山梨学院パブリシティセンター

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●山梨学院学術報告会2016
~大学・短大教員が調査研究の成果を学内外に発表~
~大崎、古閑、室町各教員が取り組んだ興味深いテーマ~

山梨学院生涯学習センターは、山梨学院の教員が取り組む調査・研究活動の成果を発表する「山梨学院学術報告会2016」を2月15日、山梨学院クリスタルタワー6階の生涯学習センター講義室で開催した。これは教員が学会や研究会などで発表した学術論文などの研究成果を、学内及び学外を一般の方々に広く公表するもので、2014年から始まり4回目の実施となった。今回の報告は大学の教員から2人、短大から1人の教員がテーマの研究成果の発表を行った。最初に山梨学院大経営情報学部経営情報学科・大崎恵介特任講師が「鬼ごっこの種目特性に関する研究」のテーマで、鬼ごっこの運動効果と有用性について報告。続いて山梨学院大健康栄養学部管理栄養学科・古閑美奈子准教授が「山梨県民の健康・食生活の課題」と題し、データを駆使し山梨県民の栄養摂取状況と身体状況の課題と対策を発表した。最後に山梨学院短大保育科・室町さやか専任講師が「18世紀ヴェネツィアの福祉施設オスペダーレにおける女性の音楽活動」をテーマに18世紀に福祉施設が女性の音楽学校の先駆けになった事象の研究発表を行った。会場には一般市民の方や大学教職員が3人の取り組んだ興味深い研究テーマの発表に耳を傾けた。

冒頭の挨拶で司会進行を務めた丸山正次法学部政治行政学科教授は「本学の教員は、専門分野の研究に関心があって、大学の教員になっているものが圧倒的に多いですが、そういう先生方がどういうことに関心を持ち、研究しているかなかなか授業の中では話すことがありません。この報告会では、先生方が取り組んでいる研究を学内的にも一般の市民の方々にも知っていただく場を持とうということから行っています。今日は3人の報告者ですが、テーマは相当種類が違います。『こういうことを研究しているんだ』ということだけでも興味・関心を持っていただければ」と趣旨説明をした。

◆「鬼ごっこの種目特性に関する研究~鬼ごっこ運動プログラム構築に向けて~」

初めにスポーツ心理学が専門分野の大崎恵介経営情報学部経営情報学科特任講師の「鬼ごっこの種目特性に関する研究」の発表報告が行われた。「鬼ごっこの運動プログラム」が児童の身体能力と知覚スキルに及ぼす効果を検証した。大崎講師は、子どもの体力低下の原因を受けて、「鬼ごっこ」という遊びを通じた子どもの運動能力の確保に向けたプログラムの開発を調査・研究。古くから子どもの遊びとして親しまれてきた「鬼ごっこ」は、走る動作に加えて、瞬発力や持久力、判断力、チームワークなどスポーツを行う際に必要とされる要素が多く含まれている運動遊びと言われる。サッカーやラグビーなどのチームスポーツの練習においても積極的に取り入れられているが、「鬼ごっこ」が運動能力に直接関係する研究がなかったことで、「鬼ごっこ運動プログラム」を用いて行った「鬼ごっこ」の運動としての効果を解説した。測定器具を使った研究方法から割り出された分析結果から運動量や運動の質を量り、効果や課題を抽出。「鬼ごっこ」が運動として価値のある遊びであることを確認したと研究結果を報告した。大崎恵介特任講師は「『鬼ごっこ』が単純な遊びの域を出て、スポーツとして活用されていくことを目指して今後も調査していきたい。『鬼ごっこ』の遊戯性を大切にしつつ、スポーツ環境の中で鬼ごっこを楽しむ。それが今後スポーツをしていく上で役に立つスキルを身に付けられるような『鬼ごっこ』の開発を目指して調査・研究を続けていく」と研究報告を行った。

