●「全国高校サッカー選手権 山学高初戦勝利
~後半早々、相手にオウンゴールを誘い先制~
~ハードワークに耐え、泥臭く勝ちにこだわる~
「第95回全国高校サッカー選手権大会」、山梨学院高の初戦が12月31日、2016年の締めくくり大晦日に行われた。対戦相手は岡山県代表の岡山学芸館高校。初出場ながら今夏を含めて3度高校総体に出場している侮れない相手。昨日と同様、大会会場の東京・駒沢陸上競技場は鮮やかな青空で彩られていた。2年前の初戦で滝川二高に勝利しこの地で2度目の初戦突破に挑んだ。試合は、山梨学院高のキックオフで始まった。前半互いにロングボールを前線に送り込み、守備陣を崩して得点を狙う展開で経過。山梨学院は岡山学芸館高にやや押し込まれる状況だったが、互いに決定的な場面はなくスコアレスで前半を終えた。後半に入ると、開始早々、10番MF相田勇樹(3年)のロングスローを19番FW宮崎純真(1年)が頭で合わせ先制した。しかし、この得点はオウンゴールと判定された。1点を奪った山梨学院は連携が機能し始め岡山ゴールに再三攻め込むがなかなか追加点を奪えぬ。岡山も途中出場の13番DF平野智大がロングスローを正確にゴール前に投げ込み、何度も山学高ゴールを脅かしたが、山梨学院のGK大野郁哉(3年)のセーブやディフェンス陣がクリアし、得点を許さないまま1点を守りきり初戦突破した。山梨学院の2回戦は福島県代表の尚志高校と決まった。尚志高校は8回目の出場となる。
対戦相手は、1988年に創部、今年で19年を迎える岡山県代表岡山学芸館高。今大会初出場ながら岡山県新人戦、全国高校総体県大会、全国高校選手権県大会を制し、高校総体にも3度出場している侮れない相手。県大会では4試合で16点を記録、パスで繋いでチャンスをつくる攻撃は多彩。今年のインターハイで初戦を飾れなかったチームは、初めての選手権で勝利を目指す。一方、迎え撃つ山梨学院高は今年3月、安部一雄監督を迎え新体制になり、走りを中心にハードワークに取り組んだ。スタミナ面、精神面でその効果は現れ始めた。山梨県総体、全国高校総体決勝戦では敗れたが、全国高校選手権県大会では、決勝戦で県勢全国選手権最多出場の韮崎高に1-0で競い勝った。全4試合9得点1失点で全試合得点を上げた絶対エースの加藤拓己を擁し、守備陣との攻守のバランスが取れたチームに仕上がり、2年ぶり5回目の全国大会出場権を獲得した。
バックスタンドに陣取った山梨学院の大応援団は約1000人。生徒会、吹奏楽部、チアリーディング部を中心に受験生を除く全校応援の生徒約800人、教職員、選手の保護者、OBらの約200人がサッカー部を鼓舞しようと集結。その数は対戦相手、岡山学芸館高の3倍もの数で圧倒する。先日の全国高校駅伝で活躍した駅伝部男子、志村仁夢選手(3年)は「同じクラスの友だちも出るので、普段見られない姿を見せてくれればいいなと思います。自分たちも頑張ったので、応援した分頑張ってほしい」。今夏の甲子園野球大会に出場した野球部の広瀬巧真主将(2年)は「同じ高校の部活で全国に出られるというチームは少ないと思うので、勝って欲しいという思いで精一杯応援します」。石原悠太郎(1年)さんと佐々木聖夜(1年)は「全力で大きい声出して選手に伝わるように声援を送ります」。チアリーダー部の志村桃華部長(2年)は「私たちもメンバーの一員となり、一緒にプレーしているような気持ちで応援できたらいいと思います」とそれぞれがエールを贈った。応援団は試合が始まると、サッカー部の応援リーダーの下、全員が吹奏楽部の演奏、チアリーダー部の演舞に合わせ、メガフォンを使い、休みなく淀みなく声援を続けた。
