●2016関東高等学校駅伝競走大会
~男子、山梨県勢初の優勝。2位に大差をつける~
~女子惜しくも3位。1区小笠原区間賞。~
平成28年度「男子69回・女子25回関東高等学校駅伝競走大会」が11月19日、群馬県伊勢崎市陸上競技場をスタート・フィニッシュとする周回コース(男子42.195km、女子21.095km)で行われた。男子は48チームが7区間、女子は48チーム、5区間で関東1位を懸けて争った。山梨学院高は、10月29日に富士河口湖町西湖湖畔で行われた山梨県大会で男子は6年連続、女子は8年連続優勝、ともに16回目となる全国大会(都大路)出場権を獲得した。関東大会は強豪が集まり全国大会を占う試金石として挑んだ。男子は、昨年、17位と苦しみを味わった。今大会は出場校中、持ちタイムが1位と万全の体制で臨んだレースは、1区、安定した走りが持ち味の深澤亮哉(3年)は、1位の差、30秒とまずまずの順位20位で2区に繋いだ。2区の飯澤千翔(1年)は、区間4位の走りで順位を17位に上げ、3区の八重畑龍和(2年)は、驚異の15人抜きを演じ2位に押し上げた。さらに故障が癒えた4区飯島圭吾(3年)は、快調な走りを見せ1位に躍り出た。続く、5区長谷川孝太(3年)、6区志村仁夢(3年)、最終7区吉田巧(3年)も快走を見せ、2位に21秒差、約100mの大差をつけ初優勝を飾った。これは山梨県勢初となる快挙となる。女子は、県大会とほぼ同じメンバーで臨んだ。1区は国体1500mで8位入賞と1年生ながらチームのエース小笠原朱里(1年)が抜群の強さを発揮。1位で2区眞田ひまり(1年)に襷を渡した。2区、3区と1位をキープするが4区で追いすがる白鴎大足利高(栃木)にかわされ2位に後退。最終5区、逆転の願いを込めて唯一3年生の正田渚(3年)はただ前を見据え、1位の背中を追うも、3位から追ってきた常磐高(群馬)に捉えられ、3位に後退。常磐高は白鴎大足利高も抜き去り優勝のテープを切った。山梨学院は1位と36秒差の3位となった。優勝はできなかったものの、実力ある伸び盛りの1年生が引っ張り、それを3年生が堅実な走りでチームをまとめ上げ、納得の3位となった。
■男子堂々の初優勝。選手層の底上げで、一昨年、昨年の低迷を払拭する。
◆男子成績《42,195km》 優勝*山梨学院高 タイム*2時間05分56秒
区間 | 氏名 | 距離 | 区間タイム | 区間 | 合計タイム | 総合 |
1区 | 深澤亮哉(3年) | 10,000m | 30,05 | 20位 | 30,05 | 20位 |
2区 | 飯澤千翔(1年) | 3,000m | 8,43 | 4位 | 38,48 | 17位 |
3区 | 八重畑龍和(2年) | 8,1075m | 24,01 | 2位 | 1:02,49 | 2位 |
4区 | 飯島圭吾(3年) | 8,0875m | 24,21 | 2位 | 1:27,10 | 1位 |
5区 | 長谷川孝太(3年) | 3,000m | 8,42 | 3位 | 1:35,52 | 1位 |
6区 | 志村仁夢(3年) | 5,000m | 15,03 | 2位 | 1:50,55 | 1位 |
7区 | 吉田 巧(3年) | 5,000m | 15,01 | 6位 | 2:05,56 | 1位 |
男子のスタート前、雨は上がったものの、曇り空、気温は10度と駅伝にはまずまずのコンディション。正午に男子のレースがスタートした。1区で起用された深澤亮哉(3年)は混戦の中で20位と順位的には満足はできない結果だったが、「順位よりは先頭やマークしていたチームとの差は意識していたので、1区のレースプランとして監督と打ち合わせ通りでき、自分的には合格ラインで良かったです」とレースを組み立てた。中位で襷を受け取った飯澤千翔(1年)は3kmのスピード区間でしっかりとまとめ区間4位で17位に順位を上げた。飯澤千翔選手は「目標としては区間賞を狙って、市立船橋を目安に走れと言われていたのですが、途中で抜かれ、ついていたのですがスタミナが切れてしまい力を発揮できなかった。