●山学小「アカデミックプロジェクト」
~子どもたちが自ら挑む17講座“課題追求型授業”~
~「もっと学びたい」子どもの興味関心を引き出す~
山梨学院小学校では、児童が興味・関心を抱いたテーマについて学ぶ2016年度「アカデミックプロジェクト」が1月23日から1月27日の日程で行われた。通常の授業とは別に時間を設け、1年から6年まで学年の壁を取り払い行われる山梨学院小独自の課題追求型プログラム。子どもたちは自分が取り組んでみたいと思ったテーマの講座を選び学んでいく。今回は5日間の期間中にインプット・アウトプット講座、やまなし食堂、キャラクター・デザイン、子どもと映画、収納片付け講座など17講座が開設され、子どもたちはそれぞれ自分の興味関心に沿って学びの楽しさを追求した。このプロジェクトの特徴は、自らが課題を決め、その課題への手立てや時間配分を、自分で選択・計画する。そうした学びの体験は、子どもの内側に強く刻まれ、学びに向かう意欲の高まりや学ぶ力の確かさ、知識や技能の広がり深まりが“豊かな学び”のサイクルを生み出していく。山梨学院小では、教師は初めから教えるのではなく、小さなステップをいくつも作り、子どもたちが『もっと学びたい』と自分の力で学ぶ環境を用意する独自な教育システムを実践している。
山梨学院小は「自律性=探究心に満ちた心 自ら判断し、自ら行動していく力」「思考=生きるための基礎学力 多角的に物事を捉える力」「表現=確かなコミュニケーション能力(日本語・英語) 感性豊かな表現力」「共生=人間・自然とのつながりの意識化 他者とともに生きていく力」など積極的に社会にコミットできる「攻めの学習者」へとイノベーションを加速させ、学習指導要領の枠を超えた先進的教育プログラムに取り組んでいる。そのひとつにプロジェクトがある。山梨学院小のプロジェクトは5月の『スポーツプロジェクト』、秋の『オクトーバープロジェクト』、冬の「アカデミックプロジェクト」を三大プロジェクトと位置づけている。『アカデミックプロジェクト』は、自分の興味・関心からテーマを選び、自分で学ぶ自主性を高める課題追求型プログラム。期間中は数多くの講座が用意され、通常の授業では学びきれないテーマに挑む、学術色が強いプロジェクト。子どもたちは、自由に自分だけの時間割を作成し、開設される講座を受講しながら、3級から1級と、段階的に設定された認定テストを行っていく。一つの講座をとことん究めることも、たくさんの講座に参加して様々な知識を得ることも、一人で学習することも、友だちと協力しながら学習することも自由。学びのスタイルが自由に選べる。この学びこそが山梨学院小が目指してきた「豊かな学び」の創造といえる。今回も子どもたちが興味・関心を抱く次の17の講座が用意された。
2016年度アカデミックプロジェクト 1月23日~27日 講座内容一覧 | |
Three Kingdoms(三国志) | ラジオ体操第1マスター |
あたましりとり | 海の生態系 |
インプット・アウトプット | 楽器のしくみ |
かたちづくり | 国旗 |
キャラクター・デザイン | 子どもと映画 |
プログラミング | 収納片付け |
ペーパー博士 | 数独 |
マナー | 名文すらすら |
やまなし食堂 |
講座は17の講座が用意された。ペーパー博士講座では、さまざまな紙のつくりをとらえるために身の回りある紙の構造の違いを顕微鏡などで調べたり、耐水性の実験や1級では植物などから紙が作られる過程を理解するために実際に紙作りを行っていた。紙作りに取り組んでいた3人(左から瀧田琉心君・小6、佐々木龍乃介君・小6、三澤清玄君・小5)は「藁から紙が作れることを知ったり、いろいろ再利用して紙を作ったことが楽しかった。全学年が交流できて、自分の好きなことが学べるとてもいい体験です」と話した。身近な機械に使われているLittle Bits(電子回路)を使って遊具や電化製品をつくるインプット・アウトプット講座では、色分けされた電子回路を自由に組み合わせて物を振動させたり、光を点滅させ、どのような物に仕上げるか真剣に取り組んでいた。音の高さの違いや楽器の特徴を知るために、いろいろな楽器を鳴らしたり、身の回りにある音の面白さに気づきそれらの組み合わせを楽しみながら音楽作りの力を高める楽器のしくみ講座。1級では、グラスに水を入れ、ふちを指で擦ると美しい音色を奏でるグラスハープで「きらきらぼし」の曲を見事に演奏した志村結梨奈さん(左・小3)と渋谷理沙さん(小3)は「音を調節するのが楽しかった。ソとラなどの音階の違いをつくることが難しかったけど楽しかった」とそれぞれ話した。キャラクター・デザイン講座の3級では顔のパーツを組み合わせてオリジナルキャラクターをデザイン。2級になるとテーマを決め、オリジナルキャラクターを作り、1級では2級でデザインしたキャラクターの周りのキャラクターまでデザインするなど高度なオリジナリティーが要求された。会場になった芸術館ではたくさんの児童が試行錯誤しながら自分だけのキャラクターをデザインしていた。どの講座も子どもたちの興味・関心を絶やさないように工夫されている。取材した日は、保護者の授業参観日に当たり、多くの保護者が子どもたちの真剣で楽しそうに課題に取り組む姿を見学していた。保護者の一人は「下の子は上の子の学ぶ姿を手本にし、上の子は学んだことを自分のものだけにしないで小さい子たちに教えてあげる仕組みは、学びを超えた学びというか、今後、生きていくうえでとても有効だと思います」とプロジェクトの効果を話した。
プロジェクト担当の牛奥祐太郎教諭は「今年度は若手の意見も参考に出来るように若手だけのチームを作り、いくつかの講座を作り上げていきました。準備は12月中旬から始め、子どもたちに興味・関心を抱かせるためにワークシートはもちろんですが、ポスターなどに全ての指示を書くことに注力しました。いろんな学び方を学んでもらって、普段の生活と生涯学習に活かしてもらいたい」と講座の狙いを話した。講座は子どもの意見、希望を取り入れながら、先生たちの得意な分野や興味のあることを活かし、先生同士が互いにアドバイスをしながら講座の質を上げている。
文(K.F)カメラ(平川大雪)2017.1.27