●第93回箱根駅伝 往路区間
~出だしでつまずき、2区ニャイロも流れつくれず~
~往路16位でゴール、復路でシード圏内目指す~
新年を飾る一大イベント箱根駅伝。「第93回東京箱根間往復大学駅伝競走」の往路区間が2017年1月2日午前8時、東京大手町読売新聞本社前を1区の選手21人が一斉にスタートした。10区間217.1kmを昨年優勝の青山学院大学を初め、昨年8位の山梨学院大を含めたシード校10校、予選会を通過した10校、関東学生連合チームを加えた21校が箱根を折り返し、大手町を目指す10区間の激走が始まった。2日の往路は5区間107.5kmで争われた。山梨学院大は、31年31回目の出場を果たした。今回は4区・5区の距離の変更に伴い、重要区間の見直しなどチーム戦略に注目が集まった。山梨学院は、1区の伊藤淑記(4年)が初の箱根駅伝に抜擢されたが、プレッシャーからか十分な力を発揮できずに20位に沈んだ。期待された2区エース区間のドミニク・ニャイロ(2年)も本来の爆発的な走力が沈黙。18位で3区の永戸聖(2年)に繋ぐと後半失速したものの、2つ順位を上げた。16位で襷を受けた4区上村純也主将(4年)はキャプテンの使命から攻めの走りでシード権争いに近づくも、延伸した距離の洗礼を受け後半失速した。17位で繋いだ襷を5区の上田健太(3年)は、初めて挑む山登りに善戦むなしく低体温症に苦しみ、本来の走りができずに総合16位でゴールした。山梨学院は、明日の復路3年連続の往路優勝を飾った青山学院大から8分11秒差で箱根芦ノ湖畔からシード圏内を目指し疾走する。
■往路107.5km
◆1区[21.3km 東京大手町 ⇒ 鶴見中継所] 伊藤淑記(4年)
1区は、全体的に平坦なコースで走りやすいが、集団で走ることで多く、どこで抜け出すか駆け引きが注目される。1区で流れを引き寄せるかが、以降の順位に影響を与えるため、各校のエース級の選手が投入される。1区は、1年の時に全日本大学駅伝を走り、今回初の箱根駅伝に挑む伊藤淑記(4年 愛知・中部大一高)が抜擢された。5000mのベストタイムは今シーズン記録した14分04秒78のチーム内で7位のスピードランナー。箱根駅伝に挑んだ。1月2日、曇り空だが5℃と暖かい朝を迎えた。午前8時、多くの駅伝ファン幾重にも取り囲む中、号砲と共に21校が一斉にスタート。「アップも問題なく体調は良かった」と伊藤。序盤、穏やかなにスローペースで始まったレースも、5キロ付近で東洋大学の服部弾馬選手が一気にペースを上げ仕掛けた。伊藤淑記選手は「付かなければいけなかったですけど、全力で走っても離れてしまい、そこで足が固まって対応ができずに後半も伸びなかった」と肩を落とした。トップと2分53秒差の20位で襷を2区のドミニク・ニャイロに繋いだ。「シードまで何とか上げて頑張って欲しい」と後続に願いを託した。
◆2区[23.1km 鶴見中継所 ⇒ 戸塚中継所] ドミニク・ニャイロ(2年)
襷を渡されたドミニク・ジャイロ(2年 ケニア・メサビサビ)は、今年の出雲駅伝、全日本大学駅伝の2大会で区間賞を獲得、山梨学院の絶対的エースとして、例え1区で流れが悪くても盛り返す力を見せつける期待感を抱かせた。20位で襷を受け、猛追を開始するものと思いきや、なかなか、ペースが上がらず、いつもの力強さが見られない。ドミニク・ニャイロ選手は「5キロあたりで風の影響とお腹が痛くて苦しかった。前を追えなかった。悔しいです」とモグスが出した区間記録の更新を狙って挑んだだけに残念がった。「その記録はまた来年チャレンジします」といつもの笑顔はなかった。関係者の期待が大きかっただけに区間9位、総合で18位と順位を2つ上げたものの不消化さが残るとニャイロの走りだった。
◆3区[21.4km 戸塚中継所 ⇒ 平塚中継所] 永戸聖(2年)
3区を任されたのは、今伸び盛りの永戸聖(2年 岩手・盛岡工高)。駅伝デビューの昨年10月の出雲駅伝区間3位、11月の全日本大学駅伝区間5位と安定した力を示した。指揮官の信頼も厚く、2大会より距離が長い箱根駅伝でも抜擢された。18位で襷を受けた永戸は全力で前を追った。遊行寺の坂を上手くこなし、約10キロの海岸線をいかに粘り強く走ることをポイントに挙げた。スタート時点では曇りだった天気も晴れ渡り、気温も上昇、選手を苦しめた。永戸聖選手は「自分の弱さが出てしまったレースでした。残り3キロで失速してしまったので後一歩力を出せないところが弱さです」と課題を挙げ、「気持ちだけでは乗りきれない距離を実感しました」と話した。永戸はこの大会も区間9位と好走、順位を2つ上げ総合16位で4区に襷を繋いだ。
◆4区[20.9km 平塚中継所 ⇒ 小田原中継所] 上村純也(4年)