試合直前、ピッチのイレブンと応援席が三三七拍子で一体感を醸し出し士気を高めた。試合は山梨学院のキックオフで始まった。前半2分、山梨学院の宮崎純真(1年)が主導権を握ろうと最初のシュートを放すが、ゴールポストの上に外れる。互いに同じ1-4-4-2の布陣で同じようにロングボールを相手守備陣裏の前線に送り、得点のチャンスを狙う。岡山学芸館は、右サイドにボールを集め、ドリブル突破でチャンスを窺い、山梨学院ゴールを脅かす。山梨学院もディフェンス陣がボールを奪い前に繋ぎ、フォワードはセカンドボールを拾いながらゴールに迫るも相手のディフェンスも固く決定的なシュートは打てずに得点にはならない。互いに決め手に欠き、スコアレスで前半を終えた。後半に入ると、山梨学院イレブンは前半の硬さも取れ、動きも良くなると早々にチャンスが訪れた。42分、10番MF相田勇樹(3年)のゴール前に合わせたロングスローを宮崎純真がヘディングシュートでゴールを狙うと、それが相手のオウンゴールを誘い1点を先制した。その後も前線と中盤が連動する守備が機能し、徐々に山梨学院ペースとなり再三相手ゴール前に攻め込んだ。岡山学芸館もロングスローが持ち味の13番DF平野智大を投入、反撃に打って出た。平野は正確なロングスローを何度も山梨学院陣内に投げ込むとゴールを脅かし、ゴールかと思われるシーンを演出した。山梨学院も必死なディフェンス陣とGKの大野郁哉(3年)のファインセーブで無得点に抑え、1-0で勝ちきった。
第95回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 《山梨学院高VS岡山学芸館》 12/31 東京・駒沢陸上競技場 |
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○ 山梨学院高 1 | 前半 0-0 後半 1-0 |
0 岡山学芸館高 ● |
得点 ■オウンゴール |
山梨学院選手交代:7番MF雨宮壮→18番MF増田李維
11番FW藤原拓海→20番MF野澤智哉 19番FW宮崎純真→15番FW西野隆男
10番MF相田勇樹→4番DF西雅人
試合後、安部一雄監督は「選手より緊張しました。点を先に取られると加藤もいない分、かなり劣勢になると思ったので、絶対ゼロに抑えろ、取られても1点までと話して選手を送り出しました。たまたまあんな形で入ってくれ、最後まで選手も凌いでくれました。それが勝因です」と選手の頑張りを労った。小林友也主将は「最初みんな緊張して硬い部分もありましたが、徐々に慣れていつものプレーができるようになり、後半の立ち上がりの良さに繋がったと思います。ラッキーなゴールでしたけど、ゴールはゴールですし、ゼロで抑えられたことは自分たちにとって大きなことです。次も強い相手だと思うので、やはりゼロに抑え、1点でも取って勝つという、内容はどうであれ泥臭くでもしっかり勝ち切ることを目指します」と次戦を見据えていた。怪我のために出場ができなかった加藤拓己選手は「ピッチに立った選手たちが勝利を収めてくれたことでチームとして大きな成長ができたと思いますし、山梨学院として大きな一歩だと思います。フォワードの選手が点を取って勝てたことは本当にうれしいですし、自分自身も良い刺激になりました」と勝利を喜んだ。選手権出場を夢見て山梨学院高に進学した宮崎純真選手は「状況は良く分からなかったですけど、キーパーが触れないと分かった瞬間、本当にうれしかった。ずっと守っていてやっと1点入って。この1点を守りきれば勝ちなので、みんなで喜びました」とオウンゴールと判定されたが、点に絡んだプレーについて語った。「大会前、チーム状況はあまり良くなかったですけど、最後頑張って仕上げて皆アップからいい雰囲気で臨めました。緊張もあったのですけど、いい緊張感でプレーでき、ゼロで抑えて勝ったのは良かったです」と試合を振り返った。
初戦突破した山梨学院の2回戦は1月2日、駒沢陸上競技場で午後2時10分より福島県代表の尚志高校と対戦する。7大会ぶりの頂点へまずは今日の1勝。次に繋げる。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2016.12.31