●山学iCLAで未来志向音楽コンサート
~デシベル・ニュー・ミュージック・アンサンブル~
~芸術とテクノロジーが交差する新しい音楽の形~
山梨学院大学キャンパスiCLA棟入口ロビーに静寂の中に単調な調べが流れ、壁にはプロジェクターから投影される奇妙なアニメーションが音楽と同期して浮かびあがった。12月12日午後7時から、山梨学院大学(iCLA)国際リベラルアーツ学部で音楽とグラフィックスとソフトウエアが融合する現代音楽アンサンブル、「デシベル・ニュー・ミュージック・アンサンブル」(デシベル)のコンサートが開かれた。このコンサートは、iCLAのアレクサンダー・シグマン音楽准教授がデシベルメンバーに楽曲提供などで親交があり、実現した。会場になったiCLA棟入口ロビーには地域の人や学生が集まり、エレクトロニクスとアコースティク楽器によるアンサンブルやアニメーションやデジタルスコア、ダンスが交差する緊張感ややすらぎを感じる不思議な音楽空間にひととき身を委ねた。
今回、このコンサートを企画したアレキサンダー・シグマンiCLA(国際リベラルアーツ学部)音楽准教授は「iCLAとしてリベラルアーツとはどういうことかを考えた時に、芸術とテクノロジーが交差する形がアンサンブルとなります。これをどのような形で公にするか、コンサートが最も適していると考えました。オーストラリアから招いたということも国際性をアピールするにあたって、適していると思いました」と今回の主旨を話した。
デシベル・ニュー・ミュージック・アンサンブル(デシベル)は、2009年結成以来、西オーストラリアを拠点に、楽器とエレクトロニクスの融合、図形デジタル楽譜と作曲など、演奏の音楽的拡張性を探求する6人の未来志向のアンサンブル。メンバーは全て作曲家。複数の楽器を奏で、サウンドエンジニアであり、グラフィックスを扱うiPadアプリも開発している。デシベルのパフォーマンスはライブエレクトロニクス、映像、ダンスからなる。近現代の音楽作品に精通するデシベルは、世界各国で公演。60曲以上の委嘱作品をさまざまな世代と地域の作曲家たちとのコラボレーションによって生み出してきた。本学のアレキサンダー・シグマン准教授の作品や日本の作曲家の作品も取り上げている。
コンサートは、70年代の東京の街と鳥をテーマにした曲で始まった。楽器はフルート、クラリネット、ヴィオラ、チェロ、打楽器をエレクトロニクスのテクノロジーで構成。東京の街の鳥のさえずり、群れて鳴くイメージなど、音楽とアニメーションが同期して動く様子が披露された。楽譜もiPadを用いたデジタルスコアであり、演奏者のズレを失くすことができる。どの曲もそれぞれの楽器から紡ぎ出す音は無機質で単調だが、やがて有機的な音に変わり、アニメーションとの融合が不思議な感覚で身体に浸み込み、居心地の良い安らぎを与えてくれる。日本人の作曲家の作品では音楽もさることながら、しなやかに踊るダンサーが抽象画のアニメーションに同化、あるいはシルエットだけが同化する演出で安穏な日常から混沌とした日常を表現。新しい芸術性を見た。今回のデシベルの音楽表現は、彼らの多彩な才能を目の当たりにする貴重な機会になった。集まった観客は5つの楽器が醸し出す音や音楽、ダンスの身体表現という芸術とアニメーション、デジタルスコアなどのテクノロジーが交差するコンサートに魅了されていた。
観客の一人、岸野謙一さんは「私もかつて音楽をやっていたこともあり、今はソフトウエア開発に携わっていますが、音楽の可視化というか、視覚化というところが非常に興味深く、参考になり面白いコンサートでした」と印象を話した。アレキサンダー・シグマン准教授は「音楽はさまざまな形がありますが、伝統的な音楽もあれば映像を使ったり、ビジュアルアートと混じりあうこともあり、このような新しい音楽があることを知ってほしいし、こういう形のコンサートもあるのだと学んでいただきたかった」と音楽の可能性を示唆した。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2016.12.13