そこが自分の弱さと思うので、都大路までには時間もあるので切り替えて区間賞狙えるように頑張ります」と話した。3区の八重畑龍和(2年)が激走した。17位で襷を受け取るや猛然と前を追った。一人、二人・・・。次々と抜き去り、後半の唯一の登り坂を余裕の表情で8位で通過。さらにピッチを上げ、2位まで順位を上げる15人抜きを演じた。八重畑龍和選手は「優勝を狙うとずっと決めていたので、そのためにも前を追うしかないと思い、タイムとか何も気にせず、前を追い続けました。優勝はうれしくて、このようなことも経験できたのも周りの支えがあってのことなので、都大路でも上位を狙えるように頑張りたいです」と意気込んだ。4区の飯島圭吾(3年)は、夏場に疲労骨折となり、復帰レースとなった県大会では短めの5km区間を走り、復調ぶりをアピール。この大会では4区8.0875kmに挑んだ。まだ若干の不安が残る体調も気にせず、快調に飛ばし、2位で繋いだ襷を1位に押し上げた。飯島圭吾選手は「大会前から優勝しか見てなかったので今回狙った大会で優勝できたことは、本当にうれしいです。今まで8km、10km区間の長距離区間がうちはハイペースの流れから弾き出されることが多かったですけど、今回は粘れて優勝に繋がったと思うのでいい収穫だったと思います」と話した。5区のスピード区間で3位とトップを堅守した長谷川孝太選手は「1位で来たら後ろとの差を広げる。2位、3位、4位で来たら前を追うということだけしか考えていませんでした。今日は最初に突っ込んで後は粘るというレースができたと思います。初優勝なので、先輩たちがなし得なかった優勝ができたのでうれしいです」と興奮気味に語った。6区志村仁夢選手は2位との差をさらに広げる好走を見せた。「区間賞を狙って走ったのですけど、区間2位は少し悔しいです。前半ピッチは良かったですけど、後半で少し落ちてしまったことに課題が残りますけど、チームの総合力としては、みんなすごくいい走りができたと思うので、自信にしていきたいと思います」。さらに都大路については「一昨年、昨年とだめだったので、今までの山梨学院ではないということがここで証明できたので、挑戦者の気持ちで臨みたい」と闘志を燃やす。最終7区、最後の競り合いが強いことでアンカーを任された吉田巧選手は「前の区間の選手が1位で襷を持って来てくれて、とても走りやすい位置で来てくれたので自分は1位をキープしてゴールを目指そうと走りました。前半突っ込んでしまったのですけど、後半粘ったと思うので良かったです」と話した。
箱崎孝久監督は「普段は口に出さないですけど、昨日から“勝つぞ、勝つぞ”と言い聞かせていました。今回は狙っていましたので、選手みんな良く走ってくれました。今日は特に3・4区の長い期間で勝負できたことが良かった。ここで気を緩めないで全国では上位を目指し頑張ってもらいたい」と期待を寄せた。選手のやる気がレベルアップに繋がり、選手層の底上げが奏功した。前に出たら後ろを離す。前に選手がいたら追う。シンプルな戦術に勝負の本質がある。
◆女子、1年生を軸にしたチームで3位入賞。都大路手堅く入賞ラインを目標
夜半から降り続いた雨は、天気予報では午前中いっぱい続くとされた。しかし、女子のレースが始まる午前10時には、霧雨となり雨中でのレースは回避された。1区に起用されたのは今夏のインターハイ1500mで6位入賞、国体で8位と1年生ながら目覚しい活躍をする小笠原朱里(1年)。スタートで競技場のレーンの右端に位置した小笠原は競技場を1周して周回コースに飛び出た。小笠原は残り2km付近でスパートし、2位に10秒の差をつけ2区に襷を渡した。2区の眞田ひより(1年)は、県大会では同じ2区を走ったが本来の力が出し切れなく2位になった。今大会は違った。前を見て攻めの走りで、さらに後ろとの差を37秒に広げた。3区は、古賀華実(1年)は、貰った差を7秒まで縮められたが1位は死守した。4区は黄川田優香(1年)。ここまで山梨県大会と同じ1年メンバーで構成。黄川田は粘るも成田高(千葉)にかわされ、12秒差をつけられ2位に後退した。最終5区は、終日前に初の高校駅伝出場を告げられた正田渚(3年)。調整不足は否めないものの指揮官の目に狂いはなかった。数日間の本格的な練習で調子を上げた。正田は一人に抜かれたが、期待に応え3位でゴールを切り、12月の全国大会にもう一つの駒ができたと指揮官を喜ばせた。
