●山学小1年生の「おもてなしプロジェクト」
~丁寧な字を書くことで心を整え、おもてなしに繋ぐ~
~iCLAリード先生を講師に、きれいな字を学ぶ~
山梨学院小学校では、3月8日に通常授業とは別に、児童が興味・関心を抱いたテーマについて学ぶ課題追究型授業「プロジェクト」が行われた。山梨学院小には「スポーツプロジェクト」「オクトーバープロジェクト」「アカデミックプロジェクト」の三大プロジェクトが組まれているが、他にもさまざまなプロジェクトを設け、子どもたちの「生きる力」を養っている。この日は1学年を対象にした学年プロジェクト「おもてなしプロジェクト」の最終回が行われた。iCLA(山梨学院大国際リベラルアーツ学部)のウィリアム・リード教授を講師に招き、先生が専門にしている日本文化の研究のひとつ、師範でもある書道の“字”をテーマに「ていねいに書くことで心を整える」ことを講義した。リード先生は、ユーモアを交え、書の始まりや字の成り立ち、丁寧に書くポイントを見本を示しながらアドバイスした。子どもたちは実際に競書見本を使いなぞり書き・鉛筆書きの体験を行い、リード先生が筆を使って書いた文字に歓声を挙げるなど、2時間近い時を真剣に取り組んだ。おもてなしをするためには、丁寧にきれいな字を書く習慣を身に付け、自分の心を整えておくことが大切であることを学んだ。
山梨学院小は「自律性=探究心に満ちた心 自ら判断し、自ら行動していく力」「思考=生きるための基礎学力 多角的に物事を捉える力」「表現=確かなコミュニケーション能力(日本語・英語) 感性豊かな表現力」「共生=人間・自然とのつながりの意識化」「他者とともに生きていく力」など積極的に社会にコミットできる「攻めの学習者」へとイノベーションを加速させ、学習指導要領の枠を超えた先進的教育プログラムに取り組んでいる。そのひとつにプロジェクトがある。数日から2週間、半年間の長期にわたり、通常の授業とは別の時間を設け、課題を学年の枠を超え、協働で追究していく。5月の『スポーツプロジェクト』、秋の『オクトーバープロジェクト』、冬の「アカデミックプロジェクト」を三大プロジェクトと位置づけている。他にもさまざまなプロジェクトを実施。子どもたちの「生きる力」を養っている。
今回の、「おもてなしプロジェクト」は、昨年の11月から1学年を対象にした学年プロジェクトとして行われ、今までにお茶の作法を経験することで座り方やお辞儀の仕方、ことばのマナーなどを学び、保護者参観日には実際にお茶を振舞った。プロジェクトリーダーの長田直美教諭は「『おもてなし』とはどんなことなのかを子どもたちとともに考えていこうとプロジェクトが始まりました。ルールやマナーは最低限守るもの、その上にサービスがあって、対価があるもので、その次に『ホスピタリティ』や『おもてなし』が必要であると話し合いました」。そのため、子どもたちは、プロの『おもてなし』を実感するため甲府市内のホテルでの接客やサービスの様子などを見学し、気が付いたことを持ち寄った。長田教諭は「『おもてなし』をするためには自分の心が整っていることが大切で、『書くこと』を通じて心を整えたいと考えました。人を喜ばす前に自分の心が整っていたり、きれいでいたりすることは、どういうところで分かるのかを考えた時に“字”ではないか。最終回は『ていねいに書くことで心を整えよう』と“書くこと”を取り上げました。子どもたちは1年間でひらがな、カタカナ、漢字も習ってきましたけれど、慣れてきた時こそ雑になってしまうので、字を丁寧に書く大切さの意味を知ってもらいたかった」と語った。
講師にはiCLAから合氣道、書道の師範で日本文化を教えるウィリアム・リード教授を招いた。リード先生は講義の初めに、書の始まりや字の成り立ち、文字は丁寧に書くことでしっかりきれいに書けることを話した。1年生69人の子どもたちは12チームに分かれ、競書手本を参考になぞり書き体験、鉛筆書き体験をした。その後、文字の大きさ、バランス、筆圧の強弱、失敗しないためには書く前に指で練習するなどとアドバイスをした。さらに書道に対する心構え、道具を大事にする心、紙を無駄にしないことで環境保護に繋がるなど、難しい話も冗談を交え、子どもたちに分かり易く説明した。子どもたちは説明を聞いた後に再び鉛筆書き体験をし、前後の字の違いを肌で感じていた。書道歴35年の師範リード先生が筆で書く見本を見せ、女子児童が代表して書道体験した。女子児童は「筆で本格的に書けてうれしかったです。丁寧に書くことに注意しました」と話した。講義後、男子児童の一人(A)は「ゆっくり丁寧に落ち着いて集中して書くことを学びました。少しは上手になったと思います」と話した。ウィリアム・リード先生は「今日は文字を書くことがテーマだったから文字のことを話しましたが、“丁寧”とは全てに言えることなのです。人や物の扱い方も丁寧にすることです。忙しくなると忘れてしまう。どうしても走る、雑にする。それで争いになり社会がギクシャクする。気をつければ良いという問題ではないのです。潜在意識を変えなければいけないですが、文字はそれを変えてくれるのです。文字は鑑ですから。自分がきれいに書いた時は気持ちが良いし、書き終わった後も同じ気持ちで、食事や勉強もできます。人に対しても気持ち良く接しられます」と語った。指導した子どもたちについては「優秀です。子どもたちはやればできると高い期待を持っています。難しい文字はいけないと思いやさしい文字にしましたが、一番感心したのは、2時間近い時間を集中して楽しく取り組んでくれたことはたいしたものでした。とてもやり易かったです」と有意義な講義に満足げな笑みを見せた。
長田直美教諭は「おもてなしプロジェクト」の取り組みについて、「自分たちの自己肯定感や貢献感などが養われると思うので、そういう時間をしっかり持って、子どもたちにはいっぱい『喜ばせたいな』とか、『おもてなしにありがとう』という気持ちも育てたいと思っています」と語った。最後にホテル見学に行き、さらに「おもてなし」を知りたいと自身で行った男子児童(B)は「もっと『おもてなし』のことを知りたいとお母さんと一緒に泊まりに行きました。人を喜ばせたり、気分を良くしたり、幸せにしたりすることがいいなと思います」とおもてなしについて深く学んでいた。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2017.3.8