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●山梨学院「歌舞伎・酒折座」旗揚げ大公演会
~小菅ゼミ、学生チャレンジ制度で日本文化を実践~
~学生は役者に成りきり、練習の成果を披露した~

山梨学院大で12月14日、「歌舞伎・酒折座」の旗揚げ公演があった。これは、法学部政治行政学科の小菅信子ゼミで、今年の学生チャレンジ制度を利用して「日本の文化」をテーマとして近現代について実践研究の一環として行われた。準備は2年生の後期から一部進められ、今年の春から制作組と役者組に分かれ本格的に活動を開始。悪戦苦闘を乗り越え、この日を迎えた。山梨学院メモリアルホールには、一般の人を含め学生、教職員約200人が詰め掛け山梨学院「歌舞伎・酒折座」旗揚げ大公演会を楽しんだ。演目は学生たちが踊る歌舞伎舞踊「京の四季」「藤娘」「京鹿子娘道成寺」「鷺娘」。また、花川流家元・花川梅朝さんと花川白蝶を襲名した小菅信子法学部政治行政学科教授出演の三大歌舞伎の一つ「義経千本桜/道行初音旅」を加えた5つの演目が披露された。会場の観客は長年途絶えていた甲府での歌舞伎の世界に目を見張り輝かせ観劇していた。

江戸期の甲府の庶民の楽しみのひとつに芝居見物があり、当時の芝居見物といえば歌舞伎。甲斐の国は市川団十郎ゆかりの地ということもあり、甲府で上演される歌舞伎は大変な賑わいを見せたという。近世から近代にかけて、現在の甲府市若松町には「亀屋座」という芝居小屋があり、当時の市川団十郎、松本幸四郎、坂東三津五郎などが舞台を踏み、大変人気があった。しかし残念ながら現在は影も形もない。そこで甲府で栄えていた歌舞伎文化を、もう一度甲府の文化として定着させたいという思いから、昨年度春より、山梨学院の創立70周年に際して新たな山梨学院大学ブランドを創ること、地域社会への文化貢献と国際文化交流の促進を目指して学生チャレンジ制度を活用し、新プロジェクト「山梨学院歌舞伎・酒折座」を立ち上げ準備に取り掛かった。

小菅信子教授は花川流家元・花川蝶十郎六世の直門で歌舞伎舞踊師範、花川白蝶を襲名。学生たちは週に一度、歌舞伎舞踊の手ほどきを受け、稽古に励んできた。花川流は、亀屋座に縁が深く、六世尾上梅幸、六代目・尾上菊五郎の芸風を受け継ぐ歌舞伎舞踊の流派。花川流御家元の梅朝先生に何度も本学に足を運んでもらい直接、指導を受けた。学生たちは「制作」「広報」「役者」の三部門に分かれて取り組みを進め、この日の旗揚げ公演に漕ぎ着けた。

山梨学院メモリアルホールで行われた「旗揚げ公演」の演目は、小菅ゼミの学生による歌舞伎舞踊名作コレクションとして、初めに「京の四季」を森田結里恵さんの舞で幕が開いた。春爛漫の花の中、薄桃色の着物を着た森田さんが可憐な舞妓さんの踊りを披露した。続いての演目は歌舞伎舞踊でも有名な「藤娘」を渡辺樹里さんが大津絵に描かれた藤の花から抜け出た娘姿の“藤の精”をあでやかにかわいい踊りを見せた。続く演目は男子学生5人による「京鹿子娘道成寺」。『安珍・清姫伝説』にちなんだ道成寺物のひとつ。学生たちは寺で修行する登場する所化(坊主)に扮し、傘を道具に愉快に踊る。続いては酒折座の座長を務める山本紗帆さんの「鷺娘」。娘姿の鷺の化身が、雪の降り積もる雪の中で恋にまつわるさまざまな感情を表現する。バレエにも影響を与えた作品という。山本さんは、歌舞伎特有の様式美を見事に表現していた。途中、口上を挟み、歌舞伎舞踊花川流家元の花川梅朝さんと花川流家元・花川蝶十郎六世の直門で歌舞伎舞踊師範、花川白蝶を襲名した小菅信子教授の二人による、歌舞伎三大作品の一つ「義経千本桜/道行初音旅」を演じた。山中に身を隠す義経を追う静御前と供をする佐藤忠信(実は狐)。静御前が持つ鼓の皮は彼の親狐。それを慕い、静御前を守りながら義経のもとへ向う物語。静御前を花川梅朝家元、忠信(狐)を花川白蝶師範が恋と忠義に懸ける二人を演じ踊った。