◆女子成績《21,0975km》 3位*山梨学院高 タイム*1時間10分28秒
区間 | 氏名 | 距離 | 区間タイム | 区間 | 合計タイム | 総合 |
1区 | 小笠原朱里(1年) | 6,000m | 19,12 | 1位 | 19,12 | 1位 |
2区 | 眞田ひまり(1年) | 4,0975m | 13,44 | 7位 | 33,19 | 1位 |
3区 | 古賀華実(1年) | 3,000m | 10,07 | 10位 | 43,03 | 1位 |
4区 | 黄川田優香(1年) | 3,000m | 10,06 | 7位 | 53,09 | 2位 |
5区 | 正田 渚(3年) | 5,000m | 17,19 | 13位 | 1:10,28 | 3位 |
1区の小笠原朱里選手は「“行ける所まで行ってみろ”と言われていて、レース本番のラスト2kmでスパートし、後ろを引き離すことができました。区間賞はうれしいです。ラスト500mが2kmで上げたせいもあって腕が振れなくなってきたので硬くならないように鍛えないといけない」と課題を挙げた。2区の眞田ひまり選手は「1区の朱里(小笠原)が先頭で持ってくると分かっていたことなので、自分が絶対抜かれないように、もらった時は先導車だけを追いかけて次の選手に襷を渡すことを考えていました。県のときは駄目だったですけど、今回はチームのために少しでも役に立った走りができたかなと思います」と笑顔で応えた。3区の古賀華実選手は「結構楽しんで走れることができ、良かったですがまだ自分の力が足りないということを再認識できたのでもっと頑張らなければいけないというレースでした。2区のひまり(眞田)が差を広げてきたのに自分が差を詰められたのが悔しいと思いました」と反省した。4区の黄川田優香選手は「最初はすごいいい走りができていたのですが、中間がどうしてもタイトな走りになってしまい、終わってからもまだ出せる感じがあったですが、一人旅で上手に自分のペースをつくれないので最後まで出し切れる走りがしたいと思います」と課題を挙げた。最終5区の正田渚選手は3年間で初めての駅伝。その思いを語った。「5kmはあっという間でした。走る前はあまり緊張しなかったのですけど、みんなが頑張って持ってきてくれる襷を最後は一番いい形でゴールしたいなと考えて走りました。ここで自信をつけ、チャンスと考え、ここからの30日余りでどんどん上がって行かないと全国走れないので上がって行くしかないと思います」と最後のチャンスに懸ける。
萩倉史郎監督は「レースの流れは思い通りですね。5区に繋げるまでに1・2位争いをしていれば上出来で、小笠原の貯金でどれだけ活かすことができるかとやってみましたので、上出来ですね。ましてや正田がこれだけ走ってくれましたので全然問題ないです。7枚目ができたので層が厚くなりました。昨年先輩が入賞を逃してしまいましたから、今年はもう一度入賞ラインに戻ろうということが目標ですから」と気負いがない。1年生を軸にしたチームづくりに萩倉監督の手腕に期待が集まる。
◆関東大会成績結果 上位8校入賞
男子優勝=山梨・山梨学院高(2:05.56)、2位=茨城・水城高(2:06.17)、3位=神奈川・藤沢翔陵高(2:07.20)、4位=千葉・日体大柏高、5位=栃木・白鴎大足利高、6位=千葉・市立船橋高、7位=群馬・東京農大二高、8位=千葉・専修大松戸高。
女子優勝=群馬・常磐高(1:09.52)、2位=千葉・成田高(1:10.20)、3位=山梨学院高(1:10.28)、4位=神奈川・白鵬女子高、5位=千葉・柏日体大柏高、6位=東京。順天堂大附高、7位=茨城キリスト高、8位=神奈川・三浦学苑高となった。
師走の京都・都大路を駆け抜ける全国大会は12月25日(日)、高校生ランナーの熱い戦いが繰り広げられる。
文(K.F)カメラ(平川大雪・藤原 稔・Y.Y)2016.11.19