●甲斐の古道プロジェクト「甲斐の古道を歩く」第2弾
~フィールド体験プログラム「鎌倉街道・御坂路編」実施~
~初夏の爽やかな風に吹かれながら古に思いを馳せる~
山梨学院「甲斐の古道プロジェクト委員会」は6月3日、山梨学院創立記念日に『フィールド体験プログラム』第2弾として河口浅間神社から北口本宮浅間神社までの行程で「鎌倉街道・御坂路編」の古道を辿った。学校法人山梨学院は、山梨学院大など関連施設のある「酒折」の地が、江戸時代後期に編纂された『甲斐國志』に「甲斐の国から他国へ通じる道は9筋あり、それらはみな酒折を起点としている(現代訳)」と記載されていることから昨年の創立70周年地域貢献事業の一つとして2013年秋に「甲斐の古道プロジェクト委員会」を発足させ、民俗学的学術調査を行ってきた。今回の企画は山梨学院の「甲斐の古道プロジェクト委員会」と「山梨学院生涯学習センター」が広く地域の人たちに活動の一環として実際に歴史や現地を知ってもらうため昨年11月に続き、2回目となる「フィールド体験プログラム『鎌倉街道・御坂路編』」を実施した。当日は、御坂峠から続く御坂路(鎌倉街道)筋の河口浅間神社から富士吉田市方面への鎌倉街道を辿る、北口本宮浅間神社までの行程。山梨学院大の二人の講師の他、河口湖教育委員会、山梨県世界遺産センターの職員二人が20人の一般参加者に街道筋の所々で当時の様子や文化遺産などを歴史的見地から説明。参加者は熱心に耳を傾けメモを取り、カメラに収めたりしながら古に思いを馳せていた。
学校法人山梨学院は、大学施設のある「酒折」の地が、江戸時代後期に編纂された『甲斐國史』によると、「本州九筋ヨリ他州へ達する道路九条アリ皆路首ヲ酒折ニ起ス」(巻ノ一「提要部」(甲斐の国から他国へ通じる道は9筋あり、それらはみな酒折を起点としている)と記載されている。「道路九条」というのが「甲斐九筋」であり、江戸時代以前から甲斐の国にあった古い道、古道の総称。甲斐九筋は今回の御坂路(鎌倉街道)や萩原口(青梅街道)、河内(駿州往還)、右左口(中道往還)、若彦路、雁坂路(秩父往還)、穂坂路、大門嶺口(棒道)、逸見路(信州往還)の9路をいう。大学がある酒折地区が古来より周辺諸国に通じる交通の要衝であったことから学校法人山梨学院は「甲斐の古道プロジェクト委員会」を発足させ、古道の現況調査に取り組んでいる。甲斐の古道プロジェクト委員会では、すでに青梅街道、雁坂路、御坂路(鎌倉街道)、若彦路、中道往還の調査を終えている。
「甲斐の古道プロジェクト委員会」は広く地域の人たちに古道の成り立ち、史跡などを身近に体験してもらおうと「フィールド体験プログラム」を企画。昨年11月に第1回目として山梨市駅から塩山駅までの行程で「青梅街道」を巡るプログラムを実施しており、今回は第2弾として、「鎌倉街道・御坂路編」を企画した。鎌倉街道は、鎌倉幕府が開かれたことにより、甲斐と鎌倉を結ぶ交通路が必要となり整備された。駿河の御殿場までの古代官道御坂路のルートはそのまま活用され、室町時代に入っても関東管領の置かれた鎌倉との交通路は重要な位置を占めていた。近世では江戸に幕府が移ったことから五街道が整備されるなかで、鎌倉街道御坂路は甲州街道と東海道を結ぶ脇街道と位置づけられた。今回のプログラムは、平安時代の富士山の貞観大噴火を鎮火する神を祀る河口浅間神社を起点に室町時代以降、富士山に登拝する関東や甲府盆地以西、以北の道者や富士講信者たちが甲州街道、御坂峠越えをして宿坊として利用した河口湖の御師の家や鎌倉街道筋に残る文化財を訪ね、富士登山道入口に当たる北口本宮浅間神社までの約8kmの古道を巡るコース。講師には甲斐の古道プロジェクト委員会委員であり山梨学院大学の十菱駿武客員教授と保坂康夫講師の二人と、河口湖教育委員会の杉本悠樹さんと富士山世界遺産センターの堀内眞さんが受け持った。
6月3日午前10時河口浅間神社に集合した一般参加者20人と講師など関係者を含めた総勢25人は、初夏の陽差しがたっぷり降り注ぎ、湖面を渡る爽やかな風が吹き抜ける鎌倉街道をゆっくりと歩を進めた。ところどころで道標、遺跡、神社などで教育委員会の杉本さんの丁寧な説明を受けた。途中、富士山世界遺産センターに立ち寄り、堀内さんから富士山の歴史や富士山にまつわる絵画や文学などの解説を聞いた。参加者はそれぞれの講師の説明に熱心に耳を傾け、古道の歴史や文化、富士山に関わる話に興味を寄せていた。
■鎌倉街道・御坂路編コース
河口浅間神社⇒河口御師集落⇒鯉ノ水遺跡(古代御坂路遺構)⇒追坂(御坂路古道)⇒阿弥陀堂⇒白山神社⇒筒口神社⇒船津口登山道⇒富士山世界遺産センター⇒赤坂道標(鎌倉街道)⇒丸尾地蔵堂⇒御師の家旧外川家住宅(富士山信仰の行者宿)⇒北口本宮富士浅間神社⇒金鳥居
※なお、北口本宮富士浅間神社及び金鳥居は時間の都合で見学を断念した。
十菱駿武山梨学院大学客員教授・甲斐の古道プロジェクト委員は「『甲斐の古道』を通じて山梨の文化に触れてもらうことが目的なのですが、皆さん愛着を持って現地を見ていただいて非常に良かったです。今回は、古代から使われていた道ですし、景観も良く歴史文化もよく残っていることでこの街道を選びました。次のコースは皆さんの意見を聞き、できれば年2回やりたいです」と熱心な参加者が多いことに気を良くしていた。2度目の参加という北杜市在住の大庭忍さん(旧高根町の戦後初の移住者)は「私は子育てに山梨に移住してきたのですが、今まで全然山梨のことを知らなくて、自分で歩いて勉強していかないと住んでいるところが分からないですから積極的に参加しています。もっとこういう機会があってもいいと思います。次も参加します」と語った。山梨学院生涯学習センターが主催する『やまなし学』をよく受講しているという小川滋夫さん(甲府市在住)は「初めての参加です。たまにこちらの方面に来ることはあるのですが、いつも車ですので初めてこの古道を歩いて大変興味深く見聞きして面白かったです」と話した。山梨学院大の考古学研究会に所属し、今回スタッフとして参加していた澤田一輝さん(2年 法学部法学科)は「知らないところを見られて面白いです。歴史が好きなので昔を知ることは楽しいです。自分の知らないものを知るという、新しい発見のために何かできたらなと思ってサークルに入っています」と話した。山梨学院古道プロジェクト委員会による2回目の「フィールド体験プログラム『鎌倉街道・御坂路編』」に参加した歴史ファンの人たちは、所々で当時の面影を偲び、歴史や文化と対話しながら、約7時間、8kmを超える行程を疲れも見せずに初夏の1日を散策した。残念ながら今回は、時間の都合で富士登山道入口にあたる北口本宮浅間神社には訪れることができなかった。
文・カメラ(K.F) 2017.6.5