1区のいい流れを繋げず後続に負の影響を与えてしまったことを課題に挙げ、1ヶ月間スピードに加えスタミナ強化を図り雪辱を期し立ち向かった。5位で襷を受け取った秦は落ち着いて前を追い、2km付近では4校の集団での3位争いを展開。7kmの大きな登りで単独3位に順位を上げると前を行く背中を追い、優勝争いの大本命、2位の青山学院と22秒差と大幅に縮める3位で襷を繋ぎ、出雲の借りを返す快走で4区に繋いだ。
◆第4区《四日市市六呂見~鈴鹿市寺家 14.0km》
市谷龍太郎(3年 山梨・山梨学院高)41分54秒 [区間7位]
総合:2時間32分10秒 [4位]
市谷龍太郎は、出雲駅伝で4区を走り、区間新を塗り変えたが、ほかに4人が市谷を上回るタイムを出すハイレベルなレースで区間5位になるほど大学駅伝は高速化が進んだ。山梨学院高校の全国大会優勝メンバーで唯一1年生のとき全国大学駅伝出場を果し、箱根駅伝にも出場した市谷龍太郎(3年)は、上田誠仁監督の信頼も厚く、2年生のときは三大駅伝にすべて出場した。今や山梨学院大陸上競技部にとってなくてはならない存在となっている。3位で襷を受け取った市谷は冷静に前を行く青山学院を追う。5km、7km快調に飛ばす。一時は2位の背中が大きくなるほど差を詰めたものの後半伸びず、逆に差を広げられ、その後中央学院大に追い付かれ、4位に後退した。
◆第5区《鈴鹿市寺家~津市上浜町 11.6km》
熊代拓也(4年 和歌山・和歌山北高) 36分14秒 [区間13位]
総合:3時間08分24秒 [7位]
5区を任されたのは、熊代拓也。ここからの区間は最終区間までの繋ぎ区間と言われ、いかに順位を落とさず前からも離されず走る安定感を求められる。熊代は4位で襷を受け、4年生の安定した走りを期待された。しかし、気温が上がり風の影響もあり、ペースが上がらず駒澤大に抜かれ5位に。続いて東洋大にもかわされ一時は6位に後退。その後挽回し、東洋を抜き返すも再びかわされ、さらに中継所直前中央学院大にも抜かれ7位で6区に繋いだ。今大会初めてシード権圏外に順位を落とした。レース後上田監督は「4区、5区で傷口を大きくした」と残念がった。
◆第6区《津市上浜町~松阪市曽原町 12.3km》
永戸 聖(2年 岩手・盛岡工高)36分17秒 [区間5位]
総合:3時間44分41秒 [5位]
6区の永戸聖は、6月の全国大学駅伝の予選会で10000mの自己新を記録。9月24日に行われた日体大記録会でも自己新を1分25秒も更新する伸び盛りの選手。三大駅伝の幕開け出雲駅伝に大抜擢され初出場し、区間3位と華々しい好走を見せ、山梨学院の2位に貢献した。今大会、2度目の駅伝に挑んだ。7位でスタートした永戸は前半少し抑え気味に走り徐々にペースを上げると、10km付近で前を行く東洋大に追いつき5位グループを形成。残りの距離も快調に飛ばし5位で襷を渡した。トップとの差は3分8秒。永戸聖選手は「後半の走りは非常に良かったと思いますが、前半に前を縮めることができなかった。もう少し前半に突っ込んでいければ上に近づけた。前半速く入ると後半が怖くなってしまうので、そこが自分の反省点です」と課題を挙げた。
◆第7区《松坂市曽原町~松阪市豊原町 11.9km》
河村知樹(3年 山梨・山梨学院高) 35分26秒 [区間7位]
総合:4時間20分07秒 [5位]
7区は昨年もこの区間を走り4位と好走した河村知樹が抜擢された。持ちタイムは決して速くはないが、ロードでの安定した走りに定評があり、最終区の控えるニャイロが順位をあげるためには、河村の堅実な走りで少しでも差を縮めておきたい。レースは必死に前を追いかけるも差は縮まらず5位3分29秒差で最終8区、ニャイロに全てを託した。
◆第8区《松阪市豊原町~伊勢神宮内宮宇治橋前 19.7km》
ドミニク・ニャイロ(2年 ケニア・メサビサビ高)56分43秒 [区間1位]
総合:5時間16分50秒 [3位]
山梨学院大陸上競技部の10人目の留学生になったドミニク・ニャイロは、来日した時の持ちタイムは10000m28分58秒。現在の10000mのタイムは27分56秒47と大幅に更新、大会での成績も常に上位に君臨、潜在能力の高さを見せる。文字通りエースとなり山梨学院を牽引している。10月の出雲駅伝でも最終区で抜群の強さを見せつけ、山梨学院を2年連続の2位に押し上げた。レースは河村から5位で襷を受け継ぐと猛烈な勢いで前を追った。まず1.5km付近で先を行く中央学院大を捉えると、5km過ぎで駒澤大を抜き去った。しかし第7中継所で襷を受け取った時、トップを行く早稲田大との差は3分29秒。途中、トップは青山学院に変わり差を徐々に詰めるも優勝争いに絡むには非常に厳しい状況。それでもニャイロはひたすら前を追い、トップの青山との差を1分35秒まで詰め3位でゴールした。ドミニク・ニャイロ選手は「優勝できなかった。悔しいです。17km付近の大きな坂でペースアップできなかった。風が強かった」と無念さを滲ませた。
レース後、上田誠仁監督は「前を追ってやるという気持ちが前面に出た走りをしてくれた何人かの選手がいたので、これは小さな芽がでてきたなと思います。この小さな芽を持ち帰り、どのように育てるかだと思います。反省点だけを持ち帰ってもチームは変えられませんので、反省から課題をどう見つけ活かすかだと思う」と話した。報告会での応援の方々への挨拶では「春先で決めた三大駅伝優勝という目標は、軌道修正することなく優勝を目標にしてこれからの2ヶ月間頑張っていきたいと思います」と決意を述べた。
今大会の結果は、1位・青山学院大、2位・早稲田大、3位・山梨学院大、4位・駒澤大、5位・中央学院大、6位・東洋大となった。ここまでが来年のシード校となる。
文(K.F)カメラ(平川大雪・藤原 稔・Y.Y)2016.11.6