幕が下りると旗揚げ公演を見ようと集まった、地域の一般の人や、学生、古屋忠彦学長を初めとする教職員約200人から大きな拍手が起こり、公演は無事に終わった。夫婦で来ていた人は「良かったね。また、来たいです。所作が優雅で、無駄が無いね。学生さんはもう少し練習すればさらに上手になりますね」と笑顔で話した。友人と来ていた小澤翔さん(法学部法学科2年)は「初めて見たんですけど、身近に歌舞伎を感じる場所がなくて、こういった機会を設けてもらい新たに日本の伝統の良さ感じられました。皆プロじゃないかなと思うぐらい良かったです」と話した。役者、スタッフ全員はメモリアルホールロビーで観客の皆さんを見送っていた。

終演後、裏方で公演を支えた制作組の二人(右から制作部長の佐藤卓央制作部長と早川丈広報・デザイン部長)、佐藤さんは「ほっとした気持ちが一番です。初めての試みで裏ではあわただしい面もあったですけが、皆でカバーし、励まし合いつつ出来たのでひとまずは満足です」と話し、早川さんは「とても良かったと思います。第1回目ですけど、これから2回目、3回目、何10回と続けていけるようにやっていきたいです」と手応えを感じていた。11月末に稽古を覗いたときに、手の動きや足の運びが難しいと話していた渡辺樹里さんは「少し緊張しましたが、思っていたよりは上手に踊れたと思います。85点位ですね。振り付けを覚えるまでに結構時間が掛かりました。また、次回機会があれば踊りたいと思います」と安堵の表情で話した。所化役を踊った男子5人の(右から廣瀬圭吾、池田淳、羽田玲、武井勇一郎、赤尾俊)、廣瀬さんは「歌舞伎を通して知らなくてはいけないことを知ったというか、歌舞伎というと日本人なら知っていなければいけないと思います。外国人に聞かれた時に日本文化として説明できるように。そのためにいい経験になりました」。池田さんは「本番の前は、振り付けを度忘れしたり焦ったりしてたんですが、皆で再度打ち合わせなどをして、最後はやれることはやり切りました」。羽田さんは「自分は本番では練習のときよりいい出来になったと思います。この歌舞伎の練習を経験して、チームに一体感を感じました」。武井さんは「練習不足で少し心配のところもあったのですけど、最後の最後に皆で協力して、切羽詰っていたのですけど一丸となって練習もでき、本番では自分たちなりのアレンジも入れ出来たので良かったです」。赤尾さんは「達成感しかないです。今日の踊りは自分たち5人にしかできないものですし、世界で一つの踊りだと思いますので、これを誇りに感じ、これからの生活や将来に繋げられたらいいなと思います。ここまで盛大に出来たのも、スタッフや小菅先生のおかげと、感謝しています」とそれぞれ感想を述べた。

小菅信子教授は「学生たちが頑張ってくれて、大学はもちろんですが、私の踊りの先生方の力を借りて何とか上演させていただき、本当に良かったです」と周りに感謝した。「これからも続けられていつか学生歌舞伎ということで甲府や大学がさらに有名になっていけたら素敵ですね。特に東京五輪に山梨学院からも出場すると思いますけど、それに合わせて古式ゆかしい優雅な山学初の文化の香りを漂わせる“文化の塔”を建てるということで頑張りたいと思います」と夢を語る。

日本文化を研究するゼミから生まれた歌舞伎という日本の古典芸能の公演会。江戸時代には大衆演劇としてもてはやされた文化を今に伝え復活させようと奮闘する若者たちの活動はこれからも続く。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2016.12.15