◆「山梨県民の健康・食生活の課題~平成26年度県民栄養調査結果から~」

続いて、公衆栄養学、小児栄養を専門分野に研究している古閑美奈子健康栄養学部管理栄養学科准教授のテーマは「山梨県民の健康・食生活の課題」と題して平成26年度の山梨県民栄養調査結果を基に現状と課題、これからの取り組みの方向性を報告した。初めに古閑美奈子准教授は「以前山梨県の職員であった当時、山梨県の調査委員として栄養問題、健康問題に携わった。今回は本学の教員として県が行った調査を大学で分析・修正をしてまとめたものから抜粋したものを報告する」と経緯を説明した。山梨県の栄養摂取状況としてまずは、食塩摂取量を男女別、年代別、都道府県との比較を説明。山梨県は男女とも全国で上位にあると警鐘を鳴らした。野菜・果物の摂取量については特に年代によっての差の大きさを指摘、30歳から40歳代の摂取量の増加が必要であると説いた。栄養素のカリウム、食物繊維については、男女とも1日の必要摂取量に満たない人は7割程度。生活習慣病予防の観点からも穀類、豆類、根菜などを推奨したいとした。また体格の状況から年代別に『肥満』『普通』『やせ』と分類、20歳から29歳までの若い女性に『やせ』が際立って多いことを指摘、出産への対策が必要なことや低栄養傾向から将来的に骨粗しょう症になる懸念を示した。健康には栄養と適度な運動のバランスが欠かせない運動状況については1日の歩数を挙げて、20歳から59歳までが低い傾向があり、運動の習慣を目指したいとした。最後にそれぞれの対策と方向性を説明した。緻密な調査と膨大なデータの蓄積から山梨県の栄養摂取状況と身体状況の現況が浮き彫りになった報告だった。

◆「18世紀ヴェネツィアの福祉施設オスぺダーレにおける女性の音楽活動~第一次資料と同定問題~」

続いては、音楽学、音楽教育学が専門で山梨学院短期大学室町さやか保育科専任講師が研究課題の「18世紀ヴェネツィアの福祉施設オスペダーレにおける音楽活動」について研究発表を行った。オスぺダーレは中世からイタリア諸都市で運営されていた福祉施設の一種でキリスト教の精神を基づき病院、孤児院などの役割をもち貧しい人々を助けていた。キリスト教の組織の多くは福祉機関の母体になり、オスぺダーレも同様であった。ヴェネツィアの4つのオスペダーリ・グランディは女性だけで構成されたコーロ(合唱隊、器楽隊、ソリストを合わせた音楽隊)を有していた。室町さやか専任講師は、まず4つのオスペダーリ・グランディの内容を紹介。その中でヴェネツィアのオスペダーレは、女性だけで構成されるコーロによる音楽で有名であり、「コーロは高い水準の音楽活動が継続し評価されていた。その高度な演奏が土台になったのはコーロ内で行われていた演奏教育です。特に孤児、捨て子を保護したピエタのコーロが一番大きく多くの音楽家を輩出していた。多くの子どもたちの中から音楽の才能を選別し訓練させていた音楽環境があった」と説明した。コーロ全般を論じるに必要なヴェネト国立子文書館に残されているオスペダーレやコーロの第一次資料などを紹介しながらオスペダーレの核心に迫った。「これまでにピエタの研究に一定の成果を挙げていますが、その内容については今日までに明らかにされているのは一部であり、研究の余地が多く残されています。今後の研究の課題として、18世紀の女性の音楽学校の先駆けになった事象といえるオスぺダーレ・デッラ・ピエタの『教育中の娘』呼ばれているシステムは、現代失われている女性の音楽教育の歴史における貴重な具体例であり、これらに焦点を当て研究を進め、実態を明らかにする」と締めくくった。

各報告者の発表後にそれぞれ質疑応答が行われた。興味深いテーマ発表にいくつもの質問が
出された。

文(K.F) カメラ(平川大雪)2017.2.16