先の出雲駅伝、全日本大学駅伝は左ひざの故障で出場が叶わなかった上村純也主将(4年 栃木・白鴎大足利高)は、箱根駅伝は今回で4年連続出場を果たし、4区は2度走っている慣れたコース。今大会から4区と5区は、距離が変わり延伸、残りの3キロが登りに、5区は2.4kmは短縮されるが、ともに重要区間として注目される。上村は故障も癒え、最後の箱根に並々ならぬ決意を持って走った。「4年間の取組みが全てここに出る」と感じていた。1区、2区で流れに乗れなかったレースに上村純也主将は「チームがああいう状況になってしまった以上は主将として、しっかり自分が勢いづけたいという思いから前半から攻めて行きました」。レースは、残り3キロ付近までシードを狙える位置まで攻め続けた。しかし、その直前思わぬ落とし穴が待っていた。「給水が上手くいかず、身体に水にかかってしまい、16キロ過ぎたあたりの橋の横風で体温を急激に落としてしまった」と失速の原因を説明した。距離が伸びた分、その洗礼を手痛く受けた。区間16位、総合順位17位。「不甲斐ない」と悔いた。
◆5区[20.8km 小田原中継所 ⇒ 箱根芦ノ湖] 上田健太(4年)
今シーズンの出雲、全日本大学の2大駅伝で1区を走り安定した走りで好結果を出した上田健太(3年 山梨学院高)が初めて5区山登りに挑んだ。この5区は父親である上田誠仁監督が順天堂大時代に3度山登りを走り、2回区間賞を獲得しているスペシャリストだった。このDNAを継ぐ上田健太がどのような走りを見せるか注目が集まった。17位で襷を受けた上田は、序盤、慌てるでもなく落ち着いて入った。動きも良く中盤の宮ノ下辺りまで快調に飛ばしたが、登るとともに気温が下がり低体温症の症状が表れた。上田健太選手は「足がつり気味になり、寒さで動かなくなってしまった。リズムは良かったですけど、下りを乗り切れなかったことがタイムの伸びなかった原因」と山登りの難しさを語った。「シード圏内には持っていきたかったです。順位は1つ上げたですけど、自分が設定したタイムより大幅に悪く、発揮できると思っていた力より発揮できなかった自分が今回出てしまった」と結果を残せなかったことを悔んだ。上田は最後のスパートに歯を食いしばり耐え、16位でテープを切った。ゴール後、死力を尽くしその場に倒れこんだ。区間7位、満足のいかぬタイムながら明日に繋げる走りを見せた。
■往路成績16位 往路時間 5時間41分56秒
順位 | ランナー | 区間タイム | 区間順位 | 合計タイム | 総合順位 |
1区 | 伊藤淑記 (4年) | 1:06:49 | 20位 | 1:06:49 | 20位 |
2区 | ドミニク・ニャイロ(1年) | 1:08:31 | 9位 | 2:15:20 | 18位 |
3区 | 永戸 聖 (2年) | 1:04:35 | 9位 | 3:19:55 | 16位 |
4区 | 上村純也 (4年) | 1:07:33 | 16位 | 4:27:28 | 17位 |
5区 | 上田健太 (3年) | 1:14:28 | 7位 | 5:41:56 | 16位 |
■往路順位(10位シード権以内)
順位 | 大学名 | 総合タイム | 復路タイム差 |
1位 | 青山学院大学 | 5:33:45 | |
2位 | 早稲田大学 | 5:34:18 | 33秒 |
3位 | 順天堂大学 | 5:36:09 | 2分24秒 |
4位 | 東洋大学 | 5:36:25 | 2分40秒 |
5位 | 駒澤大学 | 5:37:46 | 4分01秒 |
6位 | 神奈川大学 | 5:38:11 | 4分26秒 |
7位 | 中央学院大学 | 5:38:20 | 4分35秒 |
8位 | 上武大学 | 5:39:13 | 5分28秒 |
9位 | 創価大学 | 5:39:25 | 5分40秒 |
10位 | 日本大学 | 5:39:55 | 6分10秒 |
16位 | 山梨学院大学 | 5:41:56 | 8分11秒 |
レース後、上田誠仁監督は「ニャイロは暮れに足に違和感が出たということで、起用をためらっていたんです。他にもいろいろチーム事情が2転3転変わってきたので、清々しく新年を迎える状況ではなかった。後手後手に回ってしまった今回ですけど、駅伝には多々あることなんですが、後手に回るとストレスも掛かりますし、ペース配分なども微妙にずれてきます。後半は、まだ、2分近くの差はあるんですけど、今までそういう逆境を幾度か乗り越えてきているので、今の位置からは16人が力を合わせてシード権を目指して戦わねばなりません」と苦しい胸のうちを述べた。
山梨学院大は、今シーズン三大駅伝で優勝を目標に掲げた。出雲駅伝では総合2位、全日本大学駅伝では総合3位とシード権を獲得したが目標の優勝には至らなかった。最後の箱根駅伝ではチームの総合力で優勝を狙ったものの、上位入賞には届かない状況に甘んじてしまった。しかし、最低限の目標といえるシード権獲得には十分に届くタイム差ではある。箱根駅伝に向けて取り組んできた一年間。「一人一役」チーム力で戦い結果を残すつもりだ。期待を持って応援したい。
3日の復路のスタートは箱根芦ノ湖畔を午前8時に青山学院大からスタートする。ゴールは午後1時30分頃。
文(K.F) カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・小池裕太・Y.Y)
2017.1.2