●山学甲斐の古道プロジェクト「甲斐の古道を歩く」
~初の「フィールド体験プログラム」を実施~
~秋の「青梅街道」山梨市駅から塩山駅を辿る~
山梨学院「甲斐の古道プロジェクト委員会」は11月15日、「フィールド体験プログラム」として山梨市駅から塩山駅までの行程で「青梅街道」の古道を辿った。学校法人山梨学院は、山梨学院大など関連施設のある「酒折」の地が、江戸時代後期に編纂された『甲斐國志』に「甲斐の国から他国へ通じる道は9筋あり、それらはみな酒折を起点としている(現代訳)」と記載されていることから創立70周年地域貢献事業の一つとして2013年秋に「甲斐の古道プロジェクト委員会」を発足させ、民族学的学術調査を行ってきた。今回の企画は山梨学院の「甲斐の古道プロジェクト委員会」と「山梨学院生涯学習センター」が広く地域の人たちに活動の一環として実際に歴史や現地を知ってもらうため、初めて「フィールド体験プログラム~青梅街道を辿る~」を実施した。山梨市駅から塩山駅までの行程で街道筋の路傍の面影、社寺、石造文化財などが残る箇所を辿り、山梨学院大の二人の講師が、20人の参加者に所々で文化遺産や当時の様子などを説明。参加者は熱心に耳を傾けメモを取り、カメラに収めたりしながら当時の歴史を学んでいた。
学校法人山梨学院の大学や関連施設がある「酒折」の地が、江戸時代後期に編纂された『甲斐國志』によると、「本州九筋ヨリ他州へ達する道路九条アリ皆路首ヲ酒折ニ起ス」(巻ノ一「提要部」(甲斐の国から他国へ通じる道は9筋あり、それらはみな酒折を起点としている)と記載されている。「道路九条」というのが「甲斐九筋」であり、江戸時代以前から甲斐の国にあった古道と地域区分の総称。甲斐九筋は河内(駿州往還)、右左口(中道往還)、若彦路、御坂路(鎌倉街道)、萩原路(青梅街道)、雁坂路(秩父往還)、穂坂路、大門嶺口(棒道)、逸見路(信州往還)の9路をいう。大学がある酒折地区が古来より周辺諸国に通じる交通の要衝であったことから学校法人山梨学院は「甲斐の古道プロジェクト委員会」を発足させ、古道の現況調査に取り組んでいる。十菱駿武山梨学院大学客員教授・甲斐の古道プロジェクト委員は「戦国時代から軍道などは、ほぼ城下町から来ていますから、大部分は酒折、横根から発していることは間違いないと思います。この地域は古代からの屋敷や人々が集まる市があったりした場所で交通の要所で、「衢」(ちまた=賑わい。交流の場)という要所であった」と説明した。甲斐の古道プロジェクト委員会では、すでに青梅街道、雁坂路、御坂路、若彦路の調査を終え、現在、5路目の中道往還の調査終盤に至っている。
その「甲斐の古道プロジェクト委員会」は、今回初めて、広く地域の人たちに古道の時代変遷や史跡などを身近に体験してもらおうと「フィールド体験プログラム」を企画した。初回は11月15日に「青梅街道を辿る」を実施した。青梅街道は、甲府市酒折山崎三叉路を起点にし、横根、桜井(甲府)、松本、別田(笛吹)、上神内川、小原(山梨)、下塩後、千野、上萩原(塩山)などを通り、大菩薩峠を経て、丹波山、青梅、やがて内藤新宿で甲州街道と合流する。商業的交易が行われた甲州街道が主要道路のため、「甲州街道の裏街道」とも呼ばれた。青梅街道は関所がないため、庶民の旅客にも多く利用された。今回のプログラムは、JR山梨市駅からJR塩山駅までの約8kmの古道を山梨学院大学の十菱駿武山梨学院大学客員教授と保坂康夫非常勤講師の2人の講師とともに辿り古を偲び、歴史を勉強するもの。見学する経路は山梨市駅前にある青梅街道道標を確認し、小原の大井俣神社、東山梨の八日町市場、連方屋敷、国宝清白寺、その後、甲州市塩山下塩後で道祖神や塚などを見学、向嶽寺、菅田天神社、甘草屋敷など古道沿いの石造文化財や貴重な歴史建造物を辿るコース。15日午前10時山梨市駅に集合した20人の参加者は、講師2人の案内で、穏やかな日差しの下、旧青梅街道をゆっくりと歩を進めた。時折、道端で道標、道祖神など路傍の片隅に置かれた石造物に出会い、土からアスファルトに変わっても風情ある古道の落葉を踏みしめ歩いた。参加者は2人の講師の説明に熱心に耳を傾け、古道や歴史、文化財への興味関心の高さを見せていた。
講師の十菱駿武山梨学院大学客員教授・甲斐の古道プロジェクト委員は「道ができたからこそ、屋敷ができたし、集落ができ街道筋の道もできた。道があり、それが人々の交流のルートになっていき、年々性格を変えてきています。古代からの道と、戦国時代としては軍道の役割が非常に強く、江戸時代になり安定してから後は、物資の交流、人々の旅の道ということになってきた」と道の役割を語った。参加者には「当時の路傍にある石造文化財などには物語が秘められています。そういう物語や歴史を古道を歩くことによって、辿っていきそれをまた、現代の生活空間の特徴に生かしていきたいと思っています。街道調査の結果を分かり易く現地で説明しますので、学んでいって頂きたい」と企画の主旨を語った。参加者の一人、甲府市在住の山村国浩さんは「山梨市、塩山をこんなにゆったり歩いたことは初めてで、非常に歴史的にも趣のあるところだし、とても勉強になりました。当時の人たちが生活できたので我々がいる訳ですから、まあ先人に学ぶということ感じで歩ければと思います」と感想を語った。昨年東京から塩山に移り住んだという女性は「私が生活しているところにどんな歴史があるか知りたく参加しました。面白いですね。こんなに近くにこういうものがあったんだと、昔から人々の生活があったのだと改めて感じました」と話した。山梨学院古道プロジェクト委員会による初めての「フィールド体験プログラム~青梅街道を辿る~」を参加者は所々で当時の面影を偲び、踏みしめる落ち葉の先の路傍の文化財と対話しながら、約6時間、8kmを超える行程を満足げに秋の1日を散策した。
山梨学院古道プロジェクト委員会は今回評判が良かったことで、次回は「雁坂路(秩父往還)」(予定)を辿りたいとしている。
文・カメラ(K.F) 2016